半年後。

彼等はめきめきと腕を上げ、

今では、100発100中とまでは行かぬものの、

90発位は急所に当たるようになっていた。




「決行は明日。私達は4人は青学へ。忍足さんと芥川さんは・・・・」

「榊と会いに行くんやろ?」

「で、ちゃんの合図を待つ!!」

「そうです。もしヤバくなったら、必ず引き上げてくる事」

「「了解」」




長い間、彼等は耐えてきた。

あいつ等に復讐する時を夢見て。

思い描いたあいつ等の無様な死に顔。

逸る胸を抑えて、9人は布団の中へと潜り込んだ。



の能力と地位のおかげで、基地は普通の民家となんら変わらぬ状態になっていた。

水が流れ、シャワーがつき、ガスが流れて料理も出来る。

しっかり整えられたトラップ、侵入者用のレーダー。

そして、有り余るほどの凶器。

人を殺すモノ。



夜11時を廻って、は独り、屋上にいた。

雲ひとつない、頭の上は星の海。

丁度真上に光っている星々を眺めながら、は寝転がっていた。




「そんな所で寝てたら、風邪引くよ??」

「芥川さん?寝たんじゃなかったんですか」

ちゃんは寝てないなぁって」

「スミマセン。ご心配をお掛けして・・・・戻って下さい。私も直ぐに・・」

「ん〜〜ヤダ」




気が付かなかった。

自分の頭上からひょっこりと現れた金髪。

それほどまでに、彼等に心を許していると言うこと。

きっぱりと言い切ったジローにが目を丸くしたのは言うまでもない。




「あの・・」

「眼、冴えちゃったし、寝る気になんない」

「ですが明日は・・」

ちゃん、膝枕して♪」

「は?いやえっと・・・・」




寝転がっていたが起き上がった状態は、必然的に足は伸ばされていて。

その上に、頭をちょこんと乗せたジロー。

も断るのを諦めたのだろう。

にっこりと微笑んで、また上を見上げた。




ちゃん。ありがとね」

「なにがですか?」

「俺らに銃とか教えてくれたから」

「・・・・・・」




なんとも言えぬこのキモチ。

今日の今日まで取れなかったシコリ。

それはやはり、彼らのこと。

ココに連れて来て良かったのだろうか。




「私は、彼方達に教えなくて良いものを教えてしまったのではないでしょうか」

「どうして??俺らは凄く感謝してるよ」

「彼方達は人でした。私とココに来るまでは」

ちゃん?どっどうしたの??」




ポタポタと流れ落ちてくる滴。

それはジローの顔に当たっては跳ねて、コンクリートに吸い込まれて行く。




「私は鬼を造り出してしまった!人である筈だった彼方達を、鬼にしてしまったんです!!」

ちゃん・・・・・・・」




顔をあげて、と向き合う形になっているジロー。

どうすればいいのか判らない。

だって自分は、鬼になれたことに感謝しているから。

静かになったと思って見上げてみれば、

の瞳から滴は消え、何事もなかったかのように微笑んでいた。




「スミマセン。私がしっかりしなくてどうするんですかね」

「・・・・・・・・・・・」

「(彼方達はまだ、本当の鬼にはなっていない。ならせない)絶対に・・・・」

「え??」

「いえ。なんでもありません。戻りましょう」

「うっうん・・・・」




納得出来なかった。出来る筈がなかった。

何でもない筈がない。

一番この中で苦しいのは、きっと彼女だから。

前を歩くに追いついたジローは、がばっとに抱きついた。

よろめきながらも、それをしっかり受け止めたの顔を覗き込んで、ジローは言った。




ちゃん?これからはジロ先輩って呼んで??」

「へ??芥川さんじゃお気に召しませんか・・?」

「ううん。でもなんか、そのほうが仲間って感じがするし♪」

「・・・・・判りました。では明日に備えて眠りましょう。ジロ先輩」




やっと笑ってくれた。

寂しげな表情がなくなって、何時ものの笑顔が輝く。







翌日、6人は島を出て、自分達の学校へと向かった。

復讐劇の幕開けをするために。




「おいジロー、昨日ちゃんと何話しとったんや??」

「なぁいしょ〜〜♪ゆーしなんかに教えないC」

「なんやと!!」

「もう少し静かに出来ないんすか?」

「「わるい・・・・」」




船で約3時間。着いた港は古びれた場所。

人っ子一人いないそこは、まるで生気が抜けてしまった街の様。

6人は各々の武器を片手に船を降りた。

そして、自分の銃を持ち上げて、銃口を合わせる。




『 Raise The Curtain 』




「なっつかC〜〜♪」

「ジローそないにはしゃぐな。目立ってまう」

「もう、このカッコで目立ってるって!!あ、いたよ!!」

「あないのん気に・・・・・・なんや無性に腹立ってきたわ」




氷帝学園の校門を潜る2人。

あちらこちらからの視線も何のその。

彼等の目線が射抜く先は、ただ一人。




「なかなかだ。行ってよし」

「有り難う御座いました!!!」



「俺らに気付いてると思う?」

「さあな。この際どっちでもかまへんわ。行くで」




少しづつ、だが確実にそいつとの距離を縮めてゆく。

溜息をついて振り向いたそいつの眼が、飛び出しそうなほど見開かれていた。

パクパクと金魚のように口を開閉して、その姿の何と滑稽なこと。




「っぶあははははははは!!!見てゆーし!!なにあれ!!」

「ジロー、笑うな」




忍足は必死で笑いをこらえている様子。

ジローに至っては、涙まで流して爆笑している。

今から人殺しするとは思えないその姿に、

向こうの人物も少なからず油断したのだろう。

真顔になってくるそいつに気付き、ふっと目線をあげた2人の顔は、









獲物を狙う鋭い目線。

そして、放たれた一発の銃声。




「久しぶりですねぇ監督」

「っくおっしたっり・・・・なぜ・・・」

「なぜ?聞くだけ野暮言うもんやろ??」

「ゆーし、さっさと終わらせよ?ちゃん達終わったみたい」




見上げれば眩いばかりの光。

それを見上げながら、忍足は何発もの銃弾をその汚らわしい躯に叩き入れた。

舞い上がる紅い飛沫。

嗚呼、美しい光景。

さぁ、はじまりだ。