喪に服した校舎は、寒くもなく、暑くもなく。
未だ痺れたままの腕と、耳を庇いながら、
はグリフィンドールの席に座っていた。
勿論、隣には。
しんっとなった大広間に流れる死の空気が、
これから蔓延しないようにしなければ。
思いを馳せるこれからの事。
は皆の流れに乗って汽車へと乗り込んだ。
「大丈夫?」
「ハリー、どうしかしたの?」
1人でコンパートメントを占領していたは、
目の前に座っているハリーが声をかけるまで、
扉が開いた事も、人の気配が入ってきたことも気付けないくらい。
ココロが何処かへ飛んでいた。
「ありがとう。守って・・・くれて」
「私は何もしてないわ」
「でも、ボクは非力で、ヴォルデモートの杖とボクの杖が全く別物だったら、
あそこで死んでいたと思うし」
「そうね」
「は、どうしてそこまでしてボクを守ってくれるの?」
「それは・・・・・」
ジェームズとリリーのシアワセだから。
今まではそうやって言えた事なのに。
どうしてか口から言葉が出てこない。
「決めた」
「え?」
「を守る」
「何から」
「から」
「どうゆう事?」
活動を停止している今の脳では、
ハリーの言葉を理解できない。
「だって、そうしなきゃ、誰かを守って死ぬでしょ?」
「っ!!」
「全然強くないし、やヴォルデモートの足元にも及ばないけどでも・・・・」
君が君を殺すこと、それだけは止められると思うから。
「自分に出来る事をしなきゃって思ったんだ」
「それは・・・・いい心がけね」
「ヴォルデモートは復活したけど、ボクを狙ってる」
「そうね」
「その答えをきっと、は知ってるんだよね?」
「そうかもしれないわ」
「だけど、どうでもいいや。命を狙われてて、僕は生きたくて、を守りたいんだ」
それが、願い。
は目を丸くしたままその場に鎮座していた。
弱い?誰が弱い?
ハリーは強い。
彼等のシアワセはとても強い。
自分の進む道を見つけて、遠回りしてでも進んでいこうとしているのに。
過去を今でも夢見る自分を嘲笑した。
ハリーは言ってから恥ずかしくなったのか、
俯いて顔を真っ赤に染めている。
「ありがとう」
「うっううん!!」
「「見つけた!!姫!!」」
すっぱあんっと子気味良く開かれた扉から飛び込んできた双子。
そのままのほうへとダイブする。
は勿論、素晴らしく優雅にハリーの隣へ座りなおし、
双子はそのまま椅子とアツイ接吻を交わすこととなったのだ。
「酷い!!」
「僕らの愛を受け止めてもらえないなんて!!」
「「シリウスとは抱き合ってたのに!!」」
「あれは一時の過ちよ」
「それ、ホント?」
「医務室でね」
このコンパートメントの気温が何処まで下がってゆくか見ものだ。
口先で好きと言ったって、きっと君は軽く受け流すんだろうから、
だから、どうせなら、
命が危険に晒されるその時に、
一番に名前を呼んでもらえるように。
「おじさんに手紙を書くよ」
「飛んで喜ぶ姿が目に浮かぶわ」
「「(違うと思う・・・・)」」
「うん。あ、そうだ」
ごそごそと荷物をまさぐりだしたハリー。
はまた窓の外に目を戻し、
双子は聞いてくれていると判っていて、
反応のない会話を続けている。
「はい。これ」
「これ・・・・」
「賞金じゃないか!!」
「そう。君たちにあげるよ」
「なんだって?!!」
「ハリー、終に気でも狂ったか?1千ガリオンだぞ!?」
「要らない。欲しくないんだ。
その代わり、これで研究続けてよ。これからきっと、笑いが必要になると思うし」
ぴくりと肩を震わせる。
自分と同じ光を求めていたシアワセ。
指し示す月。
雲を取り払う風。
それからは、颯爽と遠ざかっていく景色を眺めながら、
双子の悪戯道具開発の相談に乗りつつ、
ハリーとまた、連絡を取ると言う約束をしているうちに、
真っ赤な汽車は、停止していた。
「それじゃあね」
「同じ方向なのに?」
「貴方の叔父叔母に見つかったら、私が魔法使いだってばれるでしょう?」
「ああ・・・・そっか」
「そうよ。また連絡するから」
「判った。じゃあ、また後でね!」
手を振って遠ざかっていく君を見て、
私は、言わなければならないような気がした。
だから、気がつけば君の名前を呼んでいたのだけれど。
「ハリー!」
「え?」
「私がどうして貴方を守るのか」
「・・・?」
「大切だからよ」
満面の笑みを向けて踵を返す。
真っ赤なって立ち竦むハリーを、覚醒させたのは誰の声だったか。
私と同じようなものを求めている君が、
とても大切で、かけがえがないと、そう、思えた夏。