「「姫!!さあ吐くんだ!!」」

「早く課題を終わらせたらどう?」




こんな押し問答が、近頃毎日続いている。

ハリー達が、ダンスのパートナーを捜さねばならないと聞き及んでからだ。




「教えてくれてもいいじゃないですか!!」

「2人ともパートナーを見つけたんでしょう?だったら教える必要は皆無よ」

「嗚呼・・・・われらの姫をさらったのは何処のどいつ・・・・」




ハリーも大分と気にはなっている事で、

けれど、双子があれだけ言っても話してくれないのだから。

どれだけ自分が脅し聞いても、

答えてはくれないだろうと思うのだ。




「そうね、1つだけヒントをあげるわ」

『え!?』




声を発したのは2人だけではなかった。

自分もそうであるし、

隣にいたハーマイオニーやロンも例外なく。だ。




「このヒントだけで判ったらそうね・・・・・」

「あれなんかどうだ?」

「嗚呼。あれね」

『あれって!?』

「1つだけ、自分の欲しいものが手に入る靴下」

「そんなもの何処で手に入れたんだい!?」

「私が作ったのよ」

「ええええ!!!!!」

、貴方どれだけ魔法を使えるの?」

「大体よ」

「大体って・・・・」




この世にどれだけの種類の魔法があると思っているのだろうか。

ポカンッと口を開けた5人は、

至極間抜けな顔をしている事を判っているのかいないのか。

は、それを見て、

思いっきり笑いを堪えたいたのだけれど。




「で、ヒントって何なんだい?」

「クィディッチワールドカップの時、私、2人と話したわね?」

「うん!!」

「あれ、だったのか」

「ええ」

「それで?それが?」

「その時デートしていた相手が、私のダンスパーティーの相手よ」

「そんなの、私たちが知らない人じゃないの?」

「いいえ?良く知ってるわ」




そう。

このホグワーツの誰もが知ってる。

頑張って推理してねと笑って、読んでいた本へと、また視線を戻す。

5人が悶々と考え出した事で、

は静かに読書に集中する事が出来た。

まあ、それが狙いだったかは定かではない。









まあ、あんな台詞だけで、の相手がわかる筈もなく、

ダンスパーティーの日は終に、来てしまった。




「良く似合ってるわ」

「変じゃないかしら?」

「いいえ?とても綺麗よ」

「ありがとう!!」

「どういたしまして」




ハーマイオニーのドレスアップを手伝って、

共に大広間へと降りてゆく。

誰もがそう、気付かずに通り過ぎてしまうくらい。

ハリーとロンの2人は、どうやら気付いたらしいが。




、1人なの?」

「遅れてくるなんていい度胸だと思わない?」

「えっうん」

「それより、2人ともパートナーは?」

「置いて来た」

「最低よ。ウィーズリー。いくらハーマイオニーに見惚れていたからって」

「見惚れてなんかない!!」




腕組みして椅子に座る2人。

その狭間で苦笑するハリー。

今まで流れていた軽快な曲が、そろそろ終わろうとしていた。

そんな時響いてきた、荒い息で走ってくる足音。

なんだか、息を呑む声が聞こえる。

そう。それは、天変地異の前触れが、起こる予感。




「・す・・・・・っすまん」

「意を決してお誘いした女の子を待たせるなんて、先生、まだまだですよ?」

「(脅したの間違いだろう)」

「何か?」

「いや」

・・・・・?まさか君・・・・」

「私の相手はスネイプ先生よ」

「やっぱり君たち付き合ってたの!?」

「断じて違う」

「良く似合ってるわ?セブルス?」




ふうらあと失神した生徒が何人いただろうか。

セットされたさらりと流れる髪の毛は、いったい誰のものだろう。

いつもと違う雰囲気のと並べば、

カップルと言われても頷いてしまうかもしれない。

くすくす笑いながら、頭を抱えて項垂れているスネイプを引っ張って、

ワルツの流れ出したフロアへと入っていく。

さあっと道が出来たのは、まあ、予想の範疇だ。




「ねえ、覚えてる?」




誰にも聞かれぬくらい小さな声で、そっと呟いたのは




「あの糞共がはじめて、やられたという顔をしたときのか?」

「そうそう。まさに闇のプリンスね?」

「そう・・・か?」

「明日の号外で写真をばら撒きましょうか」

「今すぐ、その写真を燃やしてくれ」

「折角の記念なのよ?」




嫌々ながらも、その時、一緒にいたいと思った面々が、

そろって映ったたった1枚の写真。

たった1つだけ残る、微笑む事の出来る想い出。




「ローブは変わってないのね」

「これが一番気に入りだといっていただろう」

「覚えていてくれたの?嬉しいわ」




つい先程、今まで爆発したように踊っていた双子が、卒倒したところだ。




「セブルス」

「・・・・・・なんだ」




君が名前で呼ぶのは、至極真剣な時か、

頭を抱えたくなるくらいからかわれている時か。

今は十中八九、前者。




「ムーディには気をつけて」

「どうゆう意味だ」

「そのまんまの意味よ」

「元々近づいてもない」

「ならいいわ。そのままの状態を保持すれば」




曲が終わり、互いに一礼。

仲睦まじく、小丸テーブルを1つ占領する。

珍しくも甘いオレンジジュースを手にとって、椅子に、もたれた。




「みんな、見つめてますね?」

「だから我が輩は一度断った」

「パートナーが注目されるのは鼻が高いんですよ?」

「あんな妙ちきりん共に注目されても、鬱陶しいだけだ」




睨むように辺りを見渡せば、

さっと視線を外す音が聞こえてきそうなほど。

ダンブルドアは、マダム・マクシームの影で微笑んでいるに違いない。

しゃらんっと揺れたピアスが、光る。




「似合っている」

「・・・・・ありがとう」




やっぱり、彼らはつきあっていたのだと、

また、禁断の恋の噂が流れ始めるのは、

次の日の、朝のこと。