「やあ★」
「また来たんだ」
「が大好きだからね◆」
「そうですか」
「は?」
「さあね」
わあわあと喚く団長は、数秒前に床とご対面した。
の拳によって。
「デートしないかい?」
「寝言は寝て言え」
「本気なんだけどな?」
「あっそ」
言葉でさらりとかわしながら、
背中から回す腕は払われることなく、
何時も通り、彼の胸の前で組まれたまま。
離せとは言われない。
けれど、もっとともせがまれない。
「クロロ、邪魔」
今まで座っていたパソコンの前から立ち、
既に意識が戻り、
涙の湖に顔を沈めている我らが団長を蹴り転がしたは、
すたすたと自室に戻って行った。
勿論、暇つぶしと称して、
もの凄く嫌がられながら、彼に会いに来た自分が、
其処で、はい、さよなら。
なんてするはずもなく、引き摺られるような形で、
部屋への帰路を共にした。
「いつ来ても、の部屋は綺麗だね★」
「何もないだけだろ」
けれど、君の鳥籠に入ることを許されるのは、
自分の特権だと知っている。
「ボク、最近家買ったんだ◆」
「へえ」
「一緒に住むだろvv」
「誰と誰が」
「ボクと、、が」
ベッドに寝転がり、外ばかり気にするをこちらに向かせ、
掠めるようにキスをして。
嗚呼、けれど、
君の意識はボクになんか向いちゃ居ない。
「イイ」
それが、要らないという意味だと分かってしまう自分が、
至極、嫌だった。
分からなければいいのに。
君の、気持ちなんて。
「そ★」
窓を開ければ吹きすさぶ雨がを濡らす。
靡く朝焼け色の髪が、少しずつ少しずつ湿っていった。
特別な餌で、在るだけで。
君の飼い主にはなれない。
「ヒソカ、風邪引く」
「もね◆」
「オレは平気」
「嘘吐き★」
「そうだな」
「いつまで自分を騙すんだい?」
「死ぬまで」
鍵の掛かっていない鳥籠で君は、
行くなと叫ぶ飼い主の元で、
羽根をばたつかせながら今も。
窓の桟に追いつめて、
もうすでにぐしょぐしょになっている唇を合わす。
下手すれば窓から外に落ちてしまいそうなのに、
はヒソカの服も身体も掴もうとしない。
「ボクが買ってあげようか?」
「無理だな」
「飼うのは?」
「高いぞ」
「我が儘◆」
「ヒソカの前だけ」
ぽたぽたと頬を伝うのは、
雨なのか、涙なのか、
2人とも濡れきった今ではもう、
判断なんて付かないけれど。
「一緒に濡れてくれる、ヒソカの前だけ」
「光栄だねvv」
誘い入れたのは君だけ。
特別だから。
いつもはない特別だから。
今日くらいは、鳥籠に鍵を掛けて。
そう、邪魔、しないでね。
「ヒソカ」
そう呼ばれて握られたシャツのしわを、
消さずに今日も会いに行く。
鍵の開いた鳥籠の鳥に。
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