「イルミ・・・・」

「なに?」

「ん・・・変・・・」

「何がどう変なのか判んないんだけど」

「イルミが格好良く見える」




随分酷い言いぐさだ。

これでも女に苦労することはない顔だと、

自負しているのに。




「オレ、格好いい?」

「うん・・・そうかもね」




目にフィルターが掛かりきったのか、

いつもと同じ、あの穏やかな笑みで笑うを、

じーっと見つめた。



奇術師がに渡したプレゼントは、

何を隠そう、即効性の惚れ薬で、

まあ、愛だとか、恋だとか、

色んな意味で霞んできている彼女に対してこの反応は、

満足すべき所なのだろう。




「なんで君がここにいるんだい?」

とクリスマスを過ごしたいから、家に連れて帰ろうと思って」

「それもいいかも」




お尻にくっついてくる、

肯定とも否定とも取れる言葉は、一切無視だ。

聖夜にかまけての誘い。

神様の誕生祭になんか興味はない。

興味はないけれど、あやかるのは悪くないと思える。

街の雰囲気はそう、やっぱり恋人の其れだから。




「ボクの役だったんだよ?それ★」

「そんなの知らないし。さ、行こ」

「うん。でもその前に、着替えても良い?」

「だめ」




そう言うが早いかお姫様抱っこされて、

窓から飛び降りたと思った瞬間、

アジトはもう、遙か彼方だった。








「イルミ、着替えたい」

「ダメ」




先程から押し問答の繰り返しで、

ククルーマウンテンの実家に着いたと思ったら、

もの凄い跳躍力で直接、自室に入ったイルミは、

ごろんっとベットにを転がした。




「今日は寝過ぎて、眠くないの」

「眠たくなるよ」

「ならないよ」




後ろから、いつものように回された腕に、

自分はどうして、少し鼓動を早くしているのか。

原因が分からぬは、とにもかくにも、

その腕から抜け出したくて仕方がないのだ。




、好きじゃなかったっけ?こうやって寝るの」

「好きだけど・・」

「じゃあ、問題ないよね」




問題は、大ありで、

だけどという反語はきっと、お空の星になってしまったのだろう。




「あ、そうだ」

「?」




何の前触れも無しに離れていったヌクモリ。

未だパジャマのままのには、肌寒い時が流れる。




「はい」

「何これ」

「クリスマスのプレゼント」

「可愛い苺のショートケーキだね」

「うん。はい」




うん。はい。では、判りかねるその真意。

判りたくないその真意。

いや、少し嬉しい気がするのは、

きっともうすぐ、キリスト生誕前夜だからだ。




差し出された苺に向かって口を開けて、

日没と共に放り込まれたそれは、

甘酸っぱさと、生クリームの甘ったるさを、

舌の上へと拡げていった。




「美味しい?」

「とっても」




微笑みで告げた、クリスマス・イブの始まり。