「・・・リー?・・・ハリー?」

「聞こえてるか!」

「っうわ!!」



ぼんっという爆発音と共に飛び出した尻尾爆発スクリュート。

それに引きずられそうになるのを何とか阻止して、

自分が呼ばれている事にようやく気付いた。

後ろを振り向けば、大人しく散歩させられている生物と、

大丈夫か?という眼を向けていると、

予想してたわと聞こえてきそうな表情の。




「言ったわよね?頭の悪い連中なんて放っときなさいって」

「うん・・・・だけど・・・」

「だけど?」

「ロンが・・・」

「ロナルド・ウィーズリーがどうかしたの?」

「嫉妬・・・してるらしいんだ。判らないよ。変われるなら変わりたい」

「自己陶酔はいい加減やめたらどう?」

「え?」




何故かの近くのスクリュートは大人しいらしい。

さっきまであっちこっちと走り回っていた自分のも、

いまは隣で眠っている。




「自分の事を先ず考えるのは仕方の無い事だわ。
その後に、向こうの立場になって考える脳を持ち合わせてないのよ。貴方は」




相手の気持ちを理解するのではなくて、

判ろうとするその姿勢こそなければ、

歩み寄りなんて夢のまた夢。

自分はこんなにも苦労しているのにと思う前に。

頭がごちゃごちゃしている。

色んなことがぐるぐるぐるぐる。



それからしばし沈黙のときが続いたが、

もう1つ報告しなければならない事を思いだして、口を開いた。




「シリウスに・・・手紙を出したんだ」

「賢明ね」

「ハーマイオニーが出せって、言ったから」

「貴方、自分で決めて行動する事ってないの?」

「僕は出したくなかった!だって、傷が痛んだって書いた時も、帰ってこようとしたんだよ?
こんな事になったって知ったら、ホグワーツに乗り込んできちゃう!!」

「だから?」

「アズカバンにまた・・」

「莫迦じゃない?」

「名付け親を心配するのは当然だろ!?」

「自分の力の過信をやめたと思ったのは、勘違いだったようね」

「え?」

「シリウスがどれだけ秀才だったか知っている?」

「うっうん・・・多分」

「彼は7年きっちり学んで、アズカバンを脱獄するほどの力の持ち主。
それでなくとも、闇の陣営では主力視されているブラック家の子よ?」




まあ、あの莫迦犬は、心配してくれているんだと、

鼻の下をでれでれ伸ばして、

子莫迦万歳な勢いで話してくるんでしょうけれど。

それは違う。

貴方が思いを馳せなければいけないことは他にある筈だから。




「でも・・・・・」

「彼は喜ぶでしょうね。貴方に心配されていると知ったら」

「ホントに!?」

「ええ。けれど、その前に第1の課題でしょう?」

「・・・・思い出させないで。考えたくないんだ」

「私と死なない約束をした筈よ?忘れたの?」

「ううん」

「そう。だったら、授業に集中する事ね。
ウィーズリーの件で出来ないと言うなら、さっさと仲直りしなさい」




その言葉にうんとは返さなかったけれど、

少しだけ、ほんの少しだけ、気持ちが晴れた気がした。

の態度は以前と変わらなかったし。







次の日、地下牢教室で、どんよりとした空気の中、

誰も近づけないオーラを醸し出している約1名の生徒が・・・・。




「?仕舞えよ。その殺気」

「もう少し別のところに頭を使う気は無いのかしら」

「無いんだろ」




スリザリンの胸に光るバッチを見ながら、

惜しむことなく垂れ流される殺気。

ハリーに悪態をつきながら、それにびくびくと震える生徒がいたのは確かだ。

あまりにも殺気を送る事に集中していたから、

自分の眼の前に人影が射すまで、

人が近づいている事に気づけなかった。




「・・・あの・・・ありがとう」

「何が?私、貴方に何もした覚えが無いのだけれど」

「ハリーが、少し、変わったみたいだから」

「嗚呼。あれね。でも、何故貴方がお礼なんて?」

「嬉しいからよ」

「そう」




板ばさみ状態になった事は、過去、自分も経験がある。

彼女のように、言葉足らずでも諭そうなんて、

優しい真似は、一度もしなかったけれど。

彼の見つけた無力な人達は、

彼の生き甲斐になってくれているのだろう。

人を見る目は、両親から受け継いだに違いない。




「男2人の板ばさみも大変ね?ハーマイオニー?」

「・・っ!ええ」




何故だか喜んでくれるから。

ファーストネームで呼ぶと。

莫迦犬曰く、余所余所しい感じがしないそうだ。

そんな会話の腰を折って、びかびかと光るバッチが眼に入る。



穢れた血。

まだ言っていたのかと溜息をついた。

けれど、情緒不安定なハリーを激怒させるには、

十分すぎる言葉だったのだろう。

飛び交う呪文。

運悪く入ってきたスネイプ教授。




「何事だ?」

「ポッターがゴイルを!!見てください」

「マルフォイがハーマイオニーを攻撃した!!」

「ゴイル、医務室へ。ミス・グレンジャーは何も変わりないように見えるが?」




ぱしんっと乾いた音が響き渡る。

紅葉型の赤い痕が目立つ目立つ。

泣いているハーマイオニーの肩にそっと手を置いて、

恥ずかしげも無く贔屓するスネイプを睨みつけた。

大丈夫よ。と呟いてやれば、しっかりと背筋を伸ばしたハーマイオニー。




「オン・トバング。呪い貰い」




杖を向ければ、今の今まで伸びていたハーマイオニーの歯が、

まるで一瞬にして移植されたかのように。




「!!」

「平気だよ。マダムポンフリーの薬を飲めばな」

「でも・・・・」

「大丈夫じゃなかったからこんなことしねぇって。じゃ、医務室連れてくわ」

「・・・・・・ありがとう」




連れて行くというを片手で制して、

自ら立ち上がってつかつかと教室を出て行く。

呆然とする生徒達。

いつもよりも数倍力強く閉められた扉は、

少しばかり歪んでしまった。



君を認めた証。

君に失望した証。




「莫迦じゃねぇの?」




主の言わんとしたことを引き継いで、ぼそりと罵ったは、

元いた席へと、戻っていった。