「がこの船に乗ってから1年か・・・・」
とある港で、そう言ったのはルウだった。
俺がこっちに来てから、もう1年になるのか・・・。
感慨深い事もない。
あれから頼み込んで、
アジールには医術と剣術を、カルヴァドスには料理を、
大幹部達には内緒で教えて貰っている。
この海で、彼の隣に立てるように。
「じゃあ、誕生日パーティーでもしようや!」
「そりゃ良い!!」
誕生日パーティーと聞くと、
実際年齢2●歳の自分には、
少しばかり悲しい感じもしてくるが・・・・。
「やそ、しゃんくすは?」
「それが朝っぱらからベン連れて降りてっちまったんだよ」
「いつものことじゃろ。どうせ遊郭・・」
「アジール爺さん!」
「分からんよ」
「(大いに分かってるけどな)」
「おい・・・」
「どうした?巨大な肉でも歩いてきたのか?」
「巨大なケーキが歩いてくるぞ」
「はあ?」
その言葉に、振り向いてみれば、
見なければ良かったと、後悔するものでしかなかった。
ウエディングケーキも吃驚な生クリームケーキが歩いてくる。
ネームプレートには、しっかり自分の名前が刻まれていて。
「にげてもいい?」
「ダメじゃ。あれはわしらじゃ押さえられん」
「にげたい」
「我慢しろ。後でカルヴァドスに口直し用意しといて貰うから」
「頑張れよ」
「むり(頑張りたくない。むしろ行かせてくれ)」
ゆうらゆうらと揺れながら、終に目の前まで来てしまった其れ。
にっこおと、
これでもかと言う程きらびやかに微笑んだシャンクスと、
本当に悪いという顔をしたベックマンが其処に。
「!プレゼントだ!!」
「いらない」
ばっさりと絶望を与えてやる。
「折角、折角・・・・」
隅っこでキノコ栽培を始めてしまった船長。
こうなってしまっては、もう、自分が出るしかなくて。
嗚呼、気持ちだけで十分なのに・・・。
「しゃんくすごめんね。いっしょにたべよう」
「そうだな!!1人じゃ食べきれないよな!!」
当たり前だ。
とりあえず今は、こいつの、
行き過ぎたポジティブシンキングに感謝すべきなのだから。
「というわけで、6才の誕生日だ!!」
プレゼントは、この船にいられることだ。
甘ったるい生クリーム。
自分の身長くらいあるチョコプレート。
それよりも、周りでどんちゃん騒ぎをしている、みんな。
「」
「なに?」
「ほれ。プレゼントだ」
「え?でもけーき・・・」
「あれは全員からだ。これはオレから」
手渡された小さな箱。
丁寧に丁寧に開ければ、
転がり出てきたチョーカーとイヤリング。
「これ・・・」
「わりいな。勝手に形変えちまって。それくらいしか思いつかなくてな」
苦笑した彼に抱き付いた。
チョーカーにぶら下がったガラス細工の中には、
ルフィがくれた華のドライフラワー。
イヤリングには、エースがくれた貝殻を。
「ありがとう。しゃんくす」
ほそっこい腕。
日に焼けた太陽の香り。
そり切れてない髭と、
海の空気。
「だいすき」
シャンクスが暴れ出すまで、後数秒。