「そいつを離して今すぐ此処から出て行け」
「誰だお前」
「もう一度だけ言ってやろう。出て行け」
「聞けねえ相談だな」
「そうか」
そういうが早いか、海賊共の身体が飛んでいた。
俺は本当に、彼に付いて行きたかったんだと、
認めざるを得ない。
救いに来てくれたのは彼ではないのに。
得意の上目遣いも出せないまま、
ただただ、彼の名前を呼ぶだけで。
「・・・・・・・」
呆れてものも言えない顔。
餓鬼だ。
俺が。
知ってる。
「ありがと」
涙が溢れて止まらない。
ぽふりと頭に置かれた手が妙に温かくて、
くすぐったかった。
「気を付けろ」
「うん。うん。そうだね」
死んでしまっては、巡り会うことも叶わない。
「もどろう」
「俺と来るか?」
「え?」
「俺は政府に勤めてる。暗躍機関だがな」
「(知ってる。超知ってる)」
「筋が良い。鍛えれば直ぐにでも」
その後は聞きたくない病になっておいたが・・・。
「いつまでも此処にいるわけにはな」
「・・・・・・・」
「俺と来い「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
ざっぱーん。
ずしゃあ。
がんっ。
ばきいっ。
「ルッチ!!」
もの凄い勢いで砂浜に突っ込んできた、
いや、に突っ込んできたボートが一隻。
とてつもなく高い水しぶきを上げて、
着陸というか、着木というか・・・・。
とりあえず、折れてしまった可哀相な木に合掌しておこう。
「っっ!!!!」
「シャンクスじゃま」
落ち込んでいるシャンクスより、
今は、海水を被って弱った上に、ボートが直撃したルッチだ。
「ルッチ!ルッチ!だいじょうぶ!?」
「・・・・・」
「けが、ひらいたんじゃ・・」
「大丈夫だ。泣くな」
「だって、だってルッチが・・・」
「痛いから大丈夫だ」
穏やかに微笑む彼の腕が温かい。
勿論、滝のように涙と鼻水を流しているシャンクスは、
見ざる方向で。
というか、脳味噌から記憶を消去の方向だ。
「今までを看てくれていたのか」
「看られていたのは俺の方だ」
「いや、だが、礼を言おう」
「ルッチ」
「また会おう」
拉致りたいのは山々だったが、
涙を流すに見つめられては、否とは言えない。
帰れと、背中を押してやった。
「、無事で良かった」
「うん」
久し振りに握ったベックマンの手は何処か、
ルッチの手に似ている。
「またね」
そう言って手を振った。
いつもは迎える手を、さよならの意味で振った。
どうか、怪我が痛いと思って下さい。
シャンクスを島に置いてきたことに2人が気付くのは、
もう少し先のお話し。