気だるくなる夏はキライだ。
彼と会ってしまってから、嫌でも思い出す。
シーツに埋もれ、汗なのか、情事の証なのか判らなくなる位、
交わりあった、過去の事を。
それは、愛する人に重ねたあの時も、
マリオネットが如く、操られるだけだったあの時も。
会議中響く、稚拙な叫びが、
耳を、痛めつけて止まない。
自分は言って来た筈。
足りなかったのだろうか。
戒めの言葉が。
「、落ち着け」
「落ち着いてるわ」
「何処がだよ」
吸魂鬼が彼を襲ったと聞かされた日、
どうして自分はあそこにいなかったと後悔した。
隣に家まで買ったのに、どうしてその日に限って。
けれど過去を悔やんでも仕方ない事を重々承知しているから、
苦いを思いを噛み締めながら、ここで彼の邪魔をしてきたのだ。
「大丈夫よ。落ち着いてる」
「会議は終わりみたいだぜ」
「そうみたいね。自室に戻って休みましょう」
「は何か意見はないのかい?」
「私がココにいる事自体が不可思議だとお思いの彼らに、
話が通じるとは思えないから結構よ」
扉に手をかけた。
自分はただ行動を起こすだけ。
彼らには出来ない、長年過ぎる時でつちかったイロイロな事。
もう少し、中にいればよかった。
そうすれば、あんな台詞聞かずに済んだのに。
「ヴォルデモートはボクの両親を殺したんだ!!」
ずきんっ。
嗚呼。そうね。
貴方はやっぱり、ヒーローになりたいのよ。
「あの野郎・・・」
「いいわ。。事実よ」
劈くような女の悲鳴の中、気丈に立っている彼女に、
階段から降りてきて、一生懸命にオンナをなだめる男の視線が行く。
「嗚呼、、今からそっちに行こうと思ってた。
ハリーに話したいことがあるからな。お前も同席するだろ?」
「あ・・・・」
「私が同席すると、なんだかまずいようね?」
「何がだ?」
「ハリー・ポッター、何故、日刊預言者新聞に、
そんな記事が書かれるのか教えてあげましょうか?」
「え?」
「貴方自身の、自分がこの世で一番不幸だと思っているその気が滲み出ているからよ。
安っぽい悲劇のヒーローさん?」
「なんてこと言うんだよ!!」
「酷い・・・・」
「、言い過ぎだろう」
「そうかしら?彼はそうかもしれないとお思いの様だけど?」
「違っ・・」
「わないわよね?経験、記憶を捏造して、本当のような夢を見る。
嘘でつくりあげた貴方は、至極滑稽で莫迦莫迦しいことこの上ないわ」
「っ・・・」
「仲間割れするな」
「とりあえず中に入ろう。シリウス、話しがあるんだろう?」
宥め好かされる自分。
言いたい事を言おうと決めたのはいつからだったか。
それが、避けられる事に繋がろうとも。
どんよりした空気の中で、
ハリーに状況を説明するやらしないやらの、
また、低俗的な言い争い。
は壁にもたれて、
盛大な溜息をついた。
このままココにいれば、イライラが募るばかりか、
脳の回転さえ奪われてしまう気がする。
ダンブルドアは正しい。
その言葉しか聞こえない、子供のような話し合いに、
は思わず吹いていた。
「何か、意見がおありのようね」
「ただ、ダンブルドア、ダンブルドアと、
ここまで祭り上げる人達がいれば、勘違いされても仕方ないと思っただけですから」
「学生の貴方に何が分かるの!!」
「自分の生きて来た時を、過大評価しすぎじゃありません?
いくら学生だって、死を知り、物事を見、経験する事で、
貴方達よりも多大な意見、世界をモノに出来る事をご存じ無い訳じゃないでしょう?」
息が詰まるその空気。
「少なくとも、平和な世界でのうのうと過ごして来た貴方達よりも、
絶対的な主従関係には詳しいと自負していますから?」
「、それくらいにしとけよ」
「わかってるわ。、行くわよ」
「何処へ・・」
「こんなダンブルドアを崇拝しよう軍団なんかにいたら能が腐るから、
セブルスのところにいるわ。法廷には顔を出すけれど期待しない事ね」
最後の言葉は、ずっと黙ったままのヒーロー気取りに向けて。
怒りで何か言いかけたオンナの言葉もすべて無視。
扉を閉めて、ぽすりと置かれた、
長年自分と共に在る守護神の手だけが、
彼女にとってのリアル。
「取り戻さなくちゃね。自分を」
「そうだな」
その言葉を合図に、
2人はその場から消えた。