「!!」
さっ。
ずべっ。
「大丈夫だった?」
「骸様、それじゃ、不法侵入だびょん!」
「何してんの?」
「チョコレート菓子の調理実習があると聞きましてね、
私のために作ってくれているなら、取りに来ないといけませんから」
顔面ダイブをかまして、擦り傷だらけの顔は、
いつもよりもおぞましい。
そんな顔で高らかに演説されても、
魅力なんてゼロだ。
「あのさ骸?」
「なんでしょう?」
「とりあえず、黴菌入ったまま食べられてもやだから、
公園かどっかで手当さしてくんない?」
「お医者さんプレイですか!!」
「千種、殴って」
「分かった」
鈍い音と、どさりという音。
顔が綺麗な奴ほど、心が荒んでいるのは本当かも知れないと、
切実に思うのであった。
「ん・・・ここ・・は・・」
「、骸様、起きたれす!」
「水かけといて」
「分かったびょん!」
「犬、かけたらどうなるか、分かっていますね?」
「きゃいんっ!」
「ちょっと、起きて早々人殺ししないでよ。面倒臭い」
そこら辺に散らばった包帯やら消毒やらを片付けながら、
何故か眼がキラキラしているパイナップルに向かって言った。
言わなければ、訳の判らない妄想が聞こえてきそうだからだ。
「・・・・私のためにナー・・っ!」
「とりあえず黙れ。お前」
「お茶の用意できたよ」
「行こう、犬」
口に詰められたチョコチップマフィン。
ぽけえっと、3人が仲睦まじくお茶をする様子を見ながら、
徐々に拡がっていく甘味を堪能する。
「美味いれす!!」
「うん。あんまり甘くないし」
「そっちは珈琲生地だからね」
「」
「何?」
「これ、ホワイトチョコレートですか」
「そうだよ。あんた甘いの好きなんでしょ?」
「教えてもいないのに!愛の力で・・」
「さっき犬と千種から聞いた」
ばっさり切り捨てられても、
いくつかある味の中から、
彼女が自分のために選んでくれたとなると、
嬉しさが込み上げてくる。
「そっちは抹茶」
「俺、苦手だから、カキピーにやる」
「犬は苺の方が良いんじゃない?」
「れすね!!」
「紅茶のお代わりいる?」
「頂戴」
背中にすら感じてしまう愛情。
重症だ。
自覚はしている。
「骸、顔、酷いよ」
「うわ」
「・・・・・骸様、それは・・」
どれだけ崩れていようと、
関係ないくらいに。
「来ないの?」
「行っても良いんですか?」
「弱気な骸なんて気持ち悪いんですけど・・・・」
「来て欲しいならそう言ってください」
「マフィン無くなっちゃうよ」
「今、行きます」