向こうも警戒しているだろうから、
無闇に動けなかった。
ハーマイオニーに本を薦めることや、
上達の方法を促したりなんか、
何をやっているんだろうと思ったときには、もう、
遅かったのかもしれない。
「!ハリーが!!!」
談話室で、窓の外を見やりながら、
そんな風に自問自答していたは、
いきなり開いた扉と、
叫ばれた自分の名前に、びくりと肩を震わせた。
「ハリーが何?」
「さっきの占い学で!傷が痛んだって!!のた打ち回ってたんだ!!」
「そう。それで、何処へ行ったの?」
「保健室のはず・・・」
「判ったわ。貴方は授業に戻りなさい」
荒い息をしているロンの隣でローブを翻す。
ヴォルデモート発見器とでも言おうその傷は、
どうして付いたものだっただろうか。
そこに何かが隠されている筈なのに。
いらいらしていた。
もったいぶった手回しにも、
自分の正体を明かすような馬鹿げた行動にも、
色んな事に。
「ダンブルドアのところへ行きたいの」
「先客がおりますぞ」
「誰?」
「現の魔法省大臣が」
「どうでもいいわ。開けて頂戴」
「あの義眼の教授も来ておられる」
「・・・・・・・・・・いいわ」
ガーゴイルはそっと両脇へと飛びのいた。
言葉も言わぬうちから開いた扉に、
中の3人はポカンとしている。
思い通りに行かない・・・・。
「どうしたかね?」
「ハリーが来ていませんか?」
「おう、来とるぞ」
「失礼します」
「おい!今、生徒は授業中ではないのか?」
「空き時間を大臣に拘束される覚えはありませんわ?」
脅えたような瞳。
自分の作り出してしまった最悪の現状に頭を抱える。
自分の頭で展開される向こう側の行動は、
十中八九正解だろうが・・・・。
階段を昇る足を速めながら、
第3の課題中、大多数の生徒の目に触れずに、
どう、ゴールに先回りするか。
偽ムーディに勘ぐられていなければ、
まだ望みはあったかもしれないものを。
「ハリー?」
フォークスが肩にとまる。
嬉しそうに頬ずりする美しい不死鳥の頭を撫でつつ、
もぬけの殻になっている校長室を見渡した。
怪訝に思っている心内を感じ取ったのだろう。
フォークスの指し示す戸棚を見やった。
「また、見てくださいと言わんばかりのところに置いてるわね」
彼は立ち回りが上手い。
だからこそ、導き手となり得るのだろうが。
「守る・・・・か」
約束したけれど、自分はただ、
敵を煽り、脅かして、
自分の今の地位や、昔の地位で恐怖を植え付けているだけ。
彼のように導く事など何一つ・・・。
「え??」
「お帰り」
「あ・・・・・うん。えっと・・・その・・・・」
「ヴォルデモートは何をしていたの?」
「なんで・・・・」
「ウィーズリーが駆け込んできたからね」
「そう・・・なんだ・・・・」
今しがた見た光景に頭が付いていかないハリーは、
曖昧な受け答えをする事しか出来なかった。
一度、この痛む傷について話した時の記憶が、
影響していなかったとは言い難いが。
「で?」
「クルーシオって。言ってた」
「誰に?」
「判らない・・・・でも多分、ペディグリューだ」
「嗚呼・・・・・」
忘れていた昔の友の存在。
手足となって動くには不十分かもしれないが、
ヴォルデモートが既に魔法を使えるまでに回復していたなら話は別だ。
だが、魔法が使えるのと、魔力が戻るのは話が別。
だからか。
このようなまどろっこしい方法でなければ、
ハリーを手に入れられないのは。
「待たせたのう」
「それじゃあ私はこれで」
「え?」
「ハリーの無事を確認できたからね。それで十分よ」
そして、大方当たってるだろう正解に近づいたから、
後は、どうするか・・・・・。
2人に背を向けて、階段を下りてゆく。
自分の部屋に戻るには、一度ガーゴイル達の元まで戻らねばならない。
「面倒くさいわね」
「この構造を造った老いぼれを憎みなされ」
「我らの所為では御座いませぬ故」
「判ってるわよ。シアワセ」
新たな階段を上りながら、窓から外を見やる。
育ちすぎた生け垣が、鬱蒼と茂っているのが見えた。
あの中に、彼と繋がる物が置かれるのだ。
その前に阻止をした方が良いのだろうか。
「何を迷ってるの?」
「愛した男の行く末だろ」
「・・・・そうなのかしら」
「お前はどうしたいんだよ。」
「守りたいのよ」
「何を」
ハリーを?ヴォルデモートを?
・・・・・・・誰を。
「とにかく、もう、優勝杯は置かれてるぜ?」
「どうしてそれを早く言わないの?」
「さあ、どうしてだろうな」
君に悩んで欲しかったんだ。
「どうしましょうか」
「あいつが復活した場所へ行けばいいだろ?」
「わざわざ自分から赴くわけね」
「あいつが知ってるお前は、裏切った直属配下の子供。それだけだ」
「本当にそうかしら」
「過去に捕らわれてるのはお前だよ。」
そうだ。
何を恐れる。
魂で見分けてくれたリドルの面影?
彼はもう、リドルではない。
一度、契りを交わしただけの、男。
「真っ向勝負も悪くないかしら?」
「ただ、ポッターを庇って何処まで出来るかだけどな」
「そうね」
いつゴールに着いたか判らない。
彼の使える魔法と、置かれている障害物、
それから偽教師の動向を考え、
計算して出さなければならない時間。
予想は、お手の物だ。
「そうと判れば、調べなくちゃね?」
「御意」
必要な情報は決まった。