は物凄い勢いで落ちていた。

マートルのトイレにやってきたは、パイプ管の前で蛇語を唱え、

開いた入り口から中に入ったのだ。

箒も勿論小さくして、ポケットの中に入れている。

転がり出たは、瞬時に箒を元に戻し、それに乗って先を急いだ。



あの頃は、毎日のように来ていた場所。

にとって、自分の部屋よりも知り尽くした場所。

左右に広がるパイプの闇に目もくれず、右に左に曲がっていく。

彼がいるあの部屋を目指して。




開け




二匹の蛇が絡まりあった壁の前でそう呟く。

昔は彼の役目だった。

中から開けてくれた彼と一緒に、いつもあの子がいた。

笑って撫でて、その姿を見て撫でられて。

だけど今中にいるのは・・・・・




「トム」

「やっぱり来たね。もうすぐ来る頃だと思ってたよ」

?」




中で悠々と座っていたりドル。

先に来ている筈の相方を呼べど、返事は返ってこない。

怪訝な顔をするに、リドルは部屋の隅の方をさした。




!!」




そこに転がっていたのは、傷だらけのと、

既に精気の感じられなくなったジニー。

は駆け寄り、ジニーの首に手をあてがってから、を抱き起こした。




「莫迦!あれ程手を出すなって言ったじゃない!!」

「・・・・・・おっ・・・せぇよ」

「そいつは君の命令を忠実に守っていたよ」

「・・・どういうこと」

「僕が引き摺り出したのさ。。君を誘き出す為の餌にね」

「1人で行かせるべきじゃなかったわね」

の・・所為じゃ・・・・・ねぇ」




杖を握っている手に力を込めて、切っ先をリドルに向けた。

湧き上がってくる怒り。

役立たずは自分。

殺さなきゃいけないのは自分。

けれど目の前にいる標的。




「やめ・・・っ」

?君が?」

「コロサナクチャ・・・・・ネ」

「っふ・・ははははは」




の瞳は光を失い、杖の先には翠色。

口元にうっすら笑みを浮かべたその顔は、目の前に佇むリドルそのもの。




「なんだ。やっぱり僕と同じだった。ねぇ?」

「アノヒトノタメニ・・・・」

「だめだ!!!!」




入り口の方から聞こえてきた声。

守ろうと決めた、かの者の・・・・

ハリーはに駆け寄ると、力いっぱい抱きしめた。




、大丈夫だから。だから元に戻って」

「コロサナクチャ・・」

から離れろ!!」

「イヤだ!!の意思はどこにもないのに!!」




ポタリポタリと零れていく滴。

別の人格を創っていたのは自分。

ただ信じたくなくて、もう1人の自分に罪を被ってもらって、私は・・・・




「ゴメンなさい・・・・」




そうだ。

目の前に広がる血が怖かった。

だから、だから、発作と称する彼女になれば、

何故だか正当化されると思った行為。

溢れ出た安著のため息。

酷い傷をおったも、どさりと倒れ込んだ。

そんな中、一人呆然と立ち尽くしているリドル。




「どういう事?ハリー・ポッター。君はの何を知っているの」

「全然知らない。知らないけど、友達には変わりないよ」

「友達・・・ね」

「違った?」

「さあ?」

「じゃあ、友達だね」




リドルと向き合った2人の眼には、眩いばかりの光。

急がなければ。早く・・・速く・・・・・




「ハリー・ポッター、彼方は戻りなさい。
何故ココにいるのか知らないけれど、危険すぎるわ」

「それはこっちの台詞だよ!!」

「・・・・・どっちにしたって構わない。君達はここから生きて出られないというだけのことだ」

「っ危ない!!!」




忍び寄る影に気付かなかった。

それの毒牙がハリーに振り下ろされそうになった瞬間、はハリーを突き飛ばした。

必然的に、バジリスクの牙が貫くのはになる。




!!!!」

「逃げなさい・・・それは・・弱い事じゃないのよ・・・」

「っ・・!!」




何も映さなくなったの瞳。

驚いていたのは、リドルだけではなかった。

ずっと昔に仕えていた。

そう、自分を育ててくれた人の、大切な人。

自分を怖がらず、毎日毎日会いに来てくれた人。




「バジリスク?そこにいるの?
サラは死んじゃったのよ。ずっとずっと前に。
私も、気づけなくて、怖かったわね。寂しかったわね。ゴメンナサイ」

「っく!!もういい!そいつを殺せ!!

「サラは死んでしまったけれど、彼に従って怖い思いすることないわ」

何してるんだ!!殺せ!!!




ハリーは、どうする事も出来ない自分を呪った。

自分がいなければ、はこんなことにならずにすんだ筈だ。

自分なら大丈夫だと、何とかできると自意識過剰になって。

無力だと、が教えてくれていたはずなのに。




「トム・リドル。まさか君だったなんて思いもしなかったよ」

「そう、ボクさ。まぁ、実行したのはそこに転がっているジニーだけどね」

の目を元に戻せ!!」

「それは無理な相談だ。バジリスクの牙を受けてしまった」




がふらふらと向こうに行こうとするのを必死に食い止め、

ハリーはなんとか時間を稼がなければと思っていた。

ダンブルドアが戻ってくる。どの時まで。

だが、一体どのくらいかかるんだろう。

1時間?2時間?途方もない。




「君がいなければはそうはならなかった。そうだろう?」

「そうね。けれど、私の力が及ばなかったのも事実よ」

「少しくらい否定してくれてもいいんじゃないかな・・・・。
でも、僕がいなければがこうはならなかったのは本当だから・・・・僕が君を倒す!!」

「ボクを倒す?それは無理だよ。は無理でも、君なら・・・・・そいつを殺せ




を見詰めていたバジリスクは、

ズルズルと身体を引きずって、ハリーと向き合った。

咄嗟に下を向いて、を庇うように目の前に杖を掲げる。

何をしたらいい。何の呪文を・・・・・



襲い掛かってくる牙に、やたらめったら杖を振り回して応戦する。

噛み付くことが出来ないだけで、状況は何も変わらない。

その時、鳥の鳴き声が、その部屋に反響した。