「なんだって?!」
ロンの悲鳴が談話室の端で上がった。
「し〜!!静かに!!」
ハーマイオニーがシッと口を閉じさせた。
ハリーの腕に巻かれた包帯が、何が起こったのかをあらわしている。
「本当に、マルフォイに廊下から押されたの?」
「そうさ、僕らがトイレから帰るときに後ろからドンッて!
奴らしい最悪に卑怯な手口だ!今日の午後からクィディッチの試合だって言うのに―!!」
「あいつら、よっぽど実力で勝てないのよ・・・」
「だけど、僕どうしよう。骨が折れて、医務室で治すのにかかる時間は4時間。
そんな事してたら試合が始まっちゃうよ・・・でも、こんなことウッドに言ったら・・・!
やっぱり僕、片手だけでいいから出るよ。今日は大事なスリザリンとの決勝試合なんだから!!」
「無茶言わないでくれよ!!せめて延期・・・って、それをした時点で負けさせられるな。
今日の試合だけはどうしても・・・!僕が代わりに出ようかっ?!」
一瞬ロンの目が輝いたように見えた。
しかし、そのロンの瞳が豆電球の光だとしたら、ハーマイオニーは太陽顔負けな光を発した。
そして、思いついたようにハーマイオニーがハリーとロンの肩を寄せた。
「それ・・・!そうしましょう!!」
「「え?!」」
「だから、ハリーの代わりに他の人をハリーの代わりに出すの!
前に使ったポリジュース薬がほんのちょっと残ってるの。上手くすれば使えるかもしれないわ・・・
ロンか私だと、多分マルフォイがチェックしてるからすぐばれて無駄よ。だから、これはどう?
『絶対に気づかれない、裏グリフィンドール生の箒の名手に、ハリーになってもらう』
ってのは!」
「じゃじゃ〜ん♪」
の仲良しの友達の一人、ケイトがニヤニヤと一枚の写真をちらつかせた。
「「「何何?!」」」
「あっ!///なななっ・・・!!!」
一人が慌てて震える手で写真を指差して動揺した。
他のジュリアンとロミナはきゃあ〜といって のわき腹を突付いた。
「ケイト!なっ!なんでそんな写真っ!!!///」
「なんでって、前のクィディッチの試合で勝った時のノリで撮ったのよvvどう?貴方の愛しの・・・」
「やややっ!やめてよっ///」
ががばっと写真をとった。
そう、その写真に写るのは他でもない、 の想い人。
喋った事もないけれど、いつも元気でかっこよくて、
それでいて優しくて皆に笑顔をくれる最高の2人組み。
燃えるような赤毛を持つその双子の少年達は、
写真の中でバッチリカメラ目線で肩を組んでピースしながら飛び跳ねている。
「あらあらvv初々しいわねぇ、ってば本当に!」
「ほっといてよ!!///」
はふいっとそっぽを向いた。
3人ははしゃぎながら の周りに集まる。
「んもう、素直じゃないんだから♪いいじゃない、話したことがなくっても!
いくらあの2人がモテルって言ってもだれても付き合ったこともないし、
案外を待ってるのかもよ♪」
「そうよそうよ、貴方はとても魅力的だわ!ただ、今は話す機会がないだけよ!」
が机に沈み込んだ。
確かにあの2人はモテるのだ。私なんかに振り向くはずがない。
「話す機会があったとしても、私、男の子と話すなんて得意じゃないわ・・・
それに、きっとあの2人は私みたいな地味な子の事なんか存在だって知らないに決まってる。」
ちょっと本気で凹んでいるをみて3人は目を合わせたが、すぐにニコリと笑った。
「今はチャンスがないかもだけど、話せばきっと貴方が素敵な子だってわかるはずよ?」
「だって貴方は女子の中じゃ一番人気ですもの!」
「・・・女子の中ではねぇ・・・
男子と、あんまり喋らないからどうしても男子からは存在を忘れられがちなのかもね」
深い溜息の後、ロミナは2人にバカとチョップされた。
「とにかく、自信持ちなさいよ。今日のクィディッチも応援するんでしょ?
ほら、それお守りに持ってなさいよvv」
「えぇ///は、恥ずかしいよ!!見つかったりしたらストーカーだと思われちゃう!!」
「やだ^^見つかりはしないわよ!じゃあ、ついでに・・・」
ケイトがピンクのペンをとり、写真のフレッドとジョージの頭の上らへんに大きく文字を書き始めた。
「ほら見て?
『愛するフレッドよジョージ、早く私の気持ちに気づいて!! BY、 』」
ジュリアンとロミナが爆笑した。
「ひひひっ!ひどぉい!!ここ、こんなの書くなんて!落としたらばれちゃうじゃない!!///」
「「「落とさない落とさない♪」」」
陽気に返事をする3人の奥から、見つけた!という声がした。
の友達の、ハリーとロンとハーマイオニーだ。
「HI!今とお話してもいいかしら?」
ハーマイオニーが言うと、ケイトもジュリアンもロミナも快く承知した。
はなんだろうと首をかしげた。
ケイトたちが出て行くのを確認して、ロンが言いにくそうに話した。
「、君に協力して欲しい事があるんだ・・・グリフィンドール生なら解ってくれるだろう?」
「???」
「えぇ!?わ、私が?!」
11時の鐘と共に、一人の愛らしい癖のある声の主が先ほどのロンと同じように悲鳴をあげた。
「そう、、無理かしら・・・?」
ハーマイオニーが目配せをした。
「む、無理よ!私、箒なんか上手くない!
