忍足を救出した後、小走りで港に向かった6人。

途中、何度もカメラを壊しながら。

銃は弾の無駄使いになる。

忍足の持っていたトンファーが役に立った。

そして、約30分ほど走り詰め、ようやく目的地。

この時程、自分達の鍛えられた身体に感謝した事はないだろう。




「特殊部隊が出てきてしまったという事は、船が既に着いているという事です」

「それを乗っ取ればいいんか?」

「早まらないで下さい。そんな事をすれば、皆殺しです」

「3日目。ちゃんが優勝するまで待ってから・・・・だね?」

「そうです。絶対に見つからないようにして下さい。見つかったら・・」

「このトランシーバで連絡すればいいんだな」

「御願いします。とりあえず、港の中にもカメラがあるといけないので、そこまで一緒に・・」




港が見える森の外れで話していた6人。

見えた人影。

それは、戦いを示す銃声と共に。




!!」

「そこで待ってて」




見えたのは、逃げる2人。追う1人。

だが、明らかに追う方が有利な体制。

は、イングラムM11と、

近くにあったワルサー・PPKを掴むと、森からゆっくりと出て行った。




「なんでだよ!!俺たち仲間だろ!!」

「仲間だ?まだそんな事言ってんのかよ。呆れてモノも言えねぇな」

「仁王君を殺したのは彼方ですね?」

「良く判ってんじゃねぇか。お前等はココで死ぬんだよ」




手に持っているアーミーナイフを2人に向ける、ジャッカル。

の位置からは見えるモノ。

ジャッカルの鞄から見え隠れしている、ヘッケラー&コックMP5。

それは、ソイツが殺しをした証拠。




「ま、これも情けだ。首が飛ぶのがイイか、コイツで心臓を一突きか。選べよ」

「っく・・・・」




首が飛ぶ・・・・すなわち、禁止区域となっているD-4に入れという事。

もよく使った手。




「選べねえのか?だったら押し込んでやる・・」




ぶしゅっ




が発砲しようとしたその時だった。

ジャッカルの首が落ちたのは。

噴出す紅。

綺麗に切れた、頭が乗っていたそこは、まさに芸術。

飛び散る紅が、そこら中を紅く染めていく。

この世のものとは思えない、紅い噴水。

勿論、狙われていた2人。丸井と柳生も染まっていて。




「大丈夫っすか!先輩!!」

「きっ切原・・・・」

「丁度そこで、見えたもんだから駆けつけ・・」




パンッ




「駆けつけ?殺すために?」

?なに言ってんだよ。オレは先輩を助け・・」

「どうでもイイ。この2人は私の獲物。楽しみを奪わないで?」

「なっ!!だったらオレが殺すまでだ!!」




発砲。これは只の威嚇程度。

は、とんだ首をD-4に蹴り入れた。

首輪が点滅をはじめるのは必然で。

それは死へのカウントダウン。

案の定、その5秒後には、




どっかぁん




辺りの物を吹き飛ばし、ジャッカルの首は跡形も無く消え去った。

残ったのは、首なしの胴体と、肉片。

あちこちに飛び散る肉片は紅黒くなっていて、一見肉片だとは判らない。

だが、その感触は残っている訳で。

が踏むたびに、グニュグニュという音が聞こえてくる。




「その手榴弾なに?」

「これは、拾ったんだよ!!」

「ふうん。ま、私そういうの好き。私も沢山使ってきたから。そういう手」

「拾ったって言ってんだろ!!」




一歩ずつ切原に近づきながら、の口は塞がらない。

襲われていた2人は違う意味で、口が塞がらない様子だが。




「現実逃避している人って、そういうの信じたくなるから」

「来るな!!それ以上近づくなら、お前も切るぞ!!」

「切れるの?2人の血を浴びて、錆びてしまった斧で?」

「だからなんなんだよ!!それ以上、先輩に近づくな!!」

「切・・は・・ら君?2人とは・・・・・」

「・・・・・・・・・・・っけ。上手くいけば3人殺せたってのに」




失態。それは、致命傷。

はいつでも襲えた。

それをあえてしなかったのは、へたり込んでいる2人に判らせる為。

ココは、そういう場所だという事を。




「殺す?私を?ムリだよ。そんな斧と手榴弾じゃ」

「こっちには人質がいるんだぜ?」

「その2人が死のうが何しようが、知った事じゃない」

が越前を助けてるトコ見たぜ?こいつ等も助けたいんだろ!!」

「放送、聴かなかったの?莫迦も大概にしてくれませんか?
あんな物、利用するだけしたら、後はもう用済みですから」

「っく・・・くそ!!」

「典型的な行動パターンですね」




まっすぐこちらに向かってくる、切原。

にとって、そんな行動パターンを読むのは容易い事だが、

何故か頭を駆けめぐったのは過去。

機械仕掛けのオルゴールのように、何度も何度も。











「私は狗・・・機械・・・・・アノ人の・・・・」




斧を難なく交わした

鳩尾と腕に蹴りをくらわせ、鞄を落とす。

大事な大事な武器が入っているから。



斧を両手に持って、駆けて来る切原。

その瞳は紅くて、これから自分を染める紅にとても似ていた。

そして3度目、蹴りを入れた時、切原は思いっきり吹っ飛んで、




ピッピッピッピッ・・・・




どかん




散った。

全身粉々で、それを直に受けているの服、顔、手足に肉片がつく。

顔についた肉片を払い、しばしそこに突っ立ていた

そして、クルリと丸井と柳生に向き直った。

その瞳に生気は無く、ただ闇が映るのみ。

震える手で、両手に持っていた銃を構える。




ぱあんっ




永眠者拾仇名。

内、覚醒者伍名。



彷徨者六名。

内、覚醒者壱名。