「とにかく、のっているか否かは私が判断します」

「判った。だが、一体何処から探していくんだ?」

「・・・・・・・・・病院へ」

「そこが一番妥当だろうな」




地図を睨みつけ、指差したのは、この場所からも一番近い建物。

外に出た、紫董、、手塚、柳生の4人は、

の指示に従い、病院へと歩を進めた。






「ホントにココ大丈夫かよ」

「ココくらいしか想いつかなかったんだから仕方ないじゃん」

「そりゃそうだけど・・・・」




ぼろぼろになった病院の扉を押し開けて、中に入った2つの影。

ペア番号4番。伊武と神尾。

右手には、S&W500マグナム・カスタムが握られている。

全く同じ銃。




「この首輪、何とかして外せないか?」

「無理でしょ。むやみやたらに触ったら爆発するよ」

「てか、ペアが深司でよかったよ。他の奴等だったら・・・・」

「のってたかもしれない・・・俺がのってたらどうすんの?」

「そんときゃそん時。諦める。でも、のってないだろ?」




かんかんかん




螺旋階段を昇る音が、虚しく響く。

こうやって笑ってはいるものの、2人とも怖くて仕方がなかった。

もし誰かがいたら?

もしそのペアがのっていたら?

もしも。もしも。

嫌な憶測だけが頭に響く。




ぱんっ ぱんっ




2人の身体はビクリと跳ね上がった。

聞き間違える筈がない。

一番聞きたくなかった、聞こえて欲しくなかった。銃声。

それも、さほど遠くないだろう場所。

2人は硬直したまま、動けなくなっていた。









同じ病院。2階の応接室。

ココで対峙してしまったペア。

一方はのっているのだろう。

銃を構え、ヤル気満々といった感じだ。

いや、1人はのって、1人はのっていない様な顔つき。

だがこれも、ゲームの一環。



これが映し出されているスクリーンの前のお偉い様方は、さぞ嬉しそうにしている事だろう。

構えている銃は、同じ色、同じ形。

先刻の2人と同じ、S&W500マグナム・カスタム。




「内村、俺の話を聞け!」

「・・・・・・・・」

「何とかなる。正気に戻れ!!!」

「・・・・・・・・」

「ばねさん?力を合わせれば、ココから抜け出し・・」




ばんっ!!




「葵!!しっかりしろ!!おい!!」

「あっ・・・・うっあぁ・・・・・」




狂って狂って狂って。

震える手には、凶器。人を殺す道具。

その引き金を引いてしまったのは、黒羽。

ただ生きたかった、信じたくなかった。

だが、友達を殺してまでは・・・・だが、片割れは?

放ってしまった銃弾は元には戻らない。

葵の身体を貫き、紅い血液と共に、後方へと飛んでいく。

もう、戻れない。




「橘さん?俺が脅したんですよ。その通りにしてくれた。どうせすぐに死ぬんだ」

「内村!お前!!」

「さよなら・・・・っ!!」




鳴り響いた銃声。

内村の胸からは血がぼたぼたとあふれ出している。

向こうから走ってきた4人組。

勿論、反政府軍の。




「だっだれだ・・・・っぐわあ!!」

「橘!!」

「てづ・・」




ぱあんっ




「橘!!おい、橘!!」

「ふふふふあははははははははは!!!」




立ち上がった黒羽の眼からは涙。

そして、口元は。

何も判らなくなってしまった。

もう、人とは呼べない。




「狂ってます・・・・」

「みんな、ああなってしまうんですよ」

「そして、何が何か判らぬままに、殺人を犯す」




ぱんっ



どさっ




心臓を打ち抜かれて、たおれた黒羽。

と紫董は、倒れている橘の所へと歩いていった。




さん、何とかできないんですか!」

「・・・・・無理よ。弾が既に貫通してしまってる」

「この出血だしな・・・・諦めろ」

「っ橘は生きているんだぞ!!」




ばちんっ!!




「部長こそしっかりして下さい!!!殺しだけが戦いじゃない!!
助からないと判っている命に使う程、私達の医療具は十分じゃないんです!!!」

「・・・っ!!!」

「てっづか・・・・生きて・・・・・」

「橘・・・・すまない」

「いやっ・・・・もう・・・・・・・」




握り締めていた右手が、ゆっくりと開かれ、無機質な音を立てて銃が転がり落ちた。

誰も何も喋らない。

ただ、助けられなかった命。

無力な自分を呪いながら、は首輪を外そうと屈んだ。




「・・・・・え?」

「どうした

「首輪が・・・・違う・・・・」

「なんだって!」

「こんなじゃなかった・・・・どうしよう!私じゃ外せない!」

「おちつけ。仕方ねぇ。
俺は一旦向こうへ戻る。翔平に調べて貰って、判ったら連絡する」

「なんて・・・・無力なんだろう。助けようとした矢先からこれ」

さんの所為じゃありません。今は、一つでも多くの命を助けましょう」




紫董は、まだ軽い葵の死体を担ぐと、元来た道を戻り始めた。

その姿が見えなくなるまで見送って、はゆっくりと立ち上がる。

そして3つの死体を順に回ると、手から銃を取り、自分のバックの中へと押し込んだ。




「同じ銃だな・・・・」

「ええ。私が最初に使った銃です」

「お前が?」

「最初に人を殺したモノ。この場所で、この銃で」

さん」

「やっぱり、彼の狙いは私です。過去の、彼の狗だった時の・・・・鬼・・・」




解放者泗名。