「だけどいったい何者かしら?」
「判らないよ。見当も付かない」
「僕らの知っている中で、1番マグル生まれは屑だと思ってるのは?」
「もしかして彼方、マルフォイの事を疑ってるの!?」
「アイツが言った事聞いただろう!『次はお前達だぞ、穢れた血め!!』って」
「マルフォイが、スリザリンの継承者?」
だけど・・・・と獅子寮の談話室で、
終わりのない話し合いがずっと続いている。
それを溜息をついて見つめているのは勿論だ。
「あのドラ子がサラの継承者ですって」
「笑えねぇ冗談だな」
「全く。創始者の魔力をなめてるわね」
「まったくだ」
「でも、継承者なんて名乗るといえば、彼くらいしか思いつかないのよ」
あの頃はまだカワイかった赤眼の彼。
だとするならば、どういった形で?
それがこの2人の今の疑問だ。
そんな会話の所々が彼らに聞こえていた事など露知らず。
「だったら、はどう思うんだ?」
「何の話?」
「とぼけるな!僕らの予測が間違ってるって言うんだろ!!」
「ああ。継承者の事?残念ながら私も憶測だけどね?」
「だったら人の意見否定すんの止めろよ!」
「どうして?」
「気分悪いからに決まってるだろ!!」
餓鬼臭い。
けれど、彼のような直情型は、嫌いじゃなかったから。
「それは、ごめんなさい」
ポロリと出たのは、素直な謝罪。
言葉を返せなくなって、
逃げるように去っていく赤茶色。
追いかけるように飛び出していった栗毛を、
なんだか微笑ましく見つめていた。
「は、誰だと思ったの?」
「さあ?」
結局答えは聞けず、
次の日の朝早く目が覚めてしまったハリーは、競技場へと向かっていた。
競技用最高速度の箒軍団と戦う事を考えていたのだから、
自然に、身体が競技場に向かっていたのにも頷けるだろう。
「・・・・・・・??」
競技場に着いたハリーの目に入ったのは、2つの人影。
ふわりふわりと箒にまたがって、
浮遊したまま静止している。
こんな朝早くに、一体誰がこんな所に来ると言うのだろう。
試合開始まで、まだ何時間もあった上に、朝食も食べる時間ではなかったのだ。
「ジェームズ、リリー。貴方達のシアワセは、私が守るからね」
聞こえてきた声に驚くしかなかった。
それは紛れもなくの声で、
傍らにいるのはで。
手に持っているのは誰かの箒だろうか・・・。
何故、何故が自分の父と母の名を?
そして彼等のシアワセをが守るというのはどういうことなのか。
「・・・・・?」
「っ!!」
「どうしてがボクのパパとママの名前を?」
「聞いてたの?」
「えっう・・」
「オブリビエイト」
気づいた時には遅すぎた。
飛んできた呪文をよける事も、
跳ね返す力もまだ自分は持っていなかったから。
倒れる寸前で抱かれた身体。
心底苦しそうに、が笑っている。
「あ〜あ。失敗しちゃったわね」
「気にすんな」
「気にするわよ」
ブラッジャーが飛び回る。
たった独りのシアワセを狙って。
「競技場の方が騒がしいわね」
「どうせ、ハリー・ポッターがスニッチをとったんだろ?」
「それなら歓喜の声が聞こえるはずでしょう?」
「それも・・・・・そうか」
守ろうと決めたその日から、
ストーカーまがいの事を続けている。
今までばれなかったのは素晴らしいと、拍手を送りたくなる所業だ。
顔を見合わせた2人は、
ざわめきが一層大きくなった競技場へと、脚を進めた。
「・・・・・・どういう状況かしら?これは」
だれんっとなった腕。
息を呑んだまま止まったのであろう生徒達。
横に座っているロックハート。
「明らかに治療失敗だろ」
「ハリー・ポッター?腕をどうしたの?」
「僕、僕、折れたと思ったんだ・・・・それで」
「もう、いいぜ。黙ってな」
「そこで放心してらっしゃるロックハート先生?」
「なっなんだね!」
「どういう状況か、説明して頂けません?」
「わたしはね、治療をしてあげようと思ったんですよ。
まっまあ、このような事も、たまにはあるでしょう!痛みはなくなったのですからね?」
「へえ?」
それじゃあと言ってのはなった呪文は、
ロックハートにあたり、
その物体は、その場に崩れ落ちた。
叫び声が木霊する。
五月蝿い五月蝿い。
「ご自分でお掛けになられた呪文を、全て体験してみるべきですね?
なんならここで、極度の忘却呪文でもお掛けしましょうか?」
「もっ元に戻したまえ!!」
「骨を再生させるのが、どれだけ痛みを伴うかご存知なんですか?」
「そっそれは・・・・!」
「痛みはなくなったんでしょう。今はね?」
担架を1つ取り出したは、
浮遊呪文を駆使して、ゆっくりとハリーをそれに乗せた。
勿論、ロックハートはそのまま医務室まで飛ばしたが。
「邪魔よ。自分を掴んでくれる手を、助けられるのに助けない方々」
「ハリーをドコに連れてく気だよ!!」
「貴方が止めていれば今ココで治療が済んだかもしれないのにね?」
「ボクの所為じゃ!」
「ない訳ないでしょう?どれだけ他力本願なの?」
「っ!!」
「自分本位でいいんじゃないかしら?
人様の苦痛を笑える人達なんだから、
闇の陣営に行けば幹部職につけるかもしれないわよ?」
ハリーの乗っている担架を連れて、校舎に入って行く2人を、
ただ見つめている事しか出来なかった。