「なんだか向かいが騒がしいわ」
「魔力も感じるね」
「おい」
「そういえば汽車の中で、ワールドカップがどうのこうの・・・・」
「クィディッチのかい?」
「ええ。双子とロナルド・ウィーズリーが嬉々として」
「じゃあ、ストーブでフルパウダーを使ったかな?」
「おい!」
「なら心配ないわ。死にはしてないから。紅茶のお変わりどう?」
「もらうよ」
「聞け!!!」
プリベット通り、ダーズリー家の向かい側。
可愛らしい庭の付いた一軒家の中で、
なんとも不思議な3人組がお茶をしていた。
勿論1人は強制的に連行させられただけだが・・・・・。
「どうしたのセブルス。嗚呼。貴方も紅茶のお変わり?」
「いらん!!何故、我輩がココにいなければならないのだ!!」
「そんなの面白いからに決まってるじゃないか」
「黙れルーピン」
「うっかり写真をホグワーツに送りつけちゃってもいいのね?」
それじゃあ支度をと言ったの腕を、むんずと掴む。
前学期から続けられているこのいじめ。
どうやら休暇中も続行中。
頼むから止めてくれと、切に願っているスネイプに、
にいっこりと、交換条件よと言うに溜息をついた。
「しかもポッターの家の近くとは、虫唾が走る」
どうやら帰ることは諦めたらしい。
席について、焼きたてのパウンドケーキに手を伸ばしながら、
窓から見える向かいの家に視線を投げる。
飛び込んできた大量の赤毛に咽てしまったのだが。
「リーマス。素晴らしい洞察力だわ」
「お褒めの言葉感謝するよ」
「違法だろう。あれは」
「アーサー・ウィーズリーは魔法省勤務でしょう?
何かコネがあるんじゃないかしら?じゃないと繋ぐ事すら出来ないもの」
「違法という事に対する答えになっとらん」
「ばれなきゃいいのよ」
「良い筈がない」
はあっと溜息をついてもう一度深くかけ直す。
向かいの家から見え隠れする、
変に舌の越えた豚を見てみぬ振りして、
今度は、スノークッキーの手を伸ばした。
「そういえば、今年は三大魔法学校対抗試合が行われるって聞いたけれど?」
「誰から聞いた。教員の中にも知らないものがいるんだぞ」
「盗聴器よ」
「おい」
「心配ないわ。つい先日に回収してもらったから」
「大いに問題ありだ」
「いやあ、めんどくさい時期に教師でいなくて良かったよ」
ありがとうと黒く笑うリーマスに、
ぽたりと冷や汗を落としたスネイプを、
我関せずと無視を決め込む。
まるで、いじられている末っ子のようだ。
「持ち物の中にドレス用ローブっていうのもあったわね」
「ダンスパーティーでもするつもりかい?」
「知らん」
「まだ買ってなかったわ」
「私が選んであげようか」
「・・・・・・・・・・セブルス?」
「なんだ」
「これからデートしましょう」
げっほげっほと、気管に入った液体を吐き出しそうになるのを必死で堪え、
私を差し置いて良い度胸だよと笑っているリーマスをスルーした。
的には、なんだか度派手で奇抜なローブを選ぶリーマスより、
シックで落ち着いた感じのローブを選びそうなスネイプと。
と思ってのことだったのだが。
どうやら真意は伝わらなかったらしい。
「私、ピンクや黄色なんてイヤなの」
「似合うと思うよ?」
「レースもフリルもいらないわ」
「女の子だろう?」
「関係ないでしょう。というわけで、行くわよ」
「どういうわけだ」
頭を抱えながら引きずられていくスネイプ。
どうやら殺気を飛ばすのを止めてくれたらしいリーマスに、少しだけ感謝した。
だが、長い年月付き合ってきて、
言い出したら聞かない事を知っている。
ホグワーツにいる、あの、髭長お茶目爺と同じくして。
去年だけではない。
ハロウィンの奇抜な衣装は、
全てあの校長が、毎年毎年ハロウィンの朝に着せ替えているもの。
いつ?どうやって?
いつ頃からか、恐ろしくなって考えなくなったのは。
まあ、そんな事いまはどうでもいいのだが。
「だが、今行くと混んでいるだろう」
ワールドカップ前に新学期の買い物を済ませておこうとする人は多いだろう。
観戦に行くのならなおさらだ。
「それもそうね。それじゃあ、その日にしましょう」
「その日?」
「ワールドカップ当日よ」
「既に学校へ行っている」
「まだ新学期じゃないだろう?」
「試合の準備だ。色々とな」
「セブルスの代わりにが行ってくれるわ」
それならいいでしょう?と嬉々としていう。
いない間に労働日を決められた梟に、合掌した。
そろそろ帰ると言うスネイプを、
が玄関まで見送りにリビングを出てから、
リーマスがいそいそと残ったホールケーキを全て平らげていたのは、
見なかったことにしようと思う。