どうして気付けなかった?

欠けてはいけない存在なのに。

君がいるから、僕らは生きていられるのに。




「「「「・・・・・・・・・」」」」




基地の3階では、小さな円が作られ、今までの経緯を言い渡していた。

沈黙する事しかできない。

自分たちの知らぬ所で、

バスの転落事故と称して殺し合いが行われていたなんて。




「で、えっと・・・・・さん?」

「なんですか?私、そろそろ出たいんですけど」

「バカ!!さっき休めっつっただろ」

「丸井くん、そんなに怒鳴らなくても聞こえますよ」

「んなこと判ってるよ!!」




またもやシンッと静まり返る部屋。

その中で、が荷物を詰める音がイヤに響いている。

何時間も経ったように思えた頃、実際には数分しか経っていないのだが。

がすくっと立ち上がり、入り口へと向かった。




「戦力になれないのなら、一番近い島へ送って差し上げます」




いつでも言ってください。

という言葉を残して、はその場を後にした。

入れ替わりに、屋上で見張りをしていた優勝者達が降りて来る。




・・・・行ったのね」

「何か変わった事あったか?」

「いえ・・・・・・・別に」




何も喋れない皆の変わりに手塚が答える。

もう既に見えなくなったの姿を捜しながらさ迷う瞳。

そんな中、菊丸がポツリと呟いた。




ちゃん・・・・上の服黒じゃなかったよね」

「今朝は青だったと思いますよ?」

「なんですって?」

「え、だから上の服・・」

「何でそれを早く言わねぇんだ!!」

「翔平!、今何処にいる!!」

「捜してるよ!!」




行き成り騒ぎ出した5人。

翔平はノートパソコンを取り出し、

皆に渡したトランシーバーの電波を読み取ろうと躍起になり、

紫董と裕也は、詰め込めるだけの包帯を詰め込み、

真帆はいつも握らぬ銃を握り、

いつも無表情な沙耶でさえ、必死に薬品を掻き込んでいる。




「なっなんなんや一体」

「忍足君、彼方、と一緒に帰ってきたわね?」

「あっああ。それがどうかしたんか?」

、服着てた?」

「着とったで、確か中に入った時に脱いで・・」

「どこで!!」

「1階の階段の近くや」

「真帆」

「ほら、これでしょ?私も行くわ」

「ちょっ・・まっ・・・」




真帆が沙耶にルガーMKUを投げ渡したと同時に、2人は穴へと飛び降りた。

説明などしてもらえない。

この世界じゃ何もかも先を見て行動しなければならないのだから。

1階に飛び降りた2人を追って、残った3人も下に降りた。

何度動けと命令しても、足は動いてくれない。

止まらぬ震え。




「くっそおお!!!!」

「丸井くん!!」




たった2人。

丸いと芥川が、半ば這うように穴に向かい、転がり落ちた。









「・・・・・・・どうして・・・」

「何が優勝者だよ!!好きな奴1人守れねぇのに!!」

「紫董、今ココで嘆いたって何も解決しないよ。行こう、の下へ」

「嗚呼」




翔平の手に握られていたのは、紛れもなくの着ていたシャツ。

背中には、10弱の穴。明らかに、銃弾。




「おっオレも!!」

「そっれ・・」




翔平が握りしめているシャツを見て吃驚する。

確かあれは、が着ていた服。

いつもいつも見ているから判ってしまう。

それにあいている穴と、黒く焦げた痕。




「丸井君。芥川君・・・・」

「何しに来たんだよ」




向けられたのは怒りと悲しみ。

そして、失望。

失った信頼は、もう戻っては来ない。

真帆はゆっくりと2人に近付いた。

ぐんぐん成長していく皆に、に笑顔を取り戻してくれた皆に、

どれだけ感謝しただろう。どれだけ喜びを感じただろう。

だが、まだ早過ぎたのだ。

彼等は、鬼にはなれない。




「もう、彼方達には任せられないわ」




ドサッ




何も見えなかった。

自分達がしていた過信は、あまりにも大きすぎて。

床に横たわった2人の身体は金縛り。

唯一動くのは、瞳だけ。

走り去って行く5人を、ただただ見詰めている事しか出来なかった。










ズキズキと痛む背中を無視して、は走っていた。

もう日は沈みかけている。

せめて後1組。

お願い。

明日になれば、歪んでしまうかもしれない。

聞こえてきた銃声は、戦いの始まりを告げる。



足音からして・・・・・4人。

相当激しい銃撃戦らしく、明らかに2人だけが打っている様には思えない。

こちらへ近づいてくる足音に全神経を集中して、

自分のいる場所から、ターゲットが射程距離に入るのを待った。

そして、あった6つの瞳。

向こうに見えるのは確か、赤澤さんと金田さん。

顔くらいは知っていた。




5・・4・・・3・・・・2・・・・・1・・・・・・。




パンッ   パンッ



ドサッ   ドサッ