上陸した彼等は、砂浜らしきところに集められた。
首輪に気付いたのもその時。
今まで気付かなかった自分たちに驚く。
それだけ緊張していたのだろう。
「えっとねぇ・・・・1番から順番に出発してもらうから」
「トップ、あの事は・・・・」
「必要ないよ。の方から出てきてくれるさ。僕からのプレゼントだもの」
「はっ!」
「じゃあ、1番の子達行ってくれる?」
不安げな顔・・・・・・・・に見えただろう。
まだ仲間だのなんだの言っている愚か者には。
ペアでいるのは一見良いように見えるが、それは2人の意見が合致した時。
1人はノッて、1人はノッていなかったらどうなるのだろうか。
考えるだけでおぞましい。
だが、はそれが見たいのだ。
裏切られる時の、裏切る時の、人じゃなくなった時の、あの顔を。
「足を引っ張らないで下さいね」
「どうかなぁ〜?」
1組目は、森の中へと消えた。
それぞれ配置についた鬼達。
3階担当であると柳生・菊丸・忍足の4人。
「なんや?あっこから動かんやん」
「作戦タイムとかじゃないのぉ?」
「忍足さん、菊丸先輩、少し静かにして下さい」
「「はい・・・・」」
緊張感があるのか無いのか。
柳生との厳しい眼差しに無言になってしまった2人。
それから暫くして、外を見詰めていたの眼が、恐ろしいほどに見開いた。
「さん?」
「どないしたんや」
「そんっな・・・・・まさか・・・・・」
「どうしたんですか!落ち着いて下さい!!」
外を見詰めたまま震える身体。
眼は先刻よりも見開いていて、眼球が落ちてしまうそうな程。
どこかへ行ってしまいそうなの肩を、柳生が揺さぶる。
「あっう・・・・あっ」
「ちゃん!!大丈夫!?」
「ゆっくり落ち着いて深呼吸して。出来ますか?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「忍足君は外を見張って、なにか変化があったら教えて下さい。菊丸君は水を持ってきて」
菊丸が持って来た水を、深呼吸して少し落ち着いたに飲ませ、
忍足から外の状況を聞き、いまだ荒い息をしているを布団に寝かせようとした柳生。
最後の行為は、の手によって静止させられたが。
「ゴメンナサイ。大丈夫です」
「本当ですか?」
「はい。御2人ともこっちに来て下さい」
「せやけど・・・」
「外には優勝者が待機しているんですよ?」
「判った」
窓から離れ、中央の穴の近くに移った4人。
の顔は、まだ青ざめていたが、気はしっかり持っているようで。
もう一度深呼吸すると、ゆっくりと言の葉を紡ぎ出した。
「彼等は、は、ココでBRを始める気です」
「ちょっちょっと待って下さい。“”さんというのは誰なんですか」
「BR法の現在のトップ。彼が一声しようと言ったなら、そこから惨劇が幕をあけるんです」
「そんな人がいるの?」
「いるんですよ。きっと、私への当て付け。私が始めて人を殺したこの場所で・・・・・っ!!」
「さんの所為じゃありません」
床に伏せて涙を流し始めた。
どうして?巻き込んでしまう。
全て私の所為。
あの時私が死んでいれば、こんな事にはならなかったのに。
またこの地が、血で染まる。
「私の所為です。なんとかして止めなければ」
「せやけど、なんか2人組で出発して行きよったで」
「ペア制でしょう。一度は試してみたいと言っていたような気がします」
「ま、そんなの関係ないよ。あの首輪は外せるんだし」
「そうですね。そうと判れば早速行動開始です。この事を他に伝えましょう」
トランシーバーで、待機していた鬼達にこの事を知らせた。
外へ出て首輪を外し、彼等を助ける部隊と、
ココに残って見張る部隊に分かれる為に今一度3階に集まる。
心配そうな顔をしていた優勝者達も、の顔を見て安心したらしい。
安著の溜息をついて、円陣を組んだ。
「菊丸先輩と沙耶姉さんはココに残って、私と紫董、手塚部長と柳生さんは外に出ます」
「俺等は何しとけっつうんだよ」
「自分の配置について下さい。
この島に乗り込んできているのはあの人達だけじゃない筈・・」
ガンガンっ
「やっぱり・・・」
すくっと立ち上がって、素晴らしい速さで屋上に抜けた。
その行動に呆気にとられるしかない9人と違い、
優勝者達は次の行動への準備に取り掛かっている。
これが経験の差なのか。
その中でも、真帆の行動が早かった。
の後に続き屋上に上る。
ほんの数秒、沈黙の瞬間が流れたと思うと響いた銃声。
ババババババッ
連続するマシンガンの発砲音。
その後に続いた爆発音。
手榴弾か何かだろう。
叫び声と叫び声が重なり合い、何を言っているの判らない。
「おい、さっさと自分の位置に戻れ。この騒ぎの所為で、何組かこっちに向かってやがる」
「菊丸君と沙耶は武器庫にいてくれ。其処に連れてく」
「外に出るって言われた子達は弾確認して、予備も持って何時でも出られる準備して」
『っはっはい!!』
「菊丸君」
「なっにゃに??」
「彼方と私は首輪を外す。つまり命を預かる役目を担ってるの」
「判ってるよ!!」
「だったら落ち着きなさい。その震える手で触れられちゃたまんないわ」
「っ・・・!!ゴッゴメン・・・・」
「構わない。でも、自分で大丈夫と思うまで首輪に触らないでね」
「・・・・・・了解」
降りてきたと真帆の周りに集まる優勝者。
位置につこうとうしていた鬼達も横目で見る。
外見は全く変わっていない。
ただ、火薬の匂いを漂わせているだけ。
「敵は何人?」
「5人。全く、あんな物音立てるなんてホントにプロ?」
「新人だと思う。迷彩服が新しかった」
1人は梯子を昇り切り、崖の下ではゴムボートに乗り待機していたらしい。
昇りきって隠し扉を叩いていた一人を射殺したのは。
ゴムボートに手榴弾を投げ、中に乗っている奴等を皆殺しにしたのは真帆。
「船、移動させといて良かったじゃない」
「ほんとに。これからどんだけ襲ってくるか判ったもんじゃないわ」
「殺し合いは、既に始まっているんだよ」
緊張の空気が一瞬流れ、彼等は行動に移る。
砂浜からは、人がいなくなっていた。
隔離者弐拾八名。