「やはり私の憶測は間違いではなかったの」

「そうですね。けれど、彼を慕う人が多すぎたのも事実ですから」

「そうじゃな。虚構であり虚構にあらず」

「その・・・・トム・リドルは・・」

「今のヴォルデモート卿よ」

「っ!!」

「嗚呼。ゴメンね。貴方はこの名前嫌いだったかしら?」




ボーンボーんっとなる柱時計。

綺麗に描かれた90度を見やり、

今日はここで休むがよいと言ったダンブルドアの言葉に甘えて、

ぽふりとベッドにもたれた。

破天荒な4人を思い出させてくれた、彼らに感謝して。




「おい。また本読んでのか?」

「干渉しないで下さいと、何度言ったらお判りになるんですかね?」

「さぁな。それより、外でクディッチやろうぜ?」

「彼方達だけで行って来たらいいでしょう」

「僕等は君とやりたいんだよ」

「私はやりたくありませんので」



ヴォルデモート直属配下と呼ばれる家に生まれた。

ただ、黒い髪がリドルであった頃の彼が愛した人に似ているからと。

同じ名前だと。

愛された。

途絶えたのは、ホグワーツに入学し、

グリフィンドールに配属されてからの、ユメの7年。



突き放しても寄ってくるお人よし。

少しばかり尻に敷かれたり。

あの4人が笑っている。

勘違い。勘違い。




!!」

「リリー?どうかしたの?そんなに慌てて」

「ジェームズが!ジェームズが!!」

「シリウス、良いタイミングで現れてくれたわね」

「何だよ

「あとは頼んだわよ?」

「はっ?」

「あ!シリウス聞いてよ!ジェームズがね!!」




騒ぎあった。じゃれ合った。

知ってた。判ってた。

彼らが過去の人じゃないこと。

ただ、楽しかったから良いと、思えてしまったの。



だから、忘れてしまっていたのは、

自分が彼の隣にいなければならぬ存在だった事。

抗えないでしょう?

力もまだまだ、不十分で。

それに・・・・・、

アイシテイタカラ。




「あれ、?」

「・・・・・・・・・・・」

「ハリーを見に来てくれたんじゃない?上がってよ」

には、懐いてたもんなぁ〜」

「・・・・チャ」

「なんだって?」

「コロサナクチャ」




雷鳴と共に浮かび上がるシルエット。

その影が怪しく微笑む。

身も凍るようなその冷笑。

植え込まれた愛。




「良くやった」




真っ赤だね。

親友って何だったかしら。と。

ただ、ふっとの頭に流れたのは、

伸ばしてくれた手や、光。

まただ。

また自分の手で壊した。

折角の・・・・シアワセ。



ダメ。ダメ。ダメ。

それは、あの人たちが残した、

たった独りのシアワセ。

考えられたのはそこまで。

飛び散ったのは、翠の閃光。








朝日のさす部屋で、ベッドにもたれ眠る

ゆっくりと眼を開ければ、

傍らに佇む茶髪の少年。




「どれくらい寝てた?」

「半日」

「どうりで腰が痛いわけだわ」

「ダンブルドアが独り部屋、用意してくれたぜ」

「それはそれは」




伸びをしてゆっくりと立ち上がると、

は隠し部屋を出て、校長室の方へと歩いていった。

朝日が眩しい。

ガーゴイル像の前に立てば、自然と眼を開ける門番。




お帰りなさいませ

主の部屋へ導く言葉を

「そうね・・・・人語じゃなきゃダメ?」

主のお好きな言語で

「じゃあ、シアワセ




それは、願うものか、奪うものか、与えられるものか・・・・。

しゅうしゅうとしか聞こえない。

螺旋階段を昇りながら、焦る気持ちが。

だってそこは、だってここは・・・・。

森が全て見渡せるその場所に用意されていたのは、こじんまりした二人部屋。

そして、組み分け帽子。

それを見た瞬間、の瞳から、ぽろりぽろりと涙がこぼれた。




「久しぶりね。の部屋に来るの」

「いつもは生意気なガーディアンが邪魔するからな」

「悪かったな?生意気で」

「ま、いいか。柔らかベッド!!」

「おいゴドリック。そこからどけ」

「なんだよいいじゃないか」

「大切な場所だからな。荒らされたら困る」



「ちょっと!あなたサラザールと?」

「そうよ?あら、言ってなかったかしら?」

「聞いてないわ!」

「ゴメンごめん」

「ヘルガも何とか言ってよ!」

「ん〜こんな昼間から下ネタはかない方がいいぜ?」

「ヘルガ!!」




「覚えてる?」

「もちろん」




自分にとっての、幸せの場所。

いや、シアワセの記憶に逃げられる場所。

彼女はまだ気づいていない。

自分を犠牲にして成り立つ幸せしか知らない。

だから、自分の幸せを知らない。




「彼方が言ってくれたんでしょう?」

『主のためですから』

「ありがとう」

『気に入って頂ければ光栄です』

「とても、気に入ったわ」




それは、シアワセ?