「酒だ酒」

「品がないわよ」

「嗚呼?祝い事は酒だって決まってンだよ!」

「体力莫迦らしい」

「てっめえ!!」



ホームの大掃除も終えて、

それぞれくつろげる場所でくつろいでいる。

そもそも、大掃除をしようなんて言い出したのは、

なのだが。




「そういや、言い出しっぺのはどうしたんだよ」

「自分の部屋を片付けているんだろう」

「それはないんじゃないかしら?」

の事だ。とっくに終えてるよ」

「私の部屋手伝いに来てたから間違いないね」

「フェイタン!!お前、またを独り占めにっ!!」

「団長は黙っててください」




そこら辺にある瓦礫の集中攻撃。

団長の威厳なんて、これっぽっちも見受けられない。




「でも、本当に何処行っちゃったのかしら」

も子供じゃないんだからさ、そんなに心配しなくても」

「シャルの言うとおりだな」

「だが、の事だ。きっとあまりの可愛さに誰かに拉致られて!」

「ホント、妄想激しくなったよな。団長」

「おや★蜘蛛が揃って掃除かい?」




頭に三角巾。

手には雑巾やら箒やらを手にした蜘蛛を見つけて、

至極嬉しそうに、突如と現れた奇術師は笑った。




「お前何故ココにいるね」

「昔のよしみだろ◆」

「さっさと出て行け。変態」

の行き先、知りたくないのかい?」




攻撃準備万端な蜘蛛達の手が、ぴたりと止まった。

箒やら雑巾やらを手にして凄んだところで、

格好が付かない上に、殺気も半減だろうが。




「どうしてヒソカが知ってんの?」

と仲良しだからさ★」

「で、は何処なんだい?」

「ゾルディック家だよ◆」




蜘蛛達が走り出すまで、後数秒。








「お邪魔して良かったの?」

姉様なら平気」

「でも、キキョウさんとか・・・・」

「キキョウは仕事だ。心配ない」

「あの、心配大ありだと思うんですけど」




ゾルディック家のキッチン。

牛蒡の肉巻きを作りながら、現ゾルディック家当主が応える。

自分はキキョウに嫌われている・・・のだろう。

そんなにしてまで、招いてくれなくとも良かったのだが。




「イルミ、そんなに練らなくて良いから」

「え?」

「栗・・・なくなってる」

「もうすぐボールも突き破るかもね」

「置いといて」




栗金団くらい、普通に混ぜて欲しいものだ。

隣で大人しく黒豆を飾っているキルアを見て、

溜息をついた。

というか、ゾルディック家総出でお節料理を作っているこの状況が、

どうなのだろうか。




「俺の部屋で寝よう?」

「イルミ、重いから。それに、年越し起きてたいの」

「イルミ兄様、ずるいです」

「あ、カルト君、気をつけてね」

「飾り切り、って、コレで良いんですか?」

「とても上手」

、これ位で良いのか?」

「うん。キルアも上出来。あ、ゼノさん、白味噌入れて下さい」

「これか?」

「そうです」




馴染んでる自分に、溜息が出る。

けれども、こんな静かな年越しも、良いなと思えるのは、

いつもいつも、騒がしすぎるくらいの空気を、

感じているからなのだろう。




「あと15分だな」

「屋根の上にでも行くか。朝になれば日の出が見れるぞ」

「それは、見たいかも」

「よし。行こう」

「イルミ、引っ張らないで」

「兄様!!」




出来上がった物を冷蔵庫に詰めて、

年越し蕎麦を持ち、屋根の上へと昇らされる。

真っ暗な中、時を刻む秒針の音だけが響いた。

そのまま、

新しい年に、なる筈だった・・・・のに。




「見つけたぞ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヒソカ」

「なんだい?」

「もう良い」

「ボクもと新しい年を迎えたかったのさ★」




ゾルディック家と蜘蛛の対戦など見たくもない。

けれども巻き込まれるのは必然で。

自分はそんなに戦闘用には鍛えていないというのに・・・・。




ぎゃあすかわあすか。

先程の静寂は何処へやら。

蕎麦も、当に真下の庭に吸収されてしまっていた。

飛んできたあれは、トランプだった気がする。

後でクロノスに飲ませよう。

そう誓って、ふと、時計を見やれば、

もうそれは、新しい年を刺していて。




「・・・・・・はあ」




そんなことお構いなしに破壊されていく木々達。

こんなのもたまには良いかと、そう思えてしまう。

屋根の上で、は、満面の笑みをこぼした。




騒々し過ぎる始まりに乾杯。