それは、魔法史の授業中に起きた。
いつものように聞き流せなかったのが原因。
「先生!秘密の部屋について教えて頂きたいのですが」
そのハーマイオニーの質問をきっかけに、
創立時のこと、秘密の部屋の事。
歴史であって、にとっての昨日を、
目の前の教師がつむぐ。
4人の偉大な創立者。
自分の名を残さぬように。
人身御供となった壁の事を記さぬように。
貴方達のユメを穢す要因を除くように。
「しかし、スリザリンは選別された生徒のみが入学するべきだと考えたのです。
魔法教育は、純粋に魔法族の家系のみに与えるべきだと。
この問題を巡り、スリザリンとグリフィンドールが激しく言い争い・・」
だけれど侮辱は?
聞き流せない。
あの人は、憎んでも仕方ない事を知っていたから。
だから、マグルは嫌いだけれど、
そんなところで差別してはいけないって。
皆で作り上げる学校なんだから。
そうだろう?
「良くも知らないくせに・・・・」
歴史を語る人は気をつけて?
その人の心に気をつけて。
「勿論、全て戯言であります。騙され易い者を怖がらせる作り話です」
「先生---『部屋の中の恐怖』とは具体的にどういうことですか?」
「何らかの怪物だと信じられており、継承者のみが操ることが出来るという」
「先生?」
「なんだね?ミス・・・あぁ・・」
「と申します」
「なんだね?ミス・」
「怪物と先生が仰った事についてですが、少し意見を述べさせて頂いても?」
「これは単なる・・」
「迷信といわれるのですか?勿論そうかもしれませんが、
そもそも怪物とは、得体の知れない生き物、もしくは不思議な力をもっている人や物。
これは、辞書で引けばすぐに出てくるような答えです。
そして、怪物と呼ばれるようなもの達は、蔑まれてきたか、あるいは迫害を受けたか。
そうですね?ですから、恐怖と一様に位置づけるのはどうでしょうか。
むしろ恐怖を感じているのは怪物の方では?」
歴史を紐解けば、そう。
怪物と罵られ、輪の中に入る事も許されず、
独り孤独に過ごしていかなければならない人生。
ただ、仲間に入れて欲しいだけなのに・・・・。
シンッと静まるその教室を裂くようになった終わりを告げる鐘。
ばしんっと物凄い音を立てて閉じられた本に飛び上がり、
終わりますと口にしたピンズ先生。
は溜息をついて、教科書を持ち上げ、
恐る恐る出て行くグリフィンドール生に続いた。
聞こえてくる声に、
怒りのボルテージを上げなければならなかったのだけれど。
「サラザール・スリザリンが狂った変人だって事、それは知ってたさ」
「純血主義を言い出したのが、そのサラザール・スリザリンだったなんてね」
「僕ならお金貰ったってそんな奴の寮に入るもんか」
「私もあまり入りたいとは思わないわ・・・・」
「組み分け帽子が僕をスリザリンに入れてたら、汽車に飛び乗って家に帰って・・」
「口を噤みなさい。ロナルド・ウィーズリー」
「何が。だって嫌だろ?あんな純血主義の・・」
「噤めと言っているのが聞こえないの?」
漏れるのはひっという音。
突きつけられた杖から飛び出るのは何色?
「貴方達のように憎む事しか知らず、
あまつさえ見も知らぬ人を侮辱できるような餓鬼は、
自分のために世界を手に入れようとしているヴォルデモートと一緒よ」
「なっ!!」
「ハリー・ポッター?」
「えっ?」
「貴方を見も知らぬ人に英雄扱いされたらどう?」
「・・・・・あんまり・・・嬉しくない」
「そうね?それと同じ事をしている友達を止めないのはどうして?」
「それは・・・・」
「今後、サラザールの事を侮辱してみなさい。
数秒と待たず、仲良くこの世からすぐにでも抹消してあげるわ」
許さない。
怒りを隠す事もなく、はすいっと大広間への道を辿る。
途中で拍子抜けしまうくらい、
素っ頓狂な声に、肩を落とすのだけれど。
「ひぃ〜めぇ〜〜〜!!」
「ご機嫌麗しゅう」
「さっきまで200mほど先にいなかったかしら?」
「愛の力だよ」
「勿論、ボク等と姫との愛さ」
「はいはい」
両側にぴたりと疲れて溜息を漏らす。
この頃はこの2人と食事をとる事が多い。
楽だから。
入り込んでこない。
あの3人よりも幾分か大人で。
「皆お静かに!!」
「今日は、また転入生が来たので、皆に紹介しておく」
大広間中が、ざわつく。
が転入してきたのでも驚きなのに、もう一人だなんて。
しかも、こんな中途半端な時期に・・・
「組み分けは既に終わっておっての、グリフィンドールに入ることになっておる」
「誰が入るんだ?知ってる?」
「ええ」
「誰々?」
「内緒よ。面白くないでしょう?」
「おいで」
どこに居たのか、突如現れたその生徒。
全ての寮(特にグリフィンドール)の女子生徒から、歓声が沸いた。
金の眼に、明るめの茶髪。少し長目の髪を持った少年。
それを見たグリフィンドールの3人は開いた口が塞がらない。
その少年は確かに、ミセス・ノリスが石化された時、
を抱き上げた少年だったのだから。
「と言います」
「2年生じゃ。皆仲良くするようにの。でわ、夕食をとることとしよう」
は、の隣に座ると同時に、質問攻めにあっていた。
勿論男子生徒も入っていたが、8割方女生徒。
「どうしてこの学校へ来たの?」
「何が趣味?」
「好きな食べ物は?」
それを殆ど無視して、黙々と食事を取っている。
もともと煩いのがキライなのに、これだけ詰め寄られてはキレル寸前であろう。
だが、ひとつの質問にピクリと反応して、その質問だけには答えたのだ。
「君って彼女いるの?」
「フィアンセ」
そう言って指さされたのは、
隣で双子と談笑している空色の髪のマリオネット。
それだけ答えると、また黙々と食事に戻る。
シンッと一瞬静まった大広間。
次にはもちろん・・・・。
『ええええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!!』
がっちゃんがっちゃんがらがら。
それでもとは食事を続ける。
「姫!どうゆう事ですか!!」
「フィアンセと言うより従者の方が正しいと思うわ?」
「従者?」
「は代々家に使える一族になのよ」
「(嘘付け)・・・・・・・・・そういう事だ」
「じゃ。行きましょうか」
「はいよ」
優雅に椅子を引いて、
2人は連れ立って大広間を出た。
もちろん瞬間、爆笑。
「なぁにが従者だよ!」
「だったら乗らないでよね!!見た?あの生徒の顔!面白いったら!」
「椅子引くなんて、初めてしたぜ」
「セブルス・・・セブルスの口から珈琲・・・・っく!」