「今日ほど大広間にいきたくないと思ったことはないわね」

「我輩の・・」

「所為よ。まったく。脱狼薬を忘れるなんて・・・・」

「すまん」




足早に廊下を歩みながら、ローブをはためかせ、

窓の外を見やる2人。

諸事情により、遅れて入らなければならない大広間。

ボーバトンとダームストロングは既に到着している筈だ。

それによっていつもよりも数段騒がしくなっているであろう。




「食事だけ持って部屋に帰ろうかしら」

「校長に頼まれているんじゃないのか」

「なんだかどうでも良くなってきたわ」

「なっ!!あのゴブレットの管理を任されたのだろう?!」

「だって、誰が戦って勝とうが死のうが、興味ないもの」




らしいといえばらしい答えに、スネイプは1つ溜息をつくしかなかった。

だから、いつもどおり、少し力をこめて扉を開いてしまったのだけれど・・・・。

途端、一斉にこちらに向く視線。

隣で、が盛大な溜息をついているのが判る。




「莫迦」

「・・・・・すまん」

「もう、いいわよ。じゃあね」





すいっとグリフィンドールの席に移動して、

の隣へと腰掛けた。




「どうだった?」

「大丈夫。間に合ったわ」

「全く、人騒がせだな」

「まあね。嗚呼。糞爺」

「どうした?」

「全部よ。胸糞悪い人選よね」




教員席に佇むココの教師ではない男達。

匂いがする。匂いがする。

がクロワッサン1つと、クラムチャウダーを少しおなかに入れた頃、

響いたコップを叩く音。

少しばかり見え隠れする箱が、今回の目玉。




「炎のゴブレット。代表者を決める、公平な選者じゃ」

「組み分け帽子と言い、あのゴブレットと言い、お前、よく考え付くよな」

「いいじゃない?選定者って響きすきなの」

「あっそ」

「この周りには、わしが年齢線を引くことにするからの」

「・・・・あの双子、絶対行く気満々じゃねえ?」

「注意して止める様なら、悪戯仕掛け人なんて務まらないわよ?」

「それもそうか」




注意が終わり、寝る時間だと促された生徒達が、

波の様に出口を目指している。

サラダを少しずつつまみながら、

全員が出て行くのを待たねばならないコトに、

は肩を落とした。




「あれ?、行かないの?」

「ちょっと用事よ」

「そうなんだ・・・・で、あのさ、ムーディ先生の・・」

「嗚呼、すまないね」




そうハリーが言おうとした矢先、どんっとぶつかった肩。

見上げれば、カルカロフ校長と、クラム。

そして、脅えたような、驚いたような目線。

前者はきっと、後者はきっと・・・・・。




「ね?ああいう目線向けられるのって、胸糞悪いと思わない?」

「吐き気を催しそうになるよ」




校長が立ち止まったのをきっかけに、

今日やってきた部外の生徒達がひそひそと話し始める。

その理由はわかっているけれど、

それは自分の力でない事を、知ってしまったから。




「、頼んでも良いかな」

「ええ。それじゃあねハリー。良い夢を」

「・・・・・・・」

「何か御用ですか?家になら、両親は去年に亡くなりましたので、
今は私が当主ということになりますが?」

「なっ!!あの御2人が亡くなら・・いやいや」

「ないのでしたら私、用事があるので」




頭を下げて、踵を返す。

返した途端なくなった笑顔に、がもらした苦笑は、

誰にも聞こえずに消えていった。




「あ、そうそうハリー」

「なに?」

「年齢線を越えようなんて馬鹿な考えは消しなさいね」

「そんな事、考えてないよ?」

「ならいいわ。ロナルド・ウィーズリーのお兄さんの会話が聞こえてきたものだから?」

「煩いな!!ほっとけよ!!」

「一応、彼らにも忠告はしたのだけどね?それじゃ」




今度こそ背中を向けて壇に上っていく。

其れをしばらく見つめていた面々も、

扉口から外へと出て行った。

杖を一振りして閉まらせた扉。

静かに鎮座しているゴブレットに歩み寄る。




「主殿、御久しゅう御座います」

「楽しみだわ。今年、死人は出ないかしらね」

「私が関与するのは代表者の選定のみ故」

「・・・・・紙を入れた人物を覚えていて頂戴」

「それは勿論」

「顔と名前、それから、気配」

「闇の匂いでもなさいましたか?」

「判らないのよ」

「アイツが力を付けてきてやがるからな」

「主殿をお守りして下さい。それが貴方に与えられた定め」

「判ってる」

「余計な事を・・・・」

「皆心配性なんだよ」




誰かの為に、命を落とせる君の事が大好きだから。




「選定が終われば、私の部屋に飾られる事になっているから」

「有り難き幸せ」

「久しぶりにもう一人の選定者とも話したらいいわ」

「じゃ、とりあえず結界だけでも貼っとくか」

「時間指定でね」

「また魔力使う要求を・・・」

「出来ないの?」

「出来るに決まってんだろ」




杖を振る。

ダンブルドアの作った年齢線を越えようとした双子が、

見事なまでの髭を生やし、

ほらね?と言った表情でに呆れられるのは、次の日の朝の事・・・・。