去年と同じく、
チョコレートをテンパリングしながら、
ふと、目がいったのは、レシピの切れ端。
みんなに御礼をする中で、1人くらい、特別がいたって・・・。
焼き上がったクッキーにデコレーションをし、
1つ1つ、キャンディー型に包んでいく。
其れを籠に入れて、配る準備が出来上がれば、
次のお菓子へと取りかかった。
「はい」
「ホント、毎年よくやるよ」
「今年は、シンプルにクッキー」
「ありがとう御座います。姉様」
「ハッピーヴァレンタイン」
「お返し、何が良い?」
「要らないよ」
「去年はノートパソコンだっけ?」
「要らないってば」
「拷問のやり方教えてやるね」
「絶対に要らない」
籠の中のクッキーを配り終えて、
底に残った、ちょっと大きな包みを見やる。
去年は、送って貰って終わったんだっけ。
「やっぱり、自分で渡した方が良いよね」
「何がだい?」
「ちょっと、行ってくる」
「何処まで」
「其処まで」
マフラーを巻いて、包みを抱えて、ホームを後にした。
捜索隊が出動するまで、あと数秒。
いつ来ても、立派な門だなあ。
と、そう見上げる、ククルーマウンテン頂上。
胸の鼓動が外まで聞こえてきそうである。
なんて言おう。
去年は送った理由を聞かれたらどうしよう。
そんな事を考えながら、
何分経過しただろうか。
向こう側から扉が開いたことに気付いたのは、
頭にぶつかってからだった。
「何してるの?」
「イルミ」
「やっと嫁に来る気になった?」
「違うから」
「そ。でも寒いでしょ。入りなよ」
気配を辿って来てみても、
待てど暮らせど入ってくる様子はなく。
終にしびれを切らして開けてみれば、
彼女には珍しい、失態。
「手、冷え切ってる」
「そんなに長いこといたのかな」
「覚えてないの?頭、大丈夫?」
「大丈夫です」
「で、用があって来たんでしょ?」
「うん・・・まあ・・・・」
歯切れの悪い答えは、
意味のあるときにしか返さないが、
今日はやたらとしどろもどろ。
それも可愛いと思ったりするのだが・・・・。
「甘い、匂いがする」
「イルミって何者?」
「悪者?」
「そうじゃなくて・・・」
「チョコレート」
「ブラウニー」
差し出されたのは、去年とは違うもの。
キルアに送られてきたのとは違うもの。
素直に嬉しかった。
自分だけ特別なことが。
だから、いつもより強く抱きしめた。
「痛いよ」
「痛くない」
「イルミはね」
「も痛くない」
「痛いんだってば」
「もうちょっと我慢して」
「しょうがないなあ」