放送が終ってから、明け方、4人が起き出して来るまでの間。

朝日が差し込み、2日目の幕開けを示す。

は座り込み、昔を思い出していた。

殺人鬼として生きてきた過去を・・・・。




「どうしてっ!!何で私達がそんな!!!」

「うるさいなぁ。ボクがそう決めたんだ」

「--------が引き渡したの!?」

「そうさ。は生かしといてあげるよ。ボクの大事な-------」

「いや!!いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





燃える家。連れて行かれた家族。

嘲笑うソイツの腕の中には、幼い

顔は涙でぐしょぐしょになり、服は乱れ、あちこち煤が付いている。

そこから始まる。

の、悲劇と呼ぶには滑稽すぎる舞台の幕開け。




?次の日程が決まったよ」

「次?」

「そう次。もう慣れただろ?ボクの大事な
この間、そう、血塗れだったがとても綺麗だったよ」

「あの子、死んだ?」

「皆死んだんだ。が優勝。流石だね?次も期待してるよ」

「私が優勝したら、-------は喜ぶ?」

「勿論さ。また抱きしめてあげる。君の家族も戻ってくる」

「本当?」

「本当さ。だから、殺しておいで。みんな、みんな」





これで何回目か、もう数えてもいない。

帰って来る度に、あの人は抱きしめてくれて、どこで誰を殺したときが綺麗だった。

美しかった。輝いていた・・・・・。

紅色の服は、私の部屋に飾られた。

両手はいつも汚くて、洗っても洗っても落ちなくて。




「母さんと父さんは生きてるって言ったじゃない!!」

「生きてるなんて、一言も言った覚えは無いよ。はボクだけ見てればイイ」

「どうして・・・・・・なんで・・・・」

「ボクを見るんだ。ほら、君の------だよ?」

「もう、殺したくない」

「だったらボクが壊してあげる。ボクの為に殺して。そうしたら、ボクと一緒にいられる」

「もう・・」

「行っておいで?帰ってきたら、ちゃんと抱いてあげようね。ボクの可愛いカワイイ





それを知ったのが前々回。

その時から私は、カメラを壊し、姿を見せないようにしてきた。

あの人に、私の姿を見られないために。

何も言わずに殺し続けた。

心臓を打ち抜き、腕を切り落とし、眼を潰し、頭蓋骨を壊して。

枝から滴り落ちる血。

ぶら下がっているクラスメイトの首。

私は何も感じなくなった。

感じないように、した。




「どうして!?どうしてボクにの綺麗な姿を見せてくれないの!!!」

「・・・・・・」

!!聞いてるの!?」

「・・・・・・」




腫れた頬。さっき、あの人に殴られた頬。

何も喋らない、私は本当に機械になった・・・・。

前回も同じ。

カメラを壊し続けて、今度は首輪だけを狙って、みんな殺した。

そこら中に散らばってる、首、くび、クビ・・・・。

骨が剥き出しになってて、それを見てもなんとも思わなくなっていた。

そんな、そんな自分が、一番、

コワイ




「今回もしたんだね?どうして?」

「-----が喜ぶから」

「ボクに褒められるのがイヤだって言うの?!」

「キモチワルイ。紅イノガベッタリマトワリツクノ」

「そっか。は綺麗だと思えなかったんだね?
ボクに醜いと思う格好を見せたくなかったんだ。そうでしょう?」

「紅イノガネ、ポタポタオチテクルノ」

は綺麗だよ。他の誰よりも。だからね?今度はそんな事しないで」





そして私はココにいる。

今も血生臭い匂いは取れないし、あたりに死臭は立ち込めているけど。

でも、それでも私は・・・・。




ちゃん、おはよう」

「おっはよ〜〜〜♪」

「お早う御座います。不二先輩、菊丸先輩。リョーマはまだ中ですか?」

「手塚が今起こしてるよ」

「そうですか」




信頼してくれる人たちがいる。

彼方にはもう従わない。

この腐った企画の首謀者の地位を、彼方が継いでいたと知った時は驚いた。




「うぃっす」

「遅いよ、リョーマ。先輩はもう写し終えてる」

「朝って苦手なんだよ」

「さっさと写して?今から移動するから」




彼方を殺す。

それまでは、その時までは、私は彼方の-------でいる。

その時が来たら、私は今一度殺人鬼に戻るわ。




「そういえば、組み分けの事だが・・」

「皆でD-4に向かって、リョーマは私と他の人を助けに行く。先輩方はそこで待機」

「ココに行ってどうするの?」

「脱出するんですよ。ただし3日目、私の優勝が決まって、ある人を殺してから」

ちゃん??」

「それまでは、ココに潜んでいて下さい。もう禁止区域になっているから安全です」

「これは?」

「万が一、特殊部隊が来た時にです。そして出来れば、何人か救って欲しい」

「了解。オレ、機械系得意でよかった!!」

「期待してますよ。それと・・」




パンッ    パンッ




そんな時だった、誰かがこちらに向かってくる音が聞こえる。

それを追っているのだろう銃声と共に。




「木に隠れて!!会話を聞かれてしまいます!!」

「俺は残る!!」

「バカおちび!!ちゃんの足手纏いになるじゃんか!!」

「有り難う御座います、菊丸先輩。さあ、急いで!!」




ガサ  ガサ




4人が木の穴に飛び込むのと、向こうが現れたのはほぼ同時。




「樺地クン?・・・と跡部先輩・・・・・」

「跡部さんを・・・おねがい・・・します・・・」

「えっちょ!!」




倒れ込んできた樺地の背中には、何発もの銃弾。

流れ落ちていく紅が、背負われていた跡部のポロシャツに染み込んでいく。

跡部は更に無残なものだった。

肩の骨は砕け、顔面が潰れて、既に事切れている。




「なんや、もう死んどったんかいな。跡部のヤツ」

「忍足先輩じゃないですか」

「こりゃ偶然やなあ。ココで会えるとは思わんかったで?」




その後ろから出てきたのは、片手にベレッタM84F。

もう片方にトンファーを持った、氷帝天才、忍足侑士。




「随分と惨い殺し方ですね」

ちゃんに言われとおないわ」

「そうですね。でも、そんな迷った眼をしてちゃ、ココでは優勝できませよ?」

「迷った眼?何のコトや」

「己で虚勢を張って、狂ったのはこの状況の所為・・・・醜いですよね」

「っ!!そない言うんやったら、殺してみぃ!!」




トンファーを振り回しながら、駆けて来る忍足。

これなら迂闊に近付けないと思ったのか・・・・。

だが、相手は

何年と政府の飼い狗であったに、そんな物通用する筈が無い。

トンファーを避け、懐に入り込んだは、鳩尾に蹴りを一発。




「っ!!!」

「判りましたか?彼方は私には勝てない」

「それでも、それでも俺は生き残るんや!!!」




立ち上がった忍足に、イングラムM11を構え、

また何時ものように、首輪狙いかと思った。

しかし、後ろにいたのは、迷彩服の見知らぬ男。




「なんやっ・・・コイツ・・・・」

「特殊部隊・・・・ちょっと?私の楽しみを邪魔しないで」




再度、忍足に銃口を向け、今度はしっかりと首輪を吹っ飛ばした。

後ろで肩を抑えていた、特殊部隊と共に。




「大丈夫ですよ。もう、狂ったフリなんてしなくてイイ」

「オレは・・・ただ・・・・・」

「判っています。今はもう、何も喋らないで・・・・」




へたりと座り込んだ忍足を抱きすくめて、放った言の葉。

それはまるで、自分に言い聞かせるかのように。




永眠者壱拾八名。

内、覚醒者伍名。