その日、その場に居合わせたのは、
本当にたまたまだったけれど。
其処に見え隠れした昔の面影に、
はっと気付いたときには既に、止めに入っていた。
きいきいと叫ぶ毛長イタチ。
真っ白な其れは、上へ下へと叩きつけられている。
イタイイタイと聞こえたから振り返っただけ。
ぽかんっとしている生徒達。
イタチの動きが止まったのは、本当に急だった。
「ムーディ先生?やりすぎでわ?」
言葉を発する前の瞳に映るのは、恐怖。
もちろん其れを見逃すではなくて、
すこし眉を寄せた後に、もう一度、目の前の人物を見やった。
埋め込まれた義眼が、きょろきょろと所在無く動いている。
「せなを見せた所を襲うなど下劣な行為だ」
「そうでしょうね。私もそう思いますけれど、
今のではまるで、ヴォルデモートが死喰い人に罰を与えるような方法では?」
びくりとはねた身体。
絞り込まれていく人物像。
ひやりと冷たい空気が流れたのは、
もちろん生徒達の間にも例外なく・・・・だ。
「ムーディ先生のような闇払いが、
ヴォルデモートの名前を聞いただけで震えるなんて、どうかなさいました?」
「震えてなぞおらん。生徒の中にあやつに脅えを見せぬ輩がおろうとは」
「驚いただけだと?」
「さて、そのイタチを返してもらおう?」
「この学校では居残り処罰が規則だったと記憶してますけれど?」
「そうか。ではそれを行いに、寮監の所へ行かねばなるまい」
魔法でイタチを元のブロンドへと戻したは、
それをそのままムーディの手へと渡す。
わざと触れた手。
やはり小刻みに震えているそれは、彼が異物である証拠。
「スリザリンの寮監はスネイプ教授ですわ」
「スネイプ!古い知り合いだ。話をするのを楽しみにしていた」
「そうですか。私はこれで」
すたすたと踵を返し歩きながら、
後ろで見ているはずのから聞けるだろう話に微笑む。
何の話をするのを楽しみにしていたのだろうか。
「なめて貰っちゃ困るわ」
耳に輝くピアスを弄んで、大広間へと赴いた。
1度目のDADAの授業は、
皆にとってはとても新鮮味があるのかもしれないが、
やにとっては見てきた世界だ。
死の呪文を唱えた時、幾人かがを振り返ったのも、
一昨年のことを思い出したのだろう。
それで2人の機嫌がすこぶる悪くなったのを除けば、
1度目の授業は問題なく過ぎたと言えよう。
しかし、今の状況はどうだろう。
服従の呪文をかけられていく生徒達を眺めながら、
彼の意のままに動いていくマリオネット。
目の前に輝くのはルビーの瞳か?
「次、ポッター」
「え?」
「来い」
「待って下さい。順番ならば私の筈ですが?」
「。貴様はイヤというほどこの呪文を見てきただろう?」
「だから必要ないと?」
にかけたくないのが正解ではないのか。
ヴォルデモートの直属配下の娘である彼女に。
「先生?見てきたのと受けてきたのでは違いますでしょう?」
「経験したと言う事に変わりはない」
「そんなに私に呪文をかけるのがお嫌ですか?」
シンッと静まり返った室内。
意味のわからない会話。
また・・・・だ。
渋々といった表情を向けているのが、他の生徒でもわかるほど。
自信たっぷりで歩いていく。
ムーディの幾度めかの呪文が響く。
がんがんと響いてくるのは、踊れと言う言葉などではなくて、
イ ラ ヌ モ ノ ハ コ ロ セ
けれど、彼女は殺すなら自分の意思で殺すと、
一昨年誓った事を忘れてはいないから。
ぱきんっとぼやけていた景色が輪郭を持ち始める。
「素晴らしい。。お前にもうこの練習は必要ないな」
「ありがとうございます」
おおっという歓声。
次、ポッターと二度目の台詞をはいて、
に帰る様に促すムーディーの耳元で、
囁かれたものは、彼に警戒心を強めさせるには十分すぎる言葉だった。
「私に呪いをかけたって、ヴォルデモートは怒りませんよ?」
次に挑戦したハリーも、何度目かで完全に破る事に成功し、
とてもとても浮き足立っている教室。
ふらふらと出てきたハリーの隣に付いたは、
睨みつけてくるロンを無視して、話し始めた。
どうやら、ロンの中でのの印象は、今までで最も悪いらしい。
「大丈夫じゃなさそうね」
「頭ががんがんするよ」
「当たり前よ。少し濃い目の紅茶を飲めばマシになるわ」
「ありがと」
「あの先生には気をつけなさいね」
「どうして?」
「私と同じ匂いがするから」
「へ?」
「!」
「それじゃ、が呼んでるから行くわ」
「ちょっ!!!どうゆう・・」
ハリーの叫びは群衆に飲まれて消えてしまった。
もちろん、の姿も。
私と同じ匂い。
闇の匂い。
血の匂い。