「いつも感じてんじゃねぇか」

「なんだかエロ臭いわよ。その台詞」

「冗談言ってる場合かよ。の場合は当たるんだからな?」

「嫌な予感?」

「もう、予言とかの域だろ」

「そうかしら」




夜の校舎はうすら淋しい。

冬だからかとても寒々しい上に、天井がやたらと高いからか、

とてもとても足音が響く。

かつん。かつん。




「で?俺等は今何処に向かってんだ?」

「なんとなく匂いのする方向よ」

「嗚呼。なるほど?」




微かに香るのは、石鹸の匂い。

大反響した卵の声はどうやら、の耳にはっきりと聞こえていたようだ。

少しづつ少しづつ、言い争いの声が大きくなってゆく。

は、足を速めた。











「ダンブルドアはやり直しのチャンスを与える人だ」




うずく傷を抑えたい衝動を必死に押さえ込み、

目の前に佇む元闇払いを見つめる。

彼女が警戒しろと言ったのに、

夜の、しかも誰も来ないような場所で。

そんな時4人の耳に聞こえてきたのは、足音。




「洗っても落ちないシミが・・」

「スネイプ先生!!」

?」

「今はもう消灯時間は過ぎている」

「眼が醒めたら知らない場所にいて・・・・・・」

「夢遊病者を囲むほど我輩は暇ではない」

「私も驚いたものですから」




階段の狭間では、懸命にが、

ハリーの脚を押し出そうと奮闘している。

魔法の眼さえこちらに向けたムーディもどきを騙す事など簡単だ。




「ここはハップルパフ寮の近くだ。真っ直ぐ行けば・・」

「送ってやれスネイプ」

「・・・・・・・・・・・」




の無言の訴えが通じたようで、来いと一言零すと、

スネイプはを連れて、ムーディの傍を通り過ぎる。

どうやらハリーの脚は綺麗に外れたらしい。

階段下から、が黒い羽をばたつかせて飛び出してきた。




?どうしてこんな所に」

「ホー」

の梟か?」

「ええ。ですが、先生には関係のないお話です」




含み笑い。

にぶくても通じるのだろう。

ほぼ全てを想像して、ここに来たこと。

君を見張っているのだよと。

ハリーに目配せもしておいて、少し先まで行ってしまった彼の背中を追った。




「どうしてあのような所にいた」

「あら。救ってあげたのに?」

「何もされてなどいない」

「研究室を荒らされる事は、何の中に入らないの?」

「何故知っている」

「聞こえたのよ」




頭を抱え込んだ。

の肩に大人しく止まっている梟を一瞥する。

俺には止められないと、首を振ったように見えたのは、

気のせいではない筈。

梟は二言三言、に囁くと、そのまま外へと飛んで行った。




「何処へやったのだ」

「部屋に戻るんでしょう。調べたい事が出来たから」

「調べたい事?」

「貴方の研究室を荒らした犯人」

「誰だ!」

「確信を持てたら話してあげるわ」



「ダメ。私は曖昧な言葉で印象付けるの嫌いなの」

「知っているが・・・・」

「悔しいなら自分で調べなさい?」




こういう女だと、もう何年も前に気付いていたはず。




「ありがとう」

「なにがだ」

「欲しかった答えを見つけさせてくれて」

「意味が判らん」

「だって、貴方は知らないもの」

「また我輩だけ除け者か」

「淋しい?」




何を口走っていたのだろう。

決めた筈だ。

かの者に命を捧げると。

だからこそ自分はココにいるのに。

どうしてどうして。

彼女と共にいると忘れてしまいそうになる。




「淋しい?」

「勝手にしていろ」

「ええ」




くすくすと笑っているのは、

ホントに楽しんでいる証拠。




「それより、気をつけなさいって言ったわよね?」

「?」

「ムーディの事よ。莫迦」

「何故あのような奴に注意を払わねばならん」

「古傷から血が触れだすわよ?」




飛び上がった心臓。

戦いか。

救いか。




「あいつは・・・・ただ疑うのが好きなだけだ」

「そうかしら?」

、答えを教えてくれ」

「ダメよ。確信がないもの」

「お前が確信を得るのは、答えが目の前で起こったときだけだろう」

「良くお分かりで」




腕が痛む。

鮮やかに蘇るのは、過去の記憶。

気付けば太ったレディの前にいて、

は前を、スネイプはを見つめていた。




「あの・・・方は・・・・・」

「ヴォルデモートは?」

「・・・・・・・何を必要とし・・・なさって・・いるのだ」

「十中八九、ハリーの血液、若しくはそれに値するもの」

「ポッターの血?」

「頭の良い貴方なら、直ぐに答えを導き出せるでしょうね」




それが、最後の答えかは判らないけれど。

合言葉を呟いて、門をくぐる。

その扉が閉まる頃になっても、

スネイプはまだ、向こう側に佇んでいた。

彼は問題の最初を、解き始めただけに過ぎない・・・・。