次の日、生憎外は大雪。
真っ白な世界に閉じ込められて、授業は休講。
図書室の禁書の棚で、本を読み漁っていたの耳に、
何やら人間臭い会話が聞こえてきた。
「じゃ、アーニー、彼方絶対にポッターだと思ってるの?」
「彼はパーセルマウスだぜ!それは闇の魔法使いの印だって、皆が知ってる」
「スリザリン自身の事を、皆が『蛇舌』って呼んでたぐらいだしなんだ」
「けど、それをいうならだってそうじゃないか」
「スリザリンの継承者がオンナなわけないだろう?」
「それもそうか?」
憶測は憶測どまりで、
彼女が探しているリドルが生き残っている方法も、
見つけられなければただの妄想。
ぱたんっと向こうに聞こえるように本を閉じて、
すくっと立ち上がると、
わざとその本棚の方を通って、これ見よがしに言葉を並べた。
「自分の憶測だけでものを言う人って莫迦っぽいと思わない?」
「そうだな」
「証拠を並べているようで、ただの妄想壁よね」
「可哀相な事この上ないぜ」
「偶像崇拝もいいとこだわ」
「自分の力を誇示したいんだろ?」
「どこへ行っても一緒ね?なんて、阿呆らしい」
こんな、こんな学校を作りたかった訳じゃないはずなのに。
どうして、純粋に魔法を学びたいと思わないのか。
「魔法使いだろうが、マグルだろうが、
純粋に知りたいと思わない者って、もう、廃れてるわ」
図書室を後にした2人は、少しばかりすっきりした顔で、
廊下を歩いていた。
死んだも同じよ。
自分の知能を誇示して、知ったかぶりをするのわ。
そしてまた聞こえる。
悲鳴が。叫びが。
イヤダイヤダイヤダイヤダ。
タスケテ。
お願い。
誰か一緒に・・
「っ!!」
「待て!行くな!!」
の腕を振り切って、は廊下をひた走った。
途中でぶつかってしまったり、踏んづけた人もいるようだが。
そんなもの全くもって気にせずに、
声の聞こえた方へと。
「・・・・・・・ハリー・ポッター」
「ちっ違う!!これは・・・」
佇む黒髪の少年と、
恐怖の面影しか見えぬジャスティン・フィンチ・フレッチリー。
透明感をなくし、今しがた地獄を見て来たかのようなニック。
「返事をして・・・返事をしてよ!!」
「?」
「一緒にいるわ!!一緒にいるから!!」
「止めろ!!」
地文字で彩どられていた其処に手を叩きつけ、
遠ざかっていく足音をただ、涙を流して聞いているしか。
まただ。また・・・・。
何度同じ事を繰り返せば気が済むのだろう。
よほど強く叩きつけたのか、の手には血が滲んでいる。
「おやまあ、ちびのポッターとじゃないか」
「ピーブス!去れ」
「ん〜?君は確か転入生?」
放心状態のは、ピーブスにも気づかない。
3人と、2人を交互に見詰めたピーブスは、止める間もなく、叫んだ。
「襲われた!襲われた!!またまた襲われた!!!」
「っくそ!!」
「ねぇ!どうなってるの!?」
「煩い。黙れ」
次々と廊下の両側の扉が開いていく中、
はの隣で、ハリーは2人の傍らで佇む。
生徒達が集まりだしたその円の中心で、は放心したまま。
伸ばされた腕を何度も払って。
「現行犯だ!!」
ざわざわと大きくなっていく騒音に、
耐え切れなくなったのは、ハリーではなかった。
「黙れ!!!」
拡張された声と殺気は、
遠く離れた教室にまで響いたらしい。
どうやったのか気絶しているを抱え込み、
道に広がる生徒達を睨みつけて、スタスタと歩いていく。
追いかけなければとハリーが思ったのは、
少し間が空いてからだった。
「お待ちなさい!校長室に・・」
「俺に命令できるのはだけだ。
こいつの話を聞く権利すら持ち合わせていないお前に、
俺達の道を塞ぐ事は不可能だからな。判ったらのけ」
「なんという無礼な!!」
「無礼な?てめぇの方が無礼だろうさ。現行犯だという莫迦な言葉を信じるてめぇが」
「っ!!」
「もう一度言う。俺の進む道からのけ」
身体が勝手に反応した。
その言葉にはそれほどの力があって。
「それからハリー・ポッター」
「はい!」
「自分の行きたいトコへ行けよ。着いて来られるのは迷惑だ」
きっぱりとした拒絶に、
皆が皆、立ち止まる事しか出来なかった。