手を繋いだまま、待たせている木に向かっている2人。
説明はし終えた。
先刻、また一つカメラを潰した。
リョーマの武器はトランシーバー。
これで連絡が取り合える。
少し、気持ちも落ち着いてきた。
手から伝わるヌクモリに安著していたは、木の陰に人影を3つ見つけ、目を見開いた。
「まさか・・・・!!」
リョーマの腕を振りほどいて、駆け寄る。
間に合う事を、一心に祈って。
「不二先輩!菊丸先・・・・輩っ・・・・部長?」
「ちゃん。大丈夫だった?」
「はっはい・・・でも、どうやって・・・」
「見よう見まね。機械モノは得意なんだよねぇ〜〜」
「なっ!!失敗してたら、爆発して、3人とも死んでいたんですよ!!!」
「いきなりどうしたんだよ、」
「あ、この2人が助けた人。さっき、灯台で助けました」
「おちび!!」
「痛いっす」
3つ目の人影。
それは、他でもない。青学テニス部部長、手塚国光。
転がっている鉄の塊は、何の役目も果たせなくなっている。
それを外で爆発させて、戻ってきた。
とりあえず、入り口を草などで覆い隠して、話しを進める事にした。
「皆さんも、名簿に書いて置いて下さい」
「乾と、桃が?」
「桃城先輩を乾先輩が殺して、乾先輩は、私が殺しました」
「そう・・・・頑張ったね」
「・・・・・・・・部長は、聞いていますか?」
「不二から聞いた」
「だったら、話す手間が省けますね。今から仮眠を取ります」
「こんな時に寝んの!?」
「こんな時だからこそですよ。次はいつ眠れるか判らない・・・・」
自分の名簿を広げ、4人が写している間、はイングラムM11に弾を入れ替えていた。
近づいてきたリョーマに、すっと差し出した冷たい塊。
「なに?」
「護身用。打てるんでしょ?」
「親父に、何度か射撃させてもらったぐらいなんだけど?」
「トランシーバーじゃ、身は守れない。これからは別行動になると思うから」
「判った・・・・」
渡したのは、乾の鞄に入っていたワルサー・PPK。
初心者でも扱えるような銃。
一番最初に写し終えたのは、やはりというか手塚。
聞かなければならない質問を口にする。
「部長の武器はなんだったんですか?」
護身用の武器は、多いに越した事はない。
ココにあるのは、不二の持っている出刃包丁と、の持っているイングラムM11。
そして、越前に渡したワルサー・PPKと、ぬいぐるみの中に詰まっている爆弾。
少なくはないが、決して十分といえる数じゃない。
「オレの武器はコレだ」
「良かった。ハズレ武器でなくて。部長はそれで身を守って下さい」
「あっああ・・・・」
「使えますよね?」
「なんとかな」
手塚の鞄から出てきたのは、日本刀。
鞘から抜いていないらしく、丁寧に布まで被せてある。
「菊丸先輩?」
「にゃに?」
「これ、持ってて下さい」
「コレ、オレのぬいぐるみ。なんでこんなの?」
「中に爆弾が入ってるからです」
「え・・・・」
何とはなしに受け取ったぬいぐるみに、爆弾が入っているという。
少しの間、唖然としていた菊丸も、
の意図が判ったのか、素直にそれを抱えて腰を下ろした。
「さっきも言いましたけど、自分の身は自分で守って下さいね」
「判ってるよ」
「なんとかするにゃ」
「ああ」
「ちゃんに迷惑はかけられないからね」
写し終えた4人を見たは、もう一度仮眠をとるように言い渡す。
そして、自らも毛布を被って眠りに付いた。
夜中。
またも鳴り出す明るい放送。
草や小石で穴を塞いでいる所為か、殆ど音は入ってこない。
だが、が起きるには十分すぎる音量だった。
「・・・・・・・・」
周りで寝ている4人を起こさないようにしながら、そっと木から出た。
外は月明かりで、持って来た蝋燭に用は無い程明るかった。
『こんばんわ。みんな起きてるかな?お昼から、死んだ人の名前言っちゃうわね!
3番・鳳クン。6番・宍戸クン。8番・日吉クン。13番・仁王クン。
18番・乾クン。19番・越前クン。24番・手塚クン。26番・桃城クン。
すっごいペースだね!!お姉さん感激!!』
「青学で残ってるのは私だけか・・・・・・ん?」
月明かりに照らされながら、名簿に斜線を書き込んでいく。
物音で振り返ったそこには・・・・
「部長?」
「他の奴等は寝ている」
「部長も寝てて下さいよ?」
「いや、だけに任せるわけにもいかないだろう」
「いいんです私は。慣れてるから・・・・」
「もう、半分になったんだな」
「放送、聞いてたんですか・・・」
「ああ」
静かに、の隣に腰掛けた手塚。
放送は続いている。それは、ココが戦場であるという証。
『禁止区域だけど、今回は沢山あるからちゃあんとメモッといてね?
1時間後にE-1とE-2。2時間後にA-1とD-4。
それじゃあ、2日目も楽しく殺し合いしてよ?楽しみにしてるわ』
「もうD-4が禁止区域になるなんて・・・・」
「そこに何かあるのか?」
「港ですよ。希望に縋り付く姿が見たくて、いつも最後まで残していたのに・・・」
「狂ってる・・・・」
「そんな人達の一員でしたけどね」
と同じように、禁止区域を書き込んでいた手塚。
自分の発してしまった言の葉で、少なからずもを傷付けてしまった事に後悔していた。
それに気付いたのか、 が口を開く。
「気にしてませんよ。私は殺人鬼に変わりありませんし・・・」
「は違う。現に俺たちを助けてくれている」
「自己満足です。それに、これから生きて、過去に戻れるわけじゃないですし・・・・」
「この世の中は自己満足の世界だ。お前だけがそうじゃない」
「部長・・・・」
「お前は頼りになるマネージャーだ。あまり無理をするな」
「はい・・・・」
涙が零れそうになった。
でも、まだ泣けない。今はまだ・・・・。
いづれその時がくる。否が応でも、アイツを堕とす日が。
その時までは、殺人鬼でも構わない。
アイツらの機械と言われていても。
永眠者壱拾伍名。
内、覚醒者伍名。