それにハリーのようなすごいシーカーの代わりなんか私にできるはず無いわ!!」
ハリーが一瞬嬉しそうににやけた。
「いや、そんな事ないよ」
ハーマイオニーがポリジュース薬の説明を にしている間に、
その『・』について説明をしよう。
彼女はグリフィンドール3年生、ハリー達の同級生だ。
黒髪の胸までのさらさらの軽い髪は、白い頬の横を風に合わせてフワリと舞う。
太い黒縁の重そうな眼鏡をかけているが、度はあまり入っていないようだ。
透き通るような肌、ほんのり桃色の頬に花のような唇。
グレイの瞳がキラキラと輝く真珠のように、その縁の中から覗いていた。
小柄で華奢でまさに可愛いらしい子なのであるが、
性格がひっこみ事案な為存在を忘れられがちである。
しかし、おっとりしていて優しい性格なので女子の間では特に人気で、
一部の男子からも憧れられているそうだ。(男子とはあまり話せないらしい;)
ちなみに男の子相手でもロンとハリーとだけは普通に話すことができるらしい。
一応結構仲良しなのだ。
ハーマイオニーと同じくらい(学年順位いつも一桁)賢いのだが、
ハーマイオニーのように手を挙げる勇気がないので気づかれにくい。
そんな彼女の特技は飛行術で、ハリーのように大胆なことをしなかったので
フーチにもマクゴナガルにもシーカーの目をつけられなかったが
実力はハリーと同じくらいだとハーマイオニーは踏んでいるらしい。
「知ってるわ!貴方は本当に才能あるのよ!お願い!!」
「、僕からも頼むよ!」
「ポリジュース薬を飲んだ時は多少まずいけど、
すぐに元の姿になれるし!ハリーの代わりになれるのは君しか居ないんだ!」
は、腕を組んで考えた。
「ん〜・・・」
私なんかじゃ、役に立てるか心配だけど・・・
私も今日の試合は是非グリフィンドールに勝って欲しいし・・・
聞くところによると、ハリーはマルフォイに酷いことされたんだし、
それは友達として腹が立つし・・・
すぐに戻れるんだし、すぐに見つけてすぐ試合を終わらせちゃえばいいのよね!!
それに・・・///ひょっとしてひょっとすると、あの2人とも話ができるかもしれないっ!!///
はローブの下のスカートのポケットを軽く触って、その中に写真があることを確認した。
そして、にこりと微笑んだ。
「うん、いいよ」
ロンがはしゃいだ。
「ああ!サンキュ!!さすがだぜ!?
この前レイブンクローの奴に『だって頭いいんだ』って言ったら、
『ってあの眼鏡かけた地味そうな子?』とか言ってたんだ。
は全然地味なんかじゃない!脳ある鷹は爪を隠すって言うだろう?!
僕、凄い悔しかったんだ!見せ付けて来てくれよ!!」
ハーマイオニーが頭を押さえた。
「ロン・・・試合に参加するのは、『』じゃなくて『ハリーの姿をした』なのよ?
見せ付けちゃったら正体ばれて試合中止よ。」
ハリーとが目を合わせてロンの事をにやっと笑った。
「あ!そ、そうだった・・・///」
「とにかく、そろそろ会場に行かないと・・・!ロン、ニンバス2000を持ってきて?
ハリーはのローブとそのユニホームを交換して姿がばれないように帽子をかぶって。
あと、にその眼鏡を・・・OK,
このポリジュース薬は、多分30分ぐらいで効き目が切れるわ。
その前に絶対!試合を終わらせてしまってね?大変だと思うけど大丈夫、あなたならできるわ。
じゃあ、、飲んで?」
ハーマイオニーのマシンガントークに圧倒されつつも、はそのコップを受け取った。
緑色になったその液体を見て、ぐえっと顔を歪ませた。
そして、ぐっと飲む。
瞬間、燃える様な、体中が暑くて焼けてしまいそうな感覚に襲われた。
まるで骨が熔けているようだ・・・!!!喉の奥が、苦しい・・・!!
そして、が息を荒く、顔を上げると、
そこにはハリーとロンとハーマイオニーが驚いた表情で立っていた。
「よし、成功ね。早く移動しなくちゃ・・・」
「凄いよ、まるでハリーだ。絶対にマルフォイ気づかないぜ?
これで がが勝ってくれれば問題ないよ」
「凄いや、僕がもう一人いるみたいだ!!!
あ〜・・・でもひとつ心配なんだ。『あの人たち』の目をごまかせるかな?」
ロンがハリーの言葉に顔をしかめた。
「あいつ等、そういうところに目敏いから・・・
とにかく、きっとあの2人はの正体を知っても解らないよ。
自分周りのグリフィンドール生しか覚えられてないんだから」
こうして、『2人目のハリー・ポッター』が30分だけ現れた。
その正体は、一人の内気な女の子だった。