ずるずると、蛇の這う音が聞こえる。

貴方はこんなにも純粋に、ずっとずっと待ってるのね。




「バジリスク」




愛おしそうに、声の聞こえた壁に手を這わす。

止まった音は、ちょうどこの壁の向こう。




「そこにいるの?いるのよね」

主・・・・サマ

「サラザールは死んじゃったのよ。誰にも力を託すことなく」

どこ・・・・ドコにイルノ・・・?

「バジリスク、騙されちゃダメ。貴方の主はもっと、誇り高かったでしょう?」

コワイヨ・・暗イ・・・・・タスケテ

「もうちょっと待っててね。抱きしめるから」




助けてといいながら遠ざかっていった音に、

は涙するしかなかった。

唯一の彼との繋がりは、自分がわかるのだろうか。

壁づたいにずるずると座り込んで、

月明かりの中、飛んできた梟が、肩を抱く。




「暗いって。怖いって!!」

「大丈夫だよ。スリザリンが愛したお前なら」

「だけど、声は届かなかったのに!!」

「今は錯乱してるだけだ」

「バジリスク・・・・」



ぽろりぽろりと、なんと綺麗な涙だろう。

弾んだ雫それぞれに、月が光っている。

増えていく月が、星が、

まるで彼女の願いを表すように。










まあ、そんなシリアスな夜なんて知る由もなく、

ハロウィンパーティーは開かれている。

甘ったるいカボチャのにおいしかしない大広間に、

はついさっき引きずられてきたばかりだ。




「「、ばっちり似合ってるよ!!」」




この、仲間意識をもたれてしまった双子達に。

しかも強制的に着替えさせられて。

双子は対の猫と犬。

ちなみには・・・・。




「ほほっ珍しい人魚がおるのぉ」

「からかわないで下さい。恥ずかしい・・・・」




貝をかたどったビキニに、シースルーのマーメイドスカート。

流石にビキニだけでは恥ずかしかったため、

上からカギ網のショールを羽織っている。

それがまた、艶かしさを増させているのだけれど。

もちろん耳はとんがっている。




が仮装しないで逃げようとするからさ」

「逃げなくてもしてたでしょう?」

「流石姫!!僕らの事を判ってるね」




どこから3サイズを導き出したのだろうか。

恐るべし、獅子寮の問題児。




「さて、今年も楽しんでおるかな?」




流れたアナウンス。

とってもうきうきなダンブルドアの姿がそこに。

ただ、サンタークロースはないと思われる。

似合いすぎていて仕方ない。




「毎年恒例の仮装歌唱大会じゃが、昨年は辞退者が多く出てのぉ。
つまらんかったじゃろうから、今年は辞退することを禁ずる事にした」

「・・・・・・・・・・・うそ」

「どうしたんだい

「いえ、そうね。ちょっと後でやらなきゃいけない事が増えたわ」

「でわ、名前を呼び上げる。呼ばれた者は中央に。
歌えぬ場合は、罰ゲームがまっとる!!」




至極楽しそうだ。

くじ引きの箱をがらがら鳴らしながら、いい年こいて・・・。

教職員席では、色々と場違いな面子。

やたらと小柄な狼男だとか、

不機嫌顔の天使だとか、

眼鏡をかけた妖精だとか。

まあ呆れたと言うか、もう何も言うまいといった表情が伺える。




「先ずハッフルパフ、カノン・ゼフュロ。レイブンクロー、アレン・バッカス。
スリザリン、ニンファ・ローマ。グリフィンドール、

「「姫!!頑張って!!」」

「罰ゲームってなんなのかしら・・・・」

「姫の歌が聞きたいよ?」

「歌えるんだろ?」




これはもう、あの長髭の策略だとしか言いようがない。

グリフィンドール内はとても落胆した様子が伺える。

そりゃあ、悪魔だとか呼ばれてる自分が当てられてしまったのだから。




「「応援してるから〜〜〜〜!!!」」

「はいはい」




正気か!?

といった目線が双子に向けられている。

まあ、仕方ないだろうと一歩踏み出せば、

しんっと静まり返る大広間。

それは、あまりにもが似合いすぎていたから・・・・

だとは本人思っていないけれども。



次々と紡がれていく曲達に、は耳を傾ける。

そう、幾年か前もこうしてココに立った。

スリザリンの代表で呼ばれた彼が、

一生懸命に言葉を紡いでいたのを覚えている。

鳶色の彼と仲良くなるきっかけとなったこの大会。



貴方が望むままの曲を奏でましょう。

彼の驚いた顔なんて、そうそう見れるものじゃないから。

取りを用意したのも、サンタの思惑だろうか。

懐かしい感触だ。





鮮やかに聳える戒めの明かりと

駆け巡る衝動呪って

夜に脅え 闇に消え

独りぽっちで

誰かと吐き出した声は叫びになる



誰にも打ち解けずに

流した涙

報いだと言い聞かせながら

苦しんでるあの子は

誰もいない塔の中で

望み続ける

ユメと諦めかけた



小さなヒカリ