朝から景気良く、
野菜を刻む音が聞こえる。
野菜スープの匂いと、
焼きたてのカンパーニュの香り。
「、何してるの?」
「朝ご飯作ってるの。休んでて良いよ?パク」
「そう?」
手伝ってはくれるものの、
誰よりも早く起きて、が朝食を作るなんて事は、
今までついとなかったのに、
首をかしげながらも、パクはキッチンを後にした。
「、何してるか」
「朝ご飯作ってるんですって」
「見たら分かるよ」
「それよりフェイタン、
隣のが起きたのに起きなかったなんて珍しいわね」
ふんっと鼻息荒く、
自分の落ちつける瓦礫の上で、
何処からか手に入れたらしい新しい手錠を磨き始めるフェイタン。
本当に話を聞かないんだからと、
溜息をついた。
「御飯できたよ」
「そ。ありがと。団長起こしてくるわ」
「あたしがやる。パクは座って?」
「えっええ」
押されるままに、いつもより豪勢な食卓へ着く。
起きてきたらしいの両親役も、
テーブルの方へとやって来た。
「豪勢だな」
「が全部作ったのよ」
「が?」
「嗚呼」
「どうかしたの?」
「ボクも分かったよ」
まだ疑問は晴れない。
その後響いてきた壁に何かが激突した音は、
3人とも分かり切っているのでスルー。
「ゴメン。お待たせ」
「いいえ」
「えっとね、パク」
「何?」
いっつも美味しいご飯、
作ってくれて有り難う
差し出されたのは一輪のカーネーション。
「私はお母さんくらいの年齢って事?」
「違うから」
「分かってるわ。有り難う」
こんな穏やかに朝を迎えられるのもきっと、
貴方が来たからなのだから、
むしろ感謝しなくちゃならないのは、
私の方なのに。
彼女が救ってくれた命を無駄にしないことが、
彼女に教えられる唯一のことだと最近思う。
こうして考えてみればやはり、
自分は彼女を愛しているのだろう事は明白。
「さ、食べよう」
いただきますの声が響く。
途中から加わった、
頬に紅葉型の痕が目立つ団長に誰も気を止めないのは、
本当に慣れてしまったから。
「私がお母さんだと、フェイタンはお兄さんってとこかしら?」
「の兄なんてまぴらごめんよ」
「そこまで言わなくても・・・」
「お前は弟子以外の何者でもないね」
「うん。じゃあそれで良い」
どっちにしたって、
此処にいることを許されているのだから。
「あ、忘れてた」
「?」
「はい」
新たに出てきたカーネーション。
差し出された先は、勿論あの2人で。
「「・・・・・・・・・・」」
「あたしなんかいけない事した?」
「ゴメン、」
「うん?」
「どっちだ?」
一拍の空白。
そして、とびっきりの笑顔と共に。
投下された爆弾は、
朝のアジトに、静寂という敵を招いた。
「どっちも」