「フェイ・・・・」

「なんね?」

「ん・・・変・・・」

「何が変か。ワタシいつもどおりよ」

「フェイが格好良く見える」




随分酷い言いぐさだ。

これでも女に苦労することはない顔だと、

自負しているのに。




「・・・・・・・・・ヒソカ、お前に何飲ませたね」

「酷いなあ★ちょっとした魔法だよ」




目にフィルターが掛かりきったのか、

いつもと同じ、あの穏やかな笑みで笑うを、

疑り深そうに見つめた。



奇術師がに渡したプレゼントは、

何を隠そう、即効性の惚れ薬で、

まあ、愛だとか、恋だとか、

色んな意味で霞んできている彼女に対してこの反応は、

満足すべき所なのだろう。




「それより、なんで君がここにいるんだい?」

「修行頼まれたのに、こいつ起きてこないから起こしに来たよ」

「それ、君と2人っきりでってことかい?」

「それもいいかも」

「ささと用意するね」

「はあい」




いつも修行は2人きりだろう。

心で毒吐きながら、そういえば、明日は前夜祭だな。

とか、どうでも良いことを思い出す。




「ボクの役だったんだよ?それ★」

「何言うてるか」

「フェイタンに言うだけ無駄・・・か◆」

「殺すよ」

「フェイ、お待たせ」

「次からは自分で起きる事ね」




そう言うが早いか手を引かれて、

部屋から出たと思った瞬間、

ヒソカはもう、遙か彼方だった。








「今日はまず筋トレよ。その後この狭い中で戦うね」

「うん」




いつもよりも、いや、いつも素直だが何となく、

あの、の微笑みと台詞が気になって仕方ない。

コレは弟子だコレは弟子だと言い聞かせている自分が、

阿呆らしくなってくる。




「ん・・・」

「お前、あれだけ寝てまだ眠いか」

「平気。何もないから」




もの凄い早さでノルマを達成していくを、また、見やる。

添い寝役がヒソカだったなら、

悔しいかな、安眠できていることは間違いないのに、

何かがおかしい。




「今日は止めよ」

「え?」

「お前全然本調子違う。そんなでやっても意味ないね」

「平気だよ!フェイあんまりアジトに帰ってこないし、今日くらいは・・」

「だめね」




ぺたりと座り込んで、呆然と此方を見る彼女を、

自分は只休ませたかっただけで。

ヒソカに何かを盛られたのだとしたら、

それはそれで、かなり、心配なものだから、だから・・・。




「ごめん。ゴメンナサイ。ゴメンナサイ」

「何謝・・っっ!」




瞳からぽろぽろと零れているのは、

判りたくもない水。




「頑張るから、大丈夫だよ。集中するし。だから、だからっっ!」

「莫迦か?別に誰もお前の所為言てない」

「・・・・・・え?」

、ヒソカに何か盛られたよ。だから言てるだけね」

「う・・・・そ」

「嘘言うてどうなるか」




意味のない、嘘は付かない。




「ありがとう」




ベッドに座って、拷問器具を磨くフェイタンの元へと歩む。

そこに在ることを許された空間は、

なんと心地がよいのだろうか。

肩に掛かった重みも、直ぐに聞こえてくる寝息も。

さらりと今まで拷問道具に向いてた指を通す。

何の引っかかりも無しに落ちた指を次は、

の瞳へと戻して、

流れてくる水をすくう。




「寝付くの早過ぎね」




自分のマントを肩から羽織らせて、

の寝息をバックミュージックに、

また、拷問道具へ戻ったフェイタンの顔には、

穏やかな笑みが浮かんでいた・・・とか。




知らぬうちに過ぎた、クリスマス・イブの始まり。