テニスで鍛えた所為か、はたまた持って生まれた運動神経の所為か。
常人より昇るスピードが速い、10人。
あっという間に、全員が屋上に集合していた。
有り難い発見。
「これが見張り台ですね。今は使いませんが、いつかは全員昇る事になるでしょう」
「ところでさん?一つ聞きたかったんだけど」
「なんですか?」
「この見取り図、誰が書いたの?」
「・・・・・・・ココで飼われていた頃に、私が書いたんです」
「あ・・・ゴメン」
「いいですよ?そのおかげで皆さんに説明できてるんですから」
「ほんなら、こないに綺麗なんはオカシないか?」
「写した物ですよ。汚れや血がついた見取り図なんて、見たくないでしょう?」
船の上で書いていたのはこれだったのか。
と、今更ながらに気付いた9人。
そんな9人を横目に、はあの壁へと移動し、窪みを押して、隠し扉を開いた。
「まるでからくり屋敷じゃん」
「丸井さん。降りてみます?」
吹き上がって来る風に、後ろに尻餅をついた丸井。
それを見て、はクスクスと笑った。
「わっ笑う事ないだろい!!」
「この真下に船を置いてあるんですよ。色々取って来るんで、これにロープを繋い・・」
「俺も行く!誤解されたまんまじゃカッコ悪ぃ」
「そうですか?」
未だボーっとしたままの8人を置いて、スルスルと下へ降りて行った。
少しビクビクしていた丸井も、3分の1ほど来た時点で慣れたのか、
そこからはスルスルと降りてきた。
「とりあえず、上の方に覚醒して頂かないと」
「貸して。オレがやる」
が取り出したトランシーバーを手に取った丸井。
電源をオンにすると、命一杯息を吸い込んで、怒鳴った。
隣にいたは耳を塞いだが、それでも耳鳴りは続いている。
「これでイイじゃん」
「・・・・・っ隣にいる私の事も考えて下さいよ!!」
「わりわり!」
「絶対思ってません!」
耳鳴りはしたものの、少し経つと、上から籠が下りてきた。
「とりあえず、乗せられるだけ乗せましょう」
「こんなんも?」
「ん〜・・・・丸井さんが使うならどうぞ」
「使わねぇし・・・・」
食料・寝具・鍋やランプ。
かなり使えるものがそこら中に放置されていて、何回に分けたかなど覚えていない。
それほどまでに、使えそうなものが多かった。
勿論、最初に丸井が見つけたような、
びりびりに破れた毛布等の使えないものも多々あったが。
それでも多大な収穫だ。
「丸井さん、そろそろ戻りましょう」
「結構あんじゃん」
「そうですね。私も驚きました」
規則正しく打ち寄せる波。
聞こえるのはその音だけだと思っていたの耳に聞こえてきた機械音。
聞き慣れたその音は、誰の来訪を示すモノか。
「ヘリ!!??」
「おい!どうしたんだ・・っ!!」
「静かに・・・リョーマ?聞こえる?」
『聞こえてるよ』
「今すぐ3階に戻って。何処のか判らないけど、ヘリが来てるの」
『え?!判った!もはやく・・』
会話の途中でトランシーバーを切った。
抑えていた丸井の口から手を離し、念の為と持って来たイングラムM11を構えた。
「なんなんだよ・・」
「聞こえませんか?プロペラの音が」
「え??・・・・・・きっ聞こえる」
「丸井さんはココにいて下さい。無事になったら呼びますから」
「えっちょ・・・おい!!」
そのまま飛び出したは、
人間離れした速さで梯子を昇り切り、そのまま見張り台に昇った。
どんどん近付いて来るヘリ。
形からして政府の最新機種ではなさそうだが。
何の為にこんな所へ・・・遭難?
莫迦なことを考えたと、は直ぐにその考えを消す。
銃を構え、いつでも打てるようにしていた。
肉眼でそのヘリの容貌を確認すると、ガチャンと銃を落とした。
そして、ヘリが屋上に着地するやいなや、そのヘリに向かって走り出したのだ。
「紫董っ!!」
「!!無事だったか!!」
昇ってきた梯子から、また、3階に降りる梯子から全てを見ていたメンバーは唖然。
ヘリから降りてきたのは、18,9くらいの青年。
抱き合う2人に、行動を起こせないでいる。
「どうしてココに?」
「お前が政府を抜けたってんで、応援に来たってわけ。裕也とか、真帆も来る」
「・・・・・・・・本当に?」
「ああ。政府潰し、参加させてもらうぜ」
「僕もね??」
「翔平!!ホントに嬉しい!とにかく、あそこに行って紹介する」
3階に集まった10人と2人。
緊張した面持ちでいるのは、9人。
「オレは本宮紫董。18。第19回BRの優勝者だ」
「僕は柄谷翔平。第16回BRの優勝者だよ。宜しく」
「えっと・・・・・・俺等のって・・・」
「第24回」
「自己紹介してくんね??」
そこから、9人の自己紹介をしている間、は外を眺めていた。
もうすぐ7時位だろうか。
時を刻むものがないココでは、日の光で時間を知るしか術がない。
「?明日、他の面子が来る。武器を山ほど抱えてな」
「本当に!!」
「ついでに、無線とか、催眠ガス系も頼んでおいたから」
「助かる。なんとか・・・・・なりそう」
「とりあえず、飯食って寝ようぜ」
「明日からでないと、色んな計画も立てられないしね」
「そうだね・・・・」
暫くして立ち上った煙。
ありあわせの物で作ったスープと、パン。
それを囲んで、12人は喋っていた。
「本宮さんは・・」
「紫董でいいぜ?堅っ苦しいのあれだし、これから闘う仲間だろ?」
「僕のことも翔平って呼んでね」
「紫董は、どんな事を得意とするの?」
「オレはスナイパーだ。父親に連れられて射撃やってたからな。だから優勝できた」
「・・・・・・僕らは、本当に初心者で、銃もまともに撃てないんです」
「場数踏んでくしかねぇよ。オレが来たからには、お前等を鍛えてやるから安心しろ」
その言葉で、一体何人のメンバーが安著の溜息をついたことだろう。
これで闘える。
殺しが出来ると。
「ちなみに翔平はトラップだ」
「頭使うほうが楽だからね。肉弾戦は任せるよ?」