自分は男だ。
男だけれども、
どうにかして、日頃の感謝を伝えたいと思うのは、
当たり前のことなのだと・・・。
思いたい。
「ふう」
赤髪の海賊船から、
奇跡の大脱走劇をやってのけたは、
今、街を一生懸命歩いていた。
前よりも短くなった手と脚は、
彼に何十倍もの疲労を蓄積させるには十分で。
かれこれ1時間歩いただけなのだが、
それでも額から出る汗や、
脚の痛みを否とは言えない。
「(さて、どうするかな)」
自分の所持金を見て思う。
小遣い云々で貯めてきたお金は、
使われていくことを知らず、
の懐に収まっている。
何故なら、変態と化した子煩悩魔神達が色々と不自由なく、
そりゃもう、不自由なく、買い与えてくれるからだ。
「(お酒・・・は、こんな子供が買ったらやばいか?)」
けれど、彼の好きな物なんて、
それくらいしか思い浮かばない。
後は、キラキラと光る大海原か、
それに眠る財宝か。
「ん?」
ふと目に止まった其れを手に取る。
キラリと太陽に揺れたそれに、
良い物を見つけたと、
滅多に見せぬ満面の笑みで、は笑った。
そのおかげで、品物がタダになりそうなところ、
必死で半額押しつけて帰ってきたのは内緒だ。
「しゃんくす〜〜〜?」
大脱走劇の後だから、
帰れば必ず素っ飛んでくると思った赤髪が来ない。
大幹部達のおしかり(と言っても些細なもの)を受け、
捜索中なのだが出てこない。
「お頭には近づくなよ」
「変態菌に感染するからな」
「明日になれば戻ってるさ」
大幹部達の、意味ありげな瞳と、
その、あまりにも聞き慣れた注意が、
少しばかりを躊躇させたが、
とにかく、今日中に見つけ出さないことには意味がない。
とうとう、彼の部屋の前まで来てしまったは、
意を決して、ラスボスに挑むが如く、
その扉を叩いた。
「しゃんくす?いるんでしょ」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・(大好きとか言ってやれば出てくるのか?これは)」
扉の隙間からうじうじした空気が流れてくる。
扉の周りは既に、苔とキノコだらけだ。
「・・・・・・・・せっかくしゃんくすにぷれぜんとか・・」
ばたんっ。
ごんっっっ!!
「っっっっっっっ!!!」
「!!おまっ!かっっ顔!傷っっ!!嫁っっっっっ!!!!」
「(揺するな!糞ボケ船長め!!)」
ぐわんぐわんと回る頭を支えて、
とりあえず落ち着いたシャンクスに、
すっと街で見つけたそれを渡した。
「これ・・・」
「きょう、おれのくにでは、すきなひとにぷれぜんとあげるひだから。
おれのわがままきいて、つれてきてくれて、ありがと。しゃんく・・」
「!!!!!」
いつも通り、変態発言は、聞かざる能力発動で。
それでも今日は、
痛いとか、我慢してやろうと思うのだ。
女の子じゃないけれど、
感謝が伝われば、其れで良いと思えるから。
『すきな・・しゃん・・すきな・・・しゃん』
「良いよなあ」
「なんのテープだ?そりゃ」
「の一世一代の告白だぞ!いいだろ!!」
「(後で燃やしに行こう)」