自分は男だ。
男だけれども、
どうにかして、日頃の感謝を伝えたいと思うのは、
当たり前のことなのだと・・・。
思いたい。
「ふう」
赤髪の海賊船から、
奇跡の大脱走劇をやってのけたは、
今、街を一生懸命歩いていた。
前よりも短くなった手と脚は、
彼に何十倍もの疲労を蓄積させるには十分で。
かれこれ1時間歩いただけなのだが、
それでも額から出る汗や、
脚の痛みを否とは言えない。
「(さて、どうするかな)」
自分の所持金を見て思う。
小遣い云々で貯めてきたお金は、
使われていくことを知らず、
の懐に収まっている。
何故なら、変態と化した子煩悩魔神達が色々と不自由なく、
そりゃもう、不自由なく、買い与えてくれるからだ。
「(煙草・・・は、こんな子供が買ったらやばいか?)」
けれど、彼の好きな物なんて、
それくらいしか思い浮かばない。
後は、休みの一杯という琥珀色の飲み物か、
其れと共に開く、難しい書物か。
「ん?」
ふと目に止まった其れを、手に取る。
キラリと太陽に揺れたそれに、
良い物を見つけたと、
滅多に見せぬ満面の笑みで、は笑った。
そのおかげで、品物がタダになりそうなところ、
必死で半額押しつけて帰ってきたのは内緒だ。
「べん〜〜〜?」
大脱走劇の後だから、
帰れば真っ先に彼からおしかりを受けると覚悟していたのだが、
どうしたものか。
影も形も見あたらない。
「るう、べんは?」
「聞かない方が身のためだぞ?」
「え?」
「今は近づくな」
「しゃんくす?」
「お前が大脱走劇なんてやるからだよ」
「やそ?」
心配したんだぞ。
そう言って撫でて貰える頭を期待していたのに・・・。
それでも今日中に見つけなければ意味がない。
全ての非は、自分にあるのだから。
とうとう、彼の部屋の前まで来てしまったは、
意を決して、ラスボスに挑むが如く、
その扉を叩いた。
「べん?」
「・・・・・・・・」
「(どうしよ。これ、まじで怒ってる)」
扉の隙間からぴりぴりした空気が流れてくる。
扉の周りは既に、炎と雷だらけだ。
「・・・・・・・・べん、かってにでてってごめんなさい」
「・・・・・・・・」
「はいっていい?」
「・・・・・・・・」
帰れと、無言で言われているような気がして、
は少しばかり狼狽えた。
頬に伝う雫も。
声を出さないようにと必死だけれど、
それでも、5歳児の身体に、嗚咽を堪えるという行為は、
少しばかり過酷すぎたのかも知れない。
「・・・・・・・」
「ごめっっなさっっっ(なんで俺はこんなぼろぼろと・・・・)」
「。オレも大人げなかった。悪かったな」
そう言って抱き上げられると安心する。
やさしくて、あたたかいその腕の中。
いつも変わらないぬくもり。
「こ・・れ・・・・・べんに・・・」
涙は止まらないままだけれど、
すっと街で見つけたそれを渡した。
「これ・・・」
「きょう、おれの・・く・・にではっ、
す・・・きなひと・・にぷれぜんとっ・・あ・・げるひ・・だから」
「ヴァレンタイン・・だったか?」
「しって・・・るの?」
「まあな。伊達に本は読んでない。ほら、もう泣き止め」
いつも通り、その胸に顔を埋めて、すがる。
女の子じゃないけれど、
感謝が伝われば、其れで良いと思えるから。
すくってくれた涙が、ぽたりと床に落ちていった。
「ベン。そりゃなんだ?」
「からのプレゼントだ」
「ずるいぞ!!オレには!!???」
「たっったすけて・・・べん」