「なに?この莫迦げた記事は」

「リータ・スキーター」

「なんだかロックハートが可愛く思えてきたわね」

「重症だな」

「そうらしいわ」




感覚の鈍り。

朝食の席で新聞を広げ、

それこそ切り刻んでしまう勢いの。

隣で一生懸命、食事を取ろうとしているハリーを見つめた。

その隣で、ハーマイオニーが黙々と食事を続けている。




「ボク、一言もこんなコト言ってないのに・・・・」

「あの糞婆の描く事は、欠片も真実を含んでないわ」

「新聞の意味ないじゃない?」

「真実を伝えるのでなくて、新しく聞きたかったことを描くのよ。あいつわ」

「最低ね」

「そういえば、はホグズミードに行かないの?」

「人混みは好きじゃないのよ」

「そっか・・・・」




一緒に来てくれればと思ったが、まあ、仕方ない。

シリウスの返事を教えてなかったと気づいたのは、

もう既に、2人がホグズミードに到着した時だった。









の自室。

は念のためホグズミードへ向かわせた。

目の前に佇むゴブレットに、この所ずっと話しかけているものの、

返事を返してくれたためしは無い。

聞かなければならぬ答えは沢山あるのに。

朝から夕方の今まで、ずっとこのままだ。

今日も無理かと溜息をついたと同時、ふとちらついた炎。




「主・・・・・殿?」

「意識が戻ったのね。良かったわ」

「申し訳ございません・・・・」

「呪いを想定できなかった私の責任よ。気にしないで」

「しかし!!」

「それよりも、人の顔は思い出せるかしら?」




射抜くような目線。

誰のことを言っているのか、頭のいいゴブレットには判っていた。

四校目の名を自分に無理やり刻ませた奴だ。




「私はあのような者をこの城内で見たことはありませんでした」

「へえ」

「お役に立てなくて」

「いえ。十分な情報よ。これでポリジュースを使っている事は確定ね」

「主殿、これ以上、私は・・」

「休みなさい」

「・・・・・・・・・判り・・・・ました」




貴方が誰かのために死ぬのを見たくない。

にっこりと笑って帽子の傍らに置かれたゴブレットは、

ただただ、無力な自分を呪うばかり。

自分達は選定者。

かの者を守る事も出来ず、いつもいつも待っている事しか出来ないから。

だから、託すのだ。

かの者を守るために生まれた、もう1人に。



が自室の扉を閉めたとき、

窓の外から飛んできた真っ黒な梟。

すいっとの横に着地すると同時、人へと姿を変えた。




「どうしたの?」

「あいつ、莫迦犬の返事お前に言ってねえな」

「ええ。聞いてないわ」

「言ってたんだよ。シリウスとの約束に遅れるってな」

「十中八九夜中の暖炉でしょうけど、一応、脅しときましょうか」

「そっそうだな。それと、あの森番が、ポッターを呼び出してたぜ?」

「嗚呼。大方、第1の課題についてじゃないかしら?」




カンニングは当たり前。

あまりよくないことだが、まあ、

人のちんけなプライドを考えれば、頷ける現象だ。




「それより、聞きださなきゃならない事は莫迦犬の事よ」

「まあそれは・・」

「」




子供のよりも、幾分か低い声でつむがれた名前。

振り向けば、予想通りの顔が其処に。




「ここは廊下ですよ?スネイプ先生?」

「校長室まで来るものなど、限られている」

「何か話しが?私、談話室に行かなきゃならないの」

「・・・・・・・歯呪いは・・・もう、いいのか」

「あら、いつもと変わりないのでしょ?あの呪いは。
だったら貴方が心配するような事なんて、何一つないと思うけれど?」




それは、自分が獅子寮を嫌っているからで。

だけは違うと言う事を、学生時代、既に告げているわけで。

最初はそうでなかったのかもしれないが、

の中で既に、ハーマイオニーは友人として位置づけられてしまった訳だ。




「あれは・・・・だな」

「あれは?陳腐ないいわけは聞くだけ無駄よ?」

「・・・・・・・すまん」

「判っていればいいわ」




リリーを侮辱した貴方を許さないように。

ハーマイオニーは、もう私の守りたい人。




「そういえば、ダンスパーティー一緒に出てくれるんでしょう?」

「なっ・・!」




その日は地下でひっそりこっそり研究に打ち込もうと思っていたスネイプ。

隣にいたも、

驚いたように眼を見開いて、自分の主を見つめている。




「、前々から思ってたけど、趣味悪いぞ」

「失礼ね。餓鬼と出るよりはマシだと思っただけよ」

「お前ら・・・・」




どうやら、自分が一番失礼な事を口走っていると言う自覚は無いらしい。

がくんっといつものように項垂れたスネイプは、

向こうに見え隠れしている長髭を、見なかった事にした。




「相手は腐るほどいるだろう」

「あたし嫌われてるのよ?」

「自覚あったのか・・・・」

「あんな人達に好かれたって意味無いもの」




サラザールを、何も知らず侮辱するような人達とは。




「で、出てくれるのくれないの?
くれないんだったら、研究室を使わせて頂けない?」

「我輩が使おうとしているのだが?」

「白銀のヒカリの欠片や、黄金の粉末をあげたのは誰だったかしらね?
なんなら返して貰ってもいっこうに構わないわよ?
貴方の研究が進まないだけで、私には一切害は無いから」

「出よう」




貴重な、とても貴重なあの材料。

自分が一生かけても手に入らないような金額の物ばかりだ。

それを逆手に取られては、薬学莫迦のスネイプに、

断る術は全く無い。




「それじゃあ、ドレスローブ姿、楽しみにしてるわね」




くるりと踵を返して、

自分に黙っていた事を、さあ、どう怒ろうかと思案しながら、

獅子寮の談話室へ徒歩を進めた。