ルウの頭にしがみついて、
揺られること数分。
もっともらしい理由を述べ、
彼等を海へと誘った後、
今の自分には、これくらいしか出来ないことを、
酷く、悔やんだ。
身体が小さいから?
違う。
なんの、一歩も踏み出さないまま。
しんどい道は、嫌だったから。
そんな沢山努力しなくたって、
生きて、いけたから。
でも、ここでは違うことを、まじまじと感じさせられる。
しんどいことはしたくない。
でも、隣にはいたい。
そして、高見に連れてって貰うのか?
嫌だ。
だったら、死に物狂いで、時間も忘れるくらいに。
やってやろう。
君の、隣にいたい。
「いたぞ!」
「ルフィ!!」
「海に逃げるたあ、ちょっとはおつむが働くんじゃの」
「感心してる場合かよ、アジール爺さん」
「狙撃はお前の仕事じゃろ」
「ダメだ!」
「なん・・・あ・・・」
「るふぃはおよげないんだよ」
悪魔に魅入られたその日から。
「くそっ!」
「どうすりゃいいんだよ!!」
山賊の腕の中から、
向こう岸にみんなが見える。
の口が、しきりに動いていて、
何かを、伝えようとしているのが分かるのに・・・。
「きこえねえよ・・・」
波が、ざわめく。
耳をつんざくような悲鳴が、真上から聞こえて、
見上げなければ良かったと思っても、後の祭り。
叫んだ。
藻掻いた。
渦巻く波の中で、
赤い髪と、大好きな彼の声が、
やっと、耳に届いた。
「てをのばして!」
直後目の前に拡がったのは、
真っ赤な。
違う。
真っ紅な。
「しゃんくす!」
「、お前もなんて顔してんだ」
「ばか」
「ひでえ・・・なあ?」
同意を求めるように、
副船長に倒れ込んでいくシャンクスを、
傍らで崩れてしまったルフィを、
自分は、当事者として、見ることが出来ただろうか・・・・。
「大丈夫だ。」
「お頭は心臓刺しても死なねえよ」
「・・・・・」
うん。と言う代わりに、
もう一度、ルウの頭に顔を埋めた。
そのまま揺られつつ、
気付けば周りは真っ白で、
巻かれた包帯や、
真っ赤なベッドシーツ。
目を閉じたままの、シャンクス。
「降りるか?」
「うん」
「お頭、運が悪いなあ!」
「同感だ!折角が近くにいるってのに!」
そっと、少し血の気の失せた頬に、触れる。
いつも通り、手入れされていない髭と、
ざらざらの肌。
「脈も呼吸も正常だ。心配ない」
「でも、いたい」
「そうだな」
「いたいよ」
「嗚呼」
頭に乗せられた、いつも求める手を、
小さな手で掴んで訴える。
泣くまい泣くまいと、心が叫ぶ。
泣きたい泣きたいと、身体が叫ぶ。