「大体、判りましたか?」
『全く・・・・・』
「でしょうね」
手塚を連れて、屋上から3階へ戻ってきた。
一枚の紙切れを囲んで、難しそうな顔をする5人。
3人ほど少ないが、大方探検にでも出掛けたのだろう。
行動型。
少し、不安要素を抱える者達でもある。
「芥川さんと、菊丸先輩と、リョーマは探検ですか?」
「ご名答や。ココが、俺らの生活の場っちゅうことしかまだ理解できとらへん」
「口で説明するより、1階から昇ってきた方が良さそうですね」
「そうしていただけると有難いです」
やはりと言うか何と言うか、3人はついさっき階段から降りて行ったと言う。
残った5人に手塚とが加わり、とりあえず構造を覚えてしまおうとゆう事になった。
「それじゃあ、1階に行きましょう」
「え?階段はそっちじゃない・・・・・・ってちゃん!!!」
皆が近づかない様にしていた穴。
そこには飛び込んだ。
重力に従って落ちてゆく。
しばらくして、叫び声が響いた。
「!!」
「大丈夫ですよ。菊丸先輩が勝手に驚いただけですから」
「なんだ、あそこに通じてたんだ。それじゃあ僕も」
「これなら安心ですね」
「なんか楽しそうやないか」
そう言って、次々と飛び降りてゆくメンバー。
まるで、仲の良い友達で遊びに来たかのように。
「全員揃いましたね。さっき落ちてきたのが、あの穴です」
「失敗したら地面に激突ってわけか」
「で、ここの水溜りみたいなところなのですが・・・・」
「さっき越前君が潜ったまま、まだ帰ってきてないんだけど・・・・・」
「・・・・結構深いんですよね。あそこの穴、見えますか?」
ネットの上に落ちてきて、皆揃った(約1名失神)。
入り口を後方に、やたらと水の溜まっている場所に案内した。
その水溜りの下3mのトコロに、ポッカリと穴が開いている。
「あれは・・・・」
「あの穴を辿って行けば、海に出ます」
「でも無理だろ!そんなに長く、息止めてらんねぇぜ??」
「だから酸素ボンベを使うんですよ」
「あんなに大きな物を背負って、あの穴を抜けられんですか?」
「特殊部隊が使っていたのは掌サイズの、世には流れていない酸素ボンベ」
「もしかしなくても、ココは・・・・」
「お察しの通り、ココは元・特殊部隊の訓練所。そして、私の家です」
あっけらかんとしてしまった9人。
特殊部隊の訓練所?そんなトコロに詳しいにも驚きだが、
そんな所を本拠地にしようとしている自分達にも驚きだった。
しかし、そこで何が行われてきたのか、それを想像しようとするものは誰一人いない。
ただ独り、を除いて。
丁度その時、水面に泡がたったかと思うと、小さな身体が現れた。
「リョーマ・・・・どこまで行った?」
「半分くらいだと思う。光見えてたし」
「海に繋がってるの。ほら、これで拭いて?着いて来るでしょう?」
「拭いてよ」
「今ココで沈めてもいいけど?」
「はいはい」
大人しく、の持っていたタオルで身体を拭き始めたリョーマ。
その後方で、菊丸が覚醒していた。
「さっさっき・・・ちゃんが上から降ってきて・・・」
「菊丸君?さんは3階から1階に降りただけ。僕らも同じ道を通ってきましたし」
「へ??そっそうなの??」
「そうですよ。大丈夫ですか?」
「ちゃん!!めちゃくちゃ吃驚したじゃんか!!」
「早く行きましょう。全員揃った事ですし」
身体を拭き終えたリョーマと、覚醒した菊丸を加え、階段を昇り始めた。
階段は狭く、大人が1人やっと通れるくらいの幅しかない。
武器など持っていたら、昇るのは相当難しいだろう。
「壁に沿って歩いて下さいね?」
「何かあるの?」
「はい。ちょっと危ないんです。向こう側に言った後に説明しますね」
2階に上がり、全員が階段を抜け終えると、向こう側の壁を指してが言った。
8人目までは良かったのだ。
の言う事をしっかり聞いて、壁伝いに移動していたから。
けれどけれどで、彼らは曲者揃いな訳で。
「なんか、遊びに来たみたいでたのC!」
「芥川君、あまり押さないで下さい」
「柳生君は楽しくないの?」
「楽しいとか言っている場合ではないでしょう」
「お2人とも気をつけ・・」
がこんっ
ばっしゃぁん
「だから壁伝いに歩いて下さいと言ったのに・・・・」
「っげっほ・・・」
「うっわ、まじ楽しい!!」
「大丈夫ですか?」
「なんとか・・・」
ジローが柳生の腕を取り、はしゃぎ回っていると、
いきなり床が抜けて、2人とも真っ逆さま。
そして、先程見てきた水の中に落ちたというわけだ。
ぷかぷか浮いている2人は、あまりにもこの場に不釣り合いだった。
「だいたいの敵は、1階でハイになって、そのまま突進してきます」
「そんなヤツが落ちるって事か」
「その後ろで躊躇してしまった、愚かな敵を殺すと言う寸法ですよ」
「・・・・・・・・ここも戦場だったと言うことですね」
一瞬、暗い雰囲気になったものの、
喚きながら昇って来たびしょ濡れの二人を目撃するやいなや、全員が大爆笑。
もちろん、も・・・・
「りょっ・・リョーマ?タオル・・貸してあげて・・・っく」
「スミマセン。使わせて頂きます」
「あぁ、おかしい・・・・・気を付けて下さいね」
今まで闘ってきた過去など嘘のようで。
現実に眼を背けるのは、死を招く。
だが今は、今だけは、このままで。
これからきっと、紅い世界しか見れないから。
「じゃあ、行きましょう」
「ここから1階に降りる事も出来るんか??」
「ええ。この一辺からだけですけどね。他は壁があったでしょう?壊して降りるなら別ですが」
窓から見える夕日を左手に、10人は3階への階段を昇っていた。
例の如く細い階段で、ココでもやはり、大人が1人通れるか通れぬか位の幅しかなかった。
また、元いた場所に戻ってきた10人。
向こう側に、ついさっきまで紙切れと睨めっこしていた場所があった。
「ここなんなの?」
「ココは元・武器庫。医療具とかも入れてた。言わば物置」
「なんか使えそうじゃん」
「武器が集まってきたらね?」
右手に部屋を見ながら、寛いでいた場所に戻ってきた。
窓からさす明かりが、彼等の顔をオレンジ色に照らす。
「ここが生活の場です。色んなものを集めなくちゃならない」
「寝具や、小物は船に積んでありましたよ?」
「本当ですか?床で寝なくて済むという事ですね。毛布もありますし」
「毛布なんかどこにあんの?」
「支給されたじゃないですか」
ああ。と頷きあう9人。
すっかり忘れていた。あの時支給されたデイバックの事を。
「屋上には、ココと、向こうの梯子を昇ったら行けます。5人づつ昇りましょう」