「ヒソカ・・・・」

「どうかしたかい?」

「ん・・・変・・・」

「なにがどう変なんだい?」

「ヒソカが格好良く見える」




随分酷い言いぐさだ。

これでも女に苦労することはない顔だと、

自負しているのに。




「ボクは元々格好いいよ◆」

「うん・・・そうかもね」




目にフィルターが掛かりきったのか、

いつもと同じ、あの穏やかな笑みで笑うを、

にんまりと見つめた。



彼がに渡したプレゼントは、

何を隠そう、即効性の惚れ薬で、

まあ、愛だとか、恋だとか、

色んな意味で霞んできている彼女に対してこの反応は、

満足すべき所なのだろう。




「どうだい?今日一日、ボクと過ごす・・・・とか★」

「それもいいかも」




お尻にくっついてくる、

肯定とも否定とも取れる言葉は、一切無視だ。

聖夜にかまけての誘い。

神様の誕生祭になんか興味はない。

興味はないけれど、あやかるのは悪くないと思える。

街の雰囲気はそう、やっぱり恋人の其れだから。




「それじゃあとりあえず、邪魔されないところに行こうか」

「うん。でもその前に、着替えても良い?」

「だあめ◆はボクが用意した服を着てくれなくちゃ★」




そう言うが早いかお姫様抱っこされて、

窓から飛び降りたと思った瞬間、

アジトはもう、遙か彼方だった。








「靴は赤vv」

「胸元はあんまり派手にしないでね★」

「ダメダメ◆ショールはもっと上品でなきゃ★」




あれよあれよと着飾られていく自分を、

呆然と見詰める。

イルミネーションを施された街を暫く歩いた後に、

連れてこられた、高そうな御洋服屋さん。




ふっと横を見れば、

スーツを着こなした奇術師が其処にいて、

何故だかやっぱり、いつもよりも素敵に見える。

クリスマスの魔法。




「綺麗だよvv」

「ヒソカも」

「光栄だね◆」




美人だったり、素敵だったり、格好いいよりも、

とても、綺麗だと、そう思った。




「何処行くの?」

「ボクの家★」

「ヒソカ、家なんて持ってたんだ」

「そりゃあ、無いと困るからね◆」

「ふ〜ん」




別段困ることもなさそうだが、

なんて、思ったのは内緒。

道行く人々が、みんな振り返るくらい、

ヒソカの顔は宜しいのだろうと、心の中で思っておく。






「うん?」

「視線が気持ち悪いって顔してる★」

「だって、気持ち悪い」




それが、自分に向けられていないと判っていても。




「だから、家なんだ◆」




とんっと地面を蹴ったのは同時。

前を行く奇術師に、

着飾って貰ったところが崩れないように注意しながら着いて行くのは、

至難の業だったけれども、

早く此処から、遠ざかりたい一心で。




「さ、着いたよ★」




小綺麗で、さっぱりして、

あまりにも普通なそのマンションは、

奇術師とはアンバランス。

扉を開けられて促されるまま中に入れば、

既に出来上がってるディナー。

と、呼ぶには少し早すぎる時間かも知れないが。




「はい、◆」

「ありがとう」




椅子を引かれて優雅に座る。

揺れるキャンドルが、

カーテンを閉め切ったその部屋には良く映える。

グラスにつがれていくシャンパンは、

半年ほど前に祝った、彼の誕生日を連想させた。




「今日、と過ごせた奇跡に★」

「神様の祝福に」

「いるなんて思ってない癖に◆」

「クリスマスの魔法を掛けてる、その日だけの神様」

「だったら、いるかもね★」




君が、なんの躊躇も無しに、

あのアロマキャンドルへ、火を灯してくれたんだから。




「「乾杯」」




少し、ドキドキした、クリスマス・イブの始まり。