「本当に大丈夫か?俺が・・」
「だいじょうぶ」
直ぐにでも転んでしまいそうな川の真ん中で、
北海道のクマ宜しく構える。
まあ、自分で何かするという試みを続けているわけだが、
朝から何も捕れずにいる。
「エラの部分に食い込ませれば殺り易い」
「(殺るの部分は聞かなかったことにしよう)」
きらきら光る魚達を凝視して、
勢いよく両手を突っ込んだ。
「!!」
踏ん張りが利かなかったのか、そのまま川へ。
「踏ん張れと言った」
「うん。でも、とれたよ!」
初めて、初めて自分で生きた。
他の魚は、ものの数分でルッチが捕ってしまったが。
ここまで生きたという感覚を味わったことが無くて、
ずっとずっと、余韻に浸っていた。
いつもどおり手を繋いで、
湖の畔まで帰ってきた2人。
火をおこして、一生懸命に捕ってきた魚を調理する。
調味料も何もないから、
海水の塩だけが頼りだ。
「できた!!」
「美味そうだ」
「うん!」
無邪気に笑うとは、こうゆうことだと思う。
ただ嬉しいという感情が伝わってくるだけ。
「いただきます」
とてつもなく美味しいわけではない。
けれども、美味しくて美味しくてたまらないような感覚。
「どうだ?」
「おいしい」
シャンクスも一緒に食べられれば良かったのに。
ふとそう思う。
彼は今どこで、どうしているだろうか。
しばしの別れの筈なのに、
もう何年も会ってないようだ。
そもそも、このグランドラインで、
彼が見つけてくれる可能性は、ほぼ零に近い。
「(また、他人任せか・・・・)」
「」
「なに?」
「海賊船が海岸線に見えた。近づくなよ」
生きた感覚を味合わせてくれた魚をぽろり。
次のルッチの言葉なんて聞こえなかった。
違う船かも知れないのに、
は全速力で、その場を後に走った。
「はあ・・・はあ・・・」
あの赤い髪を見たい。
安心したい。
ただ傍に在りたかっただけなんだ。
服を引っかけたかも知れない。
膝をすりむいていた気もする。
だけれどの頭には、
海岸線に見えたという、海賊船のことしかない。
ルッチは追ってきているだろうか。
もう、政府に帰ってしまったかも知れない。
森から飛び出したは、
途端、急ブレーキをかけなければならなかった。
「・・・・・・・ちがう」
「なんだ?この餓鬼」
「良い身なりしてんじゃねえか」
「お頭〜!どうします?」
「ほう?俺好みだ。連れてけ」
「いえっさ」
「やだっ!やだはなして!!」
「大人しくしてりゃ、気持ちよくなって、金に換えさせてやるからな?」
気持ち悪い。
気持ち悪い。
「シャンクス!!!」