それはもう、抗えないと言う警告。
「「ごめんなさい」」
「別に責めてなんかないわよ?ただ、私は仲間はずれだったのねと思って」
「(そんなん気にした事ねぇくせに)」
グリフィンドールの談話室で、
とてもとても小さくなっている2人と、
それをにこやかに見下ろしているを遠巻きに眺める光景。
ぐるぐると黒く渦巻く何かが見えるような気がする。
「で、どうだって?」
「今日の1時に談話室に1人で来いって。だけど、なら、いいんじゃないかな」
「でも、夜中の12時にハグリッドに呼び出されてるんでしょう?」
「帰ってこられるなら問題ないわ」
「も来る?」
「そうね。気が向いたら」
「へ?」
絶対に来ると思っていたハリーは、
間抜けな声を上げてしまった。
「彼が貴方に1人で来いと言ったなら、私は必要ないということ。
あなた自身が聞かなければならない話題なのよ。多分ね」
「そ・・・っか」
夕食も終え、する事のない3人は、そのまま談笑を続ける。
気付けば11時を回っていて、おやすみと笑いながら声をかけると、
そのままは寮の外へ、2人は自室へと、
いったん戻っていった。
そして、真夜中、息を切らして翔けて来たハリー。
どうやらの気は向かなかったらしい。
実際は物陰で見ているのだが・・・・。
に持たせた、あの、盗聴器一式は、
そろそろ向こうに届いている頃だろう。
暖炉から現れたシリウスに、安堵の溜息を漏らす。
最初、禁じられた森で会った時より、
大分と顔色のいい、その姿を見れたから。
どうやら会話を中断せざるを得なくなったようだ。
会談から降りてくる人の気配。
音がしてシリウスは消えていた。
しばし、どうでもいい言い争いを聞いていたは、
誰の気配もなくなったことを確認し、
談話室を後にした。
「お帰り。ご苦労様。はい、ディナー」
「さんきゅ。の予想通りだったな」
「無茶で無謀なやり方でコンタクトを取ったところが?」
「ああ」
「いいわ。これからたっぷり聞いてやるから」
そっと魔力を流して、場所を探る。
きっと青い顔をして、声が溢れ出てくるのを、今か今かと待っているのだろう。
尻尾が立って、耳がたれたその姿を、
容易に想像できたは、ふっと、笑ってしまった。
「シリウス?」
『・・・・・・・・・』
「無視を決め込むとはいい度胸だわ」
『スイマセン。ゴメンナサイ』
「今日ね、たまたま獅子寮の暖炉から貴方の顔が見えたのよ」
『・・・・・嗚呼』
「何処の家の暖炉を使ったのかしらね?新しい屋敷でも立てたの?」
『見ず知らずの魔法使いの・・・・』
「大莫迦。折角自由を手に入れたのに、棒に振る気?」
『ハリーは無事なんだな?』
「そんなに信用できない?」
『いや・・・・』
口篭る向こう側に苦笑する。
信用しているかなんて、そんな質問・・・・。
「心配なのはわかるけれど、貴方がアズカバンに逆戻りでもして見なさい?
それこそあいつ等に付け入る隙を与えるようなものだわ」
『そう・・・か』
「どちらも親莫迦子莫迦ね」
『すまん・・・・』
「大切なものが出来るのはいいことよ。でも、無茶は止めなさい」
『判った』
「それじゃあ、私も眠るわ」
『嗚呼。いい夢を』
「シリウスも」
じじじっと、特有の機会音だけが響く部屋は、
なんだかとても淋しげだ。
信用信頼。
何の為にと思ってしまう自分がいるのを否めない。
「ダメね」
眠ると言ったものの、
眠気はいっこうに襲ってこず、
聞こえてしまう声たちに、少しばかり溜息を漏らした。
名も知らぬ土地に連れてこられた彼らが、
怖い怖いと泣き叫ぶ。
自分の子供を何処へやったのと不安の声。
「眠るんじゃなかったのかよ」
「眠たくないんだもの」
「明日も授業だろ?」
「ええ。そうね」
「明後日は第一の課題だろ?」
「ええ。そうね」
「聞いてんのか?」
「聞いてるわ」
聞いているだけだけれど。
外を見やれば、月がもう直ぐ満ち足りる。
彼は大丈夫だろうか。
部屋は綺麗なままだろうか。
帰るときっと甘い匂いがするのだろう。
の中で、一気に全ての事が億劫になる。
こうゆう事は前にもあった。
何のための過去か。
今まで見てきた全てのものを活かして、
自分は幸せを守らねばならないと言い聞かせども、
どうして。と、自問してしまう。
そうなれば終わりだ。
だって、理由なんか、本当はないのだから。
「だけど、大切なのよ。ちゃんと、大切なの」
「知ってる」
大切なのは本当。
守りたいのも本当。
何故と聞いてしまう自分が許せない。
空が少しだけ明るくなる。
は其れを、主を腕に抱いたまま、震える背中越しに見つめていた。