至極不機嫌そうな真っ黒黒助と、
至極楽しそうな真っ白白助が、
腕を組み、ダイアゴン横丁を闊歩している。
は別に白いローブを、何処かの校長宜しく来ている訳ではなくて、
白いワンピースに紺のボレロを着ているだけなのだが・・・。
ぱっと見、大分年の離れたちょっと風変わりなカップルのデートだが、
は先程から1人で受け答えして話している(様に見える)。
「そう。楽しんでるの。良かったわね」
『姫も来られればよかったのに!』
「私、人の群がるところ嫌いなのよ。ホグワーツの試合ですら見たことないでしょう?」
『そりゃないよ!!僕らの勇姿くらい見てくれても・・・・』
「それじゃあ、休み時間にでも見せて頂戴」
『姫だけのために?』
「煩わしいなら構わないけれど」
『いえいえ!!』
『喜んでお見せします!!!』
「そう。じゃ、楽しみにしてるわ。デート中なの。切るわね?」
『『えっ!!!!』』
ぶちっと電源をオフにして、
お目当ての店を捜す事に集中する。
「ウィーズリーの双子か」
「ええそうよ」
「それより、それはなんなんだ」
「盗聴器。この間プレゼントしたの」
「そんなもの贈るな!!」
「いいじゃない。貴方に危害は加えてないわ?昔と違って」
思い出させるなと溜息をつく。
お店に着いたために、会話はいったん打ち切りとなった。
入った2人の目の前には、ひらひらびらびらきらきら。
「「・・・・・・・・・・・」」
「なんだか凄く・・・・鬱陶しいお店ね」
「同感だ」
たっぷり1分沈黙の後、1人1台詞はいて、
すぐにその煌びやか過ぎるお店を後にした。
何故だか気に入るお店がなくて、
なかなか雰囲気の良いお店だったとしても、気に入るものがない。
午後一で来ていた筈なのに、
もう日は傾いていて、流石の2人も疲れを隠しきれない様子。
「次のお店で最後にするわ」
「妥当な判断だな」
「ごめんなさい?沢山つき合わせて。すぐに決めるつもりだったんだけれど・・・」
「だと思うならルーピンに頼めばよかっただろう」
「リーマスに頼んだら、最初のお店で決められてるわ」
「・・・・・・・・・・・・・やはり止めておけ」
「ありがとう」
ねえ、そんな優しさが大好きよ?
最後に見つけたお店も、なかなか雰囲気はいい感じだ。
あきらめ半分で足を踏み入れた2人。
「「あれなんか・・・」」
同時に発せられた言葉。
黒のベロア生地に、紺のスパンが散りばめられた、
胸元切り替え型のドレスローブ。
紅い糸で裾に施された刺繍が可愛らしい。
顔を見合わせた2人は、くすりと笑った。
「これ、下さい」
そのまま漏れ鍋に宿をとった2人。
スネイプは明日ホグワーツへ赴かなければならないというのもあったし、
わざわざプリベット通りまで戻るには時間が遅すぎた。
そして、またもや突っ込むべきところが1つ。
「お風呂お先ね」
「・・・・・・・・・・・・・何故1部屋しかとらなかった」
「そのほうが安上がりでしょう?」
「金はあまるほど持っているだろう」
「沢山あって困るものじゃないわ?」
自分を男としてみていないのか。
それとも、信頼しきっているだけなのか。
冷水をコップに出して、が口をつけようとしたその時だった。
ずきりと走った痛み。
同時に押さえ込んだ腕。
焼けるような痛みが襲っているのがわかる。
お互い同じ文様を埋め込まれているのだから。
しばらくして、話せるくらいに回復した2人は、
ゆっくりと顔を上げ、お互いの視線を交わらせた。
「・・・・・・・・・・闇の印」
「なんの話だ」
「この盗聴器、遠視出来るようにしたのよ」
「それがどうした」
「クィディッチワールドカップの開催地で、闇の印が打ち上げられてる」
「なんだ・・・と?」
「さっきの痛みは尋常じゃないわ」
痛みを抑えるように、2人ともが腕を掴んでいる。
はっと気付いた様に盗聴器を取りに走り、電源を入れたは、
必死に呼びかけた。
その地にいる筈の、シアワセに。
「ハリー!ハリー!!聞こえてる?」
『?聞いてよ!!死喰い人が!!』
「知ってるわ。それより、大丈夫なの?」
『平気・・・・さっき、僕らが疑われたんだ。その、闇の印?を打ち上げたって』
「誰に?」
『ハリー?君、誰と話してるの?』
『ちょっと黙って?』
『スイマセン』
「ハリー?誰が貴方を疑ったの?」
『ディゴリーって呼ばれてたと思うよ』
「よくわかったわ。無事ならいいの。それじゃあ・・」
『待って!!』
「どうしたの?」
『・・・・・・・いや、また汽車で話すよ』
「それじゃあ、ホグワーツ特急でね」
『うん。それじゃあ』
一瞬黒い空気が流れた事を、
スネイプも、向こうにいた幾人かも感じ取っていたようだ。
まだずきずきと痛んでいる腕。
なんの前兆か。
「なんにしても、少し、警戒しないといけなくなったわね」
「・・・・・・・復活、されるのか」
「そんな事判らないわ。ただ、1年前よりも力をつけていることは確かだという事」
「そう、だろうな」
「震えているわよ?」
「気にするほどの事でもない」
「少し甘めの紅茶でも入れるわね」
「頼む」
それは喜びの戦慄か。
それとも恐怖の怯えか。
雲ひとつない夜空に浮かぶ骸骨が、
すこしだけ笑ったような気がした。