遠くで花火がなっている。
「すっ・・・すい・・・・・せん」
顔を真っ赤にしてうつむいてしまった目の前の高校生。
そう。高校生だ。
どうしたものか。
「顔、上げて?」
「・・・・・・・・・」
「青根くん、こうゆうの初めてだよね?」
「・・・・・・っはぃ」
「凄く嬉しい」
聞いた途端、ぱっと明るくなった表情に、
分かり易い子だなと思う。
「でも、踏み込んだ事ない世界への憧れで、少し、混乱してるだけだと思うの」
だから、帰って落ち着いてもう一度考えて?
と、また隠すような笑顔に、青根がはいというわけもなく。
鳴り響いている花火の音に負けないくらい、
むしろ、試合の時よりも力を入れて喉から、音を、出した。
「好きです」
しょうじきなきもち
「だからね?」
「考えました。ずっと」
その答えがこれですと、強く、光る、瞳が告げる。
こんなに強引な子だったっけ・・・。
「・・・・・・・・・・・分かった」
降参とは、両手をあげて、青根を見据えた。
「後悔しない?」
今まで見た中で、ひときは強く、青根が首を縦に振る。
空気がぶんっと唸ったように思えた。
陥れるような真似をして、後味が悪いから忘れてくれなんて、
大人のすることじゃあ、ないよね。
もしかしたら、本当に憧れかもしれないけれど、その時はその時だ。
憧れだと分かれば、この子から離れて行くだろう。
「じゃあ、よろしく、高伸くん」
また頬が暑い。
自分の腕に、自らのそれを絡ませて、
初デートが花火なんて、素敵ね。
と横で笑うの顔は確かに、自分が大好きな顔だった。
2人の時間がながれるなんて、そんな甘い考えは、聞こえて来た声で、吹っ飛ぶのだけれど。
「あ!いたぞ!!!」
「茂庭先輩!青根いましたよ!!」
「もう、ホントなにやってんだよ・・え?」
そうだった。
何も言わずに輪を離れたのだと、今更ながらに想い出す。
「は?え?あれ??」
「あら、前一緒にいた茶髪君」
「俺には二口ってちゃんと名前が・・じゃなくて、え?なんで?」
「野暮な事、聞く?」
絡めた腕に力を込めて、
「友達に現状伝えたから、今から2人でまわれるよ?」
「あ・・・・はい」
伊達工バレーボール部の、絶叫が響き渡るまで、後数秒。