「ダンブルドア・・・・」

「なかなかの考察じゃの」

「聞いてらしたんですか」

「聞こえたのじゃ」

「良い耳をお持ちで」




ふぉっふぉっふぉっと笑って、

担架を医務室に導きいれる。

聞こえてきたのはマダム・ポンフリーの愚痴り。

大分痛いという言葉に顔を歪めたハリーを、

はずっと見つめていた。




「どうしてあんな下衆、先生にしたんです?」

「そのくらい、足りてないんじゃよ」

「まだ信じられませんか」

「わからぬ」

「仕方ありませんね」

「そう言うてくれるのはだけじゃ」

「そうですか?」



奥のほうで、耳を塞ぎたくなる呻き声が聞こえる。

ざまあみろと思いながら、

微笑をもらすの耳に、聞こえてくる叫び。

怖いよ。コワイヨ。

誰か、助けて!!



がたりと椅子を倒す勢いで立ち上がったは、

を連れて走り出す。

走って、走って、あの廊下へ。

荒い息を吐きながら、

は、眼前に広がる光景に、

ただ唖然とするしかなかった。




「どう・・・して・・・」

「誰でも、いいんだろ。アイツにとっちゃ」

「どうやって?」

「それはオレにも・・・・」

「もう、止めてよ・・・あの子は、ただサラに会いたいだけなのに!!」




もう止めてと、地面を叩いて叫ぶことしか、

涙する事しか出来ずに。

嗚呼。また彼が悲しんでいる。

唯一傍にいた人に、ずっとずっと会えなくて、

時を数える事なんて知らずに。

記憶が薄れるのを嘆きながら。




「これは・・・・・」

「コリン・クリービー!!なんという!!」

「新たな犠牲し・・」

「言わないで!!犠牲者なんて言わないで!!」

、休みなさい。消灯時間はとっくに過ぎとる」

「・・・・・・・行こうぜ」




に連れられて、

ガーゴイル像を通り抜け、自室へと戻る。

ぽたりぽたり。

止まらない涙は、今も絨毯を濡らし続けている。




「落ち着けよ」

「・・・・そうね」

「平気か?」

「眼・・・」

「腫れてんな」

「ありがと」




氷で目頭を冷やしながら、深呼吸を繰り返す。

心の不安が、彼に伝わってしまうのを恐れて。



そのまま夜はふけ、

次の日からも何食わぬ顔で過ごす

畏怖の眼が増えたような気もしないではないが、

別に気にする風もない。

変わったと言えば、双子が絡んでこなくなった事くらいだ。




「決闘クラブ?」

「あいつの助手を務めることになったのだ」

「そのまま殺しちゃえば良いわ」

「我輩もそうしたいのは山々だが、生徒が大勢いるのでな」

「平気でしょう?皆賛同してくれる」

「・・・・・祭り挙げられるセブルス・スネイプ?」

「ナイスよ。いい感じじゃない。ね?」




暗い廊下を3人分の足音が交差する。

向かう先は、決闘クラブ改め、ロックハートを血祭りに挙げるクラブ。

語呂が悪いのは気にしない。

目的地についたは下へ、スネイプは舞台上へと移動した。



ロックハートの演説を右から左へ聞き流し、待ってましたの模範演技。

スネイプの瞳が、とても生き生きしている。

呪文が飛び交い吹っ飛んだ役立たずに、

誰もが心の中で拍手喝采を送った事だろう。




「セブルス、最高にかっこいいわ」

「用意周到だな」

「準備万端って言ってくれる?」



手に持ったカメラを嬉々として掲げて、

うきうきと話していた2人の耳に入ってきたのは・・・。

舞台の近くにいるから見える。

首をもたげる小さな蛇と、

抑制を支持した人の発する、蛇の声。




「パーセルマウス・・・・」




ぽそりと零した言葉は、

誰の耳にも入ることなく流れてゆく。

蛇は首をもたげたまま、今も彼を襲うおうとしている。




止まりなさい




今度は他方向から聞こえた蛇語に、皆がびっくりする番だ。

蛇にとってその声は、

先程の若造のものよりも、幾分か殺気を含んで聞こえて、

なおかつ、従わなければならない気にさせたから、

しゅるりしゅるりと大人しくなった。




「ばっ化け物めっ!!」

「こいつ等がボクに蛇を!!」

「なんの被害妄想かしら」

「可哀想だな」

「どうゆう事?」

「ハリー行こうぜ」




2人に手を引かれてゆくハリーは、

について行きたかった。

あの眼が、着いて来いと、そう言っているように感じたから。




「それじゃあ、私達も追いかけますか」

「だな」

「おいで」

「連れてくのか」

「可哀相じゃない。誰かさんの都合で安眠妨害されたんだから」

「それもそうか」




パーセルマウスの話を聞きながら、

ハリーの頭を回るのは、の事。




「それなら・・・・は?」

「知りたくもないね」

「でも、蛇語はスリザリンの能力でもあるのよ」

「それから例のあの人もね」

「じゃあ・・・・あ・・」




太った婦人の前で佇む海色。

俯くでもなく、視線をそらすでもなく、

じっとじっと、夜色の瞳が自分を見つめているのが判る。




「私の話を聞くか、そこの2人に説明を受けるか、選びなさい」

「なんの・・」

「貴方に質問した覚えはないわ。ロナルド・ウィーズリー。
お兄さんと比べられたくないのなら、その稚拙な性格をどうにかする事ね」

「調子に乗るなよ!!」

「止めてロン!!」

「だけどハリー!!」

「止めて?」

「ハイ」




黒い微笑みに噴出したは、

まっすぐに見つめてくる緑の瞳を、見つめ返した。




「行きましょうか」