「!!!」
予想通り、門前に姿現しした主人に駆け寄る。
ふっと笑ったは、そのまま前に倒れこんだ。
「おい!!」
「嗚呼。もう、脚が言う事聞かないわ」
「何処へ行きたいんだよ」
「ハリーのところ」
「判った」
倒れる寸前にその華奢な身体を支えて、
はを横抱きにすると、
そのまま、あいつの部屋へと向かった。
自分が走ってくる前に、
あいつがハリー・ポッターを連れ出していたのを知っていたから。
きっと、ダンブルドアなら気付いている筈だと。
「もう、終わったようね」
「!!」
後ろから聞こえてきた愛しい声に、
スネイプはハリーがいるのにも関わらず、その名前を呼んでいた。
「無事だったのか!!」
「ええ。少し、脚に力が入らないくらいよ」
「傷は・・・」
「何もないわ。腕の刻印以外は」
「そうか・・・良かった」
「それより、後ろでハリーがとても驚いているわ」
今しがたこいつがいるのに気付きましたというように、
眉間の皺を何倍にも増やしてみせる。
「私が貴方の両親を知っている事を話したでしょう?」
「同級生、だったって」
「セブルスもそうなのよ」
「嘘」
「こんなところで嘘ついても、なんの特にもならないわ」
疲れている筈なのに、なんだか笑えた。
見るも無残な姿で出てきた本物のムーディを見送って、
だらんと垂れ下がったクラウチを見る。
終わったのだろうか。
いや、始まったばかりだ。
「や、先に保健室に向かっていてくれるかの?わしはハリーと話がある」
「判りました。それじゃあハリー、また後でね」
「うん」
「ダンブルドア?あまりハリーを疲れさせないように」
「うむ。善処してみよう」
くすりと笑って、無理しないでと声をかける。
お前の方だろうと、額をどつかれたところで、
の意識は、深い眠りの淵へと沈んで行った。
静かな静かな眠りの世界。
ひんやりと感じたのは、死を連れてくる鬼の声。
「っ!!!!」
がばりと起き上がったは、
隣に寝ているハリーを見て、その傍で佇んでいたダンブルドアを見て、
ずっと看ていてくれたのだろう守護神に微笑んだ。
「どうしたのじゃ?もう少し休んでいても・・」
「吸魂鬼がホグワーツ内にいるわ・・・・」
「なんじゃと?」
「誰がつれてきたのかは知らないけれど、嗚呼。ダメ。もう、手遅れよ」
魂が消えていく声。
聞こえてしまう。
叫びだ。
復活してしまった彼を崇める叫び。
がそう言って間もなくだった。
魔法省大臣とマクゴナガルが医務室に入ってきたのは。
軽く、そう、軽く聞き流すつもりでいた。
神経も大分まいっている事は気づいていたし。
けれどまあ、そんな事出来る筈もなかったのだけれど。
「信じられないのではなく、信じたくないの間違いでしょう?」
「なんだと?」
「結局は自分の地位に固執するが故に、
安穏と夢を見て、闇に染まってゆく世界を見て見ぬ振り」
「口が過ぎるぞミス・」
「予言してさしあげるわ。貴方は気付かないうちに殺される未来をお持ちよ?」
「なにをっ!!!」
「ダンブルドア、吸魂鬼は私が何とかします。
巨人は約束しかねますが、ハグリットを頼るのが得策かと。私も手を施してみましょう」
「無理をするでないぞ」
「ええ。あら、まだいらっしゃったの?さっさと居心地の良い椅子に戻ったらどう?」
顔を真っ赤にした大臣は、
どしんどしんと足を踏みならして、ホグワーツから出て行った。
「スネイプ先生、もう、腕を仕舞って頂いて大丈夫ですよ」
「嗚呼」
黒犬から元に戻ったシリウスと、
明らかに握りつぶしてやろうという握手を交わす。
ぺらぺらとダンブルドアが話している中、
小さな呼び声が、スネイプの耳にもしっかり届いた。
勿論、シリウスの耳にも。
「シリウス」
「どうした?」
伸ばされた腕。
答えない筈はない。
後ろで苦虫を噛み潰しているだろうそいつに、
ざまあ見ろと心内で罵ってやった。
「リリーも、ジェームズも、ありがとうって、それしか・・・」
「当たり前だろ」
「憎んでくれてよかったのに」
「嘘付け」
「ホントよ」
「そんなことしたら、俺が今度はあいつ等を殺す」
それから暫く抱き合っていた。
気付けば医務室にいるのは3人だけ。
旅立たねばならないのは判っている。
ただ、腕の中にいる少女を、放っていくのが忍びない。
「騎士団がまた発足するだろう。また会える」
「そうね。ごめんなさい。引き止めて」
「もう少し休め」
「判ったわ。」
「一緒に行きゃいいんだろ?」
「其の莫迦が少しでも変な行動を取ったら・・・・」
「取ったら?」
「任せるわ」
幾分青い顔になったシリウスだが、
さっと黒犬になると、医務室から姿を消した。
少しの沈黙。
スネイプは何も言わずに後を追う。
の声に、留まらざるを得なくなったのだけれど。
「セブルス」
「なんだ」
「気付かれたと思うの」
「何・・・まさか」
「私があの"・"だって」
「莫迦者」
「それだけ。他の人には話さないで」
「判った」
「お休みなさい」
「嗚呼」
ぱたんと扉を閉めた後、
これから来るであろう裏切りの時を、
少しだけ、恨んだ。
2人だけの秘密が出来た夜。