去年と同じく、
チョコレートをテンパリングしながら、
ふと、目がいったのは、レシピの切れ端。
みんなに御礼をする中で、1人くらい、特別がいたって・・・。
焼き上がったクッキーにデコレーションをし、
1つ1つ、キャンディー型に包んでいく。
其れを籠に入れて、配る準備が出来上がれば、
次のお菓子へと取りかかった。
「はい」
「ホント、毎年よくやるよ」
「今年は、シンプルにクッキー」
「ありがとう御座います。姉様」
「ハッピーヴァレンタイン」
「お返し、何が良い?」
「要らないよ」
「去年はノートパソコンだっけ?」
「要らないってば」
「拷問のやり方教えてやるね」
「絶対に要らない」
「そういえば、ヒソカは?」
「あいつ蜘蛛違う。いないの当たり前よ」
「でも、いっつも遊びに来るのに・・・」
今日に限って来ないなんて。
折角、ラッピングも気合いを入れたというのに。
「あたし、捜してくるね」
「!?」
止める誰かの声などお構いなし。
コートを引っ掴んで、雪の降る中飛び出した。
今日ちゃんと伝えないと。
今日に勇気を貰ってちゃんと。
街に出れば、カップルカップルカップル。
右も左も前も後ろも、
ピンク色した空気が渦巻いている。
そんな中で、小さな包みを抱えながら捜し人のある自分が、
凄く滑稽に思えてしまった。
ゆっくりゆっくり、足を止めた。
隣を通っていく人など、
誰一人として知らない。
知らないのに、聞こえてくる声が、
自分を嘲笑っているようにしか聞こえなくて。
耳を塞ぎたい。
けれど手には、大事な、大事な気持ちが・・・。
「ヒソカの莫迦」
「も莫迦★」
「え?」
さした影は、捜し人。
上を向かされた瞳に、いつもどおりの彼が映った。
「人通り多いところ嫌いな癖に◆」
「だって・・・・」
「だって?」
「何でもない」
「嘘吐き★」
抱きしめられて、マフラーを巻かれて。
手を引かれるままに着いて行く。
先程と違うのは、行き交う人の視線と言葉が、
気にならなくなったこと。
「だって、なんだい?」
「良い。あたしの勝手だから」
「ボクが聞きたいの◆」
「イヤな気持ちになる」
「決めるのはボク★」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「◆」
また、上を向かされて、頬を固定される。
涙が伝う。
伝えなくちゃ。
「ヒソカが、ホームに来ないから」
「来て欲しかったのかい?」
「・・・・・・うん」
「嬉しいねえvv」
「あの・・・・ね、これ」
甘さを控えめにして、
だけど楽しめるように、
中にはたっぷり甘い、生チョコを入れて。
白砂糖を振って、御化粧までして。
「ヒソカに」
「違うよ◆★」
「え?」
「ボクだけに・・・だろう?」
「うん」