「僕の強運も、ココまでだね」
「そのようですね。早く終らせましょう」
なんの戸惑いも見せず、森から出てきた幸村。
かまえられる銃。
ココから、彼等のミッションは始まりを告げる。
「さ、早く殺して?諦めているんだから」
「・・・・・・・・」
ふっと自嘲を漏らした。
鉄の塊に集中していた神経は一気に飛び散ったように見える。
がしゃん
「・・・・?」
「もう沢山。あの人の狗であり続けるのは」
「何を言ってるんだい?」
「拭いきれない血。いつも抱きしめてくれた冷たい腕」
勿論この会話は、司令部の方にも行き渡っている。
滝を殺害する前に、もう一度首輪をはめ、生き返らせたのだから。
ゆっくりと、禁止区域の方へ下がっていく。
一つだけ残したカメラ。
最後の舞台を映し出す、にとって最高の武器。
「特殊部隊は何してるの!!!」
「申し訳ありません・・・それが・・・・誰一人と戻っていなく・・」
「言い訳は聞きたくない!!僕のが誑かされたんだ!!早く連れ戻して!!」
狂う男。の記憶の中に、いつも巣食っていた一人の青年。
司令部のスクリーンに映し出される2人の姿。
叫びまわるそいつの眼は、オッドアイ。
「これだけ罪を犯して、自分は死んで逃れるの」
「さん?」
「もう十分。もう、疲れた」
これは勿論演技で、計画を完成させる為の序章。
だが、本当には演技なのか。
流れる涙はきっと、真実。
「、何言ってんの・・・・」
「もしかして、計画なんじゃないかな?」
港の倉庫。
救われた7人は、トランシーバーから聞こえるの声を一言も漏らさず聞こうとしていた。
は賭けていたのだ。
彼等が気付いてくれる事を。
これが演技で、今から何をしようとしているのか。
「まさかちゃん、司令部に乗り込むきちゃうか??」
「はぁ?危なすぎるにも程があるぜ!!」
「でも、ちゃんならやりかねない・・・」
「助けるべきでは・・」
ぎいっ
開かれた扉。
一気に硬直する7人の身体。
誰も振り向けないまま、嫌な汗が、全員の頬を伝う。
金髪が、光に揺れた。
「ジローやないか!!どないしてん!!」
「ちゃんに・・・助けられた・・・・」
今までの経緯を話したジロー。
に助けられた後ジローは、逃げるならどこに行けばいいだろうと考え始めた。
アノ様子からして、は何か起こすだろうと感じていたという。
それなら、自分は逃げる時に拾われる。
足枷にはなりたくなかったのだ。
「それで、話し声が聞こえたというわけか」
「そんじゃあ、ちゃんは絶対に何かするんだよ!!」
「でも、一体どこでっすか?学校は違うでしょ」
「・・・・・倉庫・・・」
『え??』
「ちゃんが言ってた気がする。司令部は倉庫にあるって」
「行き先は決まった。行くで」
「待って下さい」
立ち上がった忍足を制したのは柳生。
「全員で行っても、足手纏いになるだけです。行くのは銃を持っている数人でいいでしょう」
「残りはココで脱出の準備だね?」
「そうです。皆殺しにされては元も子もありませんから」
の救出に向かうのは、忍足・リョーマ・ジロー。
ジローの武器はショットガン。
代わりに行くと言った柳生を制し、自分が行くと言って聞かなかったのだ。
役者は揃った。
「あの人は見てるかな。もう直ぐ私は死ぬ。彼方が優勝」
「さん!何を言ってるんだ!!僕は、誰の死も見たくない!!」
「終わりにしたい。もう、アノ冷たい腕に抱かれたく無いの。バイバイ」
禁止区域に足を踏み入れた。
同時にカメラからは見えなくなる。
聞こえる音は、死へのカウントダウン。
どっかあん
聞こえる爆音、叫び続ける幸村。
返事が帰ってくる筈は無く。
ゲームのゴールに辿り着いたのは誰?
そもそも本当に其処はゴール?
よく見て。
君の目の前に佇んでいるソレを。
優勝者 18番・幸村 靖市
「右手が使えないのはキツイけど、大丈夫」
は駆け出していた。
爆発の余響が鳴り始めた時、は隠し持っていたドライバーで首輪をはずし、
遠くに放り投げ、爆発するのを見届けてから倉庫へと走りだしていたのだ。
なんとしてでも、アイツラより先についていなければ・・・
『・・・・っ!・・・・!!』
「リョーマ?なに?どうしたの!!」
『芥川先輩こっちにいるから、は自分のことだけ考えて』
「え??」
『の足手纏いになるが嫌だったって、絶対に死ぬな!』
「判ってる」
は走り続けた。
あの人がいる、そこを目指して。
「幸村クン?優勝おめでとう」
「・・・・・・・・・・」
「まずはその首輪をはずそうか」
狂っていた青年は、幸村と対峙していた。
片手には拳銃。
君の目の前にいるゴールは、偽物。
永眠者弐拾六名。
内、覚醒者仇名。
彷徨者=優勝者=詐欺者=覚醒者壱名。