「うるっさ」
丁度、教室の真下に位置する此処に来たのは、
明らかに間違いだったかも知れない。
けれどまあ、あそこにいるよりもマシだろう事は明白だ。
「見た目は上出来」
お菓子作りが好きな身としては、
やっぱり見た目も大事で。
コーンフレークやココナッツ、粉砂糖をまぶした、
色んな種類のトリュフが、箱から顔を出している。
「味は・・」
「、」
「んあ?」
「アッソブ!」
「ヒバードじゃん。ご主人様は?」
「ヒバリ、ミマワリ!」
「そっかそっか・・・・鳥ってチョコ食べんの?」
ふんわりと指にとまったヒバードを撫でながら思う。
「コーンフレークとかなら大丈夫かな?」
指でつまんだトリュフを持って行けば、
おそるおそるながら啄む姿に癒された。
「流石にチョコは食べないか」
周りのコンフレークを、粗方食べ終えたヒバードは、
の頭上を旋回しつつ、
雲雀に教え込まれた校歌を歌っている。
残ったチョコレートの部分を捨てるのは、
至極勿体ない。
勿論、はそのままそれを口に入れる・・・筈だった。
「まあまあだね」
「もしもし?」
「勝手に人のペットに餌付けしないでくれる?」
「それはすみませんでした」
「餌付けなら僕がされてあげるよ」
「頭を何処に打ち付けやがったんですかね?」
指に着いたコーンフレークまで、
綺麗に舐め取っている風紀委員長は、
一体どこからお出ましになったのやら。
「ほら、まだあるんでしょ?」
「ありますけど・・・・」
「何?こいつにはあげられて、僕には無理ってどうゆう事?」
「耳までダメになりましたか」
それが至極当たり前のように、
自分の隣に腰掛ける雲雀。
恐ろしいと、モーゼの十戒が如く、人が割れる此奴。
だけども自分はそうは思わない。
少し頭の逝ってしまった可哀相な先輩だ。
「はあ。どうぞ。口に合わなくても知りませんよ?」
「食べさせてね」
「・・・・・・・・」
「さっき咬み殺してきた奴らの返りt・・」
「はい、口開けてくださいねえ」
ヒバードと変わらず鳥のようで。
静かにトリュフが溶けるのを待っている雲雀は可愛らしいと、
少し思ってしまった自分の頭を疑った。
自分の手の中にある、もう半分になってしまった包みを見やる。
白くおしろいされた、定番のトリュフ。
雲雀は未だに、
口の中にトリュフを含んだまま、じいっとしていて。
静かすぎるこの時間が怖いと思いつつも、
たまにはこんなのも良いかと思ってしまう。
「ほら、口開けて」
「これ、私が作ったやつなんですけど?」
「僕が直々に食べさせてあげるって言ってるんだから」
「自分で食べれますよ」
「口開けないと咬み殺すよ」
「あのですね・・・」
「なんなら僕がこれから君を食べて・・」
「開けます開けます」
ほのぼのした空気なんか夢だったんだ。
こいつの脳内薔薇塗れだから仕方ない。
大人しく口を開ければ、
ころんっと転がり込んできたトリュフ。
味も宜しい。上出来だ。
「今キスしたら甘いんだろうね」
「しないで下さい」