ぱきゃっ



いい音と共に私に生卵が振ってきた。

となりに居るロンがあんぐりと口をあけて私をみているのがわかった。

生卵は私の黒髪をどろどろにしてしまっていた。

ただ、階段にいただけなのに・・・ なんで?




「ごめん!!」




泣きそうになっている私の頭上から声が聞こえた。

階段の手すりから落ちそうなほど身をのり出している赤毛のひと。

たしかロンのお兄さんの・・・




「ジョージさん・・・?」




彼はまるで信号のように青くなったり紅くなったりしながら、矢のように私の傍に来ていた。




「なにしてんだよ!!馬鹿ジョージ!!」

「っ・・・ロニー坊やは黙ってろ!あ・あのごめん!まさか君に当たるなんて・・・」




すまなそうに謝る彼は今まで見たことがなくて、なんだかこそばゆい様な変な感じがした。




「う・・あ・・・へ・へーキですっ・・・」




さっき流そうとした涙はどこかにいってしまい、変わりに顔は朱に染まっていった。




「ほんっとーにごめん!・・・大丈夫?」




彼は顔を真っ赤にした私を心配したらしく、顔がくっついてしまうくらい私に顔を近づけた。




「だっ大丈夫です!!!」




私はさらに顔を紅くしてとっさに身を引いた。




「ロ・ロン!私さきに戻ってる!!」




そういうとロンの返事を聞かずにグリフィンドール寮へと走り出していた。








「・・・どうすんだよ。嫌われたんじゃないのか?」




の姿が見えなくなると、

ひょいと柱の影から俺の片割れが姿を現した。




「ああ・・・どうしよう!」

「ばかだよなぁ・・・せっかく僕が犠牲になってやろうとまでしたのに。
肝心なとこで失敗するなんて・・・」




ロンがため息混じりに呟いた。

そうなのだ。これは実はこの三人で考えた作戦だったのだ。

本当は卵はロンにぶつかるはずで、

に話しかけるきっかけをつくるために仕組んだことだった。




「もう俺たちに出来ることはないぞ。後は自分でやれよ?」




しゃがみ込んだ俺の頭上からフレッドの声が降り注いだ。




「んな薄情な!!」

「ジョージが失敗するからだろ?普通の悪戯は失敗しないのに、緊張してたんだろ」




次はロンが最終宣告のように告げた。



誰も居なくなった階段で一人考え込んでいた。

こんのは俺らしくない。

今まで好きになった子も、付き合った子も居た。

だけど話しかけようとするだけで、なにもできなくなってしまう。

こんなのは初めてだった。

そんなとき頭上から思いがけない声が振ってきた。




「あ・あの・・・ジョージさん?」




びっくりして振り返るとそこには が立っていた。




「あ・・・なんで此処に?」




急いで立ち上がり より少し(いやだいぶ)高い目線で見下ろす形になりながらいった。




「ロンから聞いたんです。まださっきのこと気にしてるって。
あの・・・もう気にしないでくださいね?大丈夫ですからvv」




にっこり笑って俺を見上げている が可愛くて

気がつくと言葉が勝手に出てきていた。




「好きだ」

「え・・・えぇ?!」




はあっというまに、顔を真っ赤にして下を向いてしまった。




「えと・・・あの・・・・」




あぁ、なんてことを言ってしまったんだ俺は。

これじゃもう普通に話しかけることすら出来なくなってしまった。

の反応を見て瞬く間に、後悔の波が襲ってきた。




「っあ・・・なんでもない」




居た堪れなくなりそこをすぐにでも離れようとした。

しかし、俺の手を小さな手がつかんでいてそれを許さなかった。




「っあ・・・私も好きです!」




蚊の鳴くような声で告げられたそれは、

俺の心を溶かすのには十分すぎる意味を持っていた。




「・・・マジで?」

「・・・マ・マジです///」

「やったー!!」

「きゃぁ!!」




嬉しすぎて思わず を抱きしめていた。




「後でやっぱやめとかなしだかんな?」

「そんなこといいません!!ジョージさんこそ私に飽きないでくださいね?」




は不安そうに俺を見つめながら言った。




「まさか♪」

「!」




その があまりに可愛くて

ホンの掠るくらいだがキスをひとつ落とし、ぎゅっとさらにつよく抱きしめた。




「一生離さないからな。覚悟しろよ?」