そこら中に充満する、

ピンク色した浮き足立つ空気。




「恋人に甘い時間と甘い言葉と甘い贈り物を・・・・だってよ」

「何処の誰が考えたのかしら」

「ま、十中八九、あの髭長爺だろうけどな」

「鼻がひん曲がりそうだわ」

「ハロウィンより酷いんじゃね?」




花束。

お菓子の山。

香水。

アロマキャンドル。

一つなら良い。

一つなら良いのに、混ざり混ざって、

えも言えぬ香りが充満していることに、

他の生徒は気付かぬのだろうか。




「鼻の感覚が麻痺してるのかしら」

「だろうな」

「あ、いた!」

君!」

「受け取って!!」

「頑張って頂戴?」

「見捨てる気か!?」

「あら、私は激励を送っただけだけれど?」

「くそっ!」




走ってゆくガーディアンを見送って、

はその場を颯爽と後に、しようとした。




「「ひめぇ〜〜〜〜〜!!!!」」




大広間の壁に、綺麗な人型の穴が開いた。

それを笑って通り過ぎる長髭は、

やはり、大物・・・で片付けられるかは別として、

人としての次元はとっくに超えていると言えよう。




「ひっめ!」

「重いからのいて頂けないかしら?」

「ボク等から、」

「「甘い時間と甘い言葉と甘い贈り物だよ!!」」

「要らないわ」

「なんで!!??」

「姫は私達の愛の告白すら受け取ってくださらないというのですか!」

「暇じゃないのよ」




それじゃあね、と手を振ろうとして、

まあ、それを悪戯仕掛け人が許す筈もなく。

呆気なく引かれて飛び込んだジョージの胸。

目の前にはフレッドの、そりゃもう嬉しそうな顔。




「はい。クッキー」

「姫、甘い物苦手だろ?」

「贈り物ぐらい受け取ってよ」




一気に吐き出してやろうかとも考えた。

そこかしこで、煙を吹き出したり、火を噴いたり、

耳をはやしたり、羽根をはやしたりしてる魔法使いを見れば。

けれど、ちょっと困ったような2人の顔に、

少なからず良心が働いたのも事実だから、

しっかり咬んで、飲み込んでやったのだ。




「美味しいわ。有り難う」

「ほらな!オレのデータは嘘つかねえだろ!」

「砂糖の配合したのはオレだぞ?」

「2人で協力したんでしょう?」

「「その通り!」」




何も起きずに拍子抜けして、

まあ、甘味は本当に自分の好みだったから、

データ云々の会話はスルーしたが・・・。

ちゃんと御礼を口にする。




、この後暇?」

「何も予定はないけれど」

「WWWの話しない?」

「また開発商品?」

「それもあるけど、ちょっと行き詰まっちゃっててさ」

「いいわよ」




これしきのことで、飛んで喜ぶ彼等は、

本当に皆の、光、で。

とても、尊敬すべきことだと思うのだ。




「何処で話すよ相棒」

「中庭と裏庭は却下だ。ピンクピンクしてて集中できない」

「同感ね」

「そうなると、談話室もダメだろ?」

「オレ達の部屋は・・・微妙だな」

「じゃあ、私の部屋でどうかしら?」

「姫の部屋に入れるのですか!!?」

「それはもう喜んで!!」




両側から取られた腕も、嫌な気はしない。

エスコートしてくれる2人の騎士を連れて、

螺旋階段を上った。




「自室にナイト如きを招き入れるとは」

「至極光栄の至り」

「ナイトなら、いつでも側にいて、私を守るモノでしょう?」

「「流石、姫!!」」




御礼に、特別なティータイムを